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イベントが終わっても災難イベントは終わらないようで

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二人の男が去った後、会場には沈黙が降りていた。
その沈黙を破ったのは
「おら、悠一郎!どこ見てんだゴルァ!」
宗谷の拳が空気を振り切る音だった。
乾いた音と、打撃音が沈黙を粉々に破り、止まっていた時が動き出す。
殴られた左腕がだらりと垂れ下がり、激痛が襲い来る。
歯を食いしばって耐えるが、その間にも宗谷は攻撃の手を休めない。
かすった攻撃が肩や脇腹、頬の肉を抉り取っていく。
まさに災難だ。
一難去ってまた一難。
でもこの程度でへこたれる僕じゃないぜ。
右手を支点に下段回し蹴りで脚を蹴る。
防がれるが、左足で地面を踏み砕きながら右脚を振り上げる。
宗谷の顎を急襲する脚は横に弾かれる。
そして地面に着いた右脚を支点に左脚の踵で上段回し蹴りを放つ。
もちろんこれも防がれる。
右手で地面を弾いて離脱。
魔力を集中させて回復力を底上げする。
痛みが引いていき左腕が動くようになる。
よし。戦線回復。こっからが本番。
足元にスライディングで滑り込み、顎を両足で蹴り上げる。
そして両手で体を持ち上げ、ブレイクダンスの要領で周囲に暴風を巻き起こす蹴り。
体を起こす勢いで頭突き。
たたらを踏む宗谷に蹴りを叩き込む。
衝撃が全身にあまりなく伝播され少し浮き上がる。
その足の下へ滑り込み、足裏を合わせ蹴り飛ばす。
吹きとび中の宗谷へ接近し、魔力攻撃に魔衝波、魔力籠手で強化した拳でアッパーを入れる。
ここで宗谷が初めて防御姿勢をとった。
防御というか、迎撃姿勢だ。
瞬光で知覚能力が跳ね上がり、途端に色褪せ鈍化する世界の中で宗谷が拳を振り上げる。
仕方ないので本気で振り上げる。
音の何倍もの速度で拳が衝突しあい、一瞬の間拮抗するがそれも刹那のこと。
宗谷が弾かれ、無防備な状態で空中に放り出される。
脚を撓め、両手を合わせて握り込む。
飛び出して、握り拳を振り下ろす。
拳は宗谷を地面に縫い付ける。
天駆で加速して地面に隕石の如く落下する。
着地の瞬間、物凄い衝撃に襲われ、壁の中に吹っ飛んで瓦礫を撒き散らしていた。
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