剣士アスカ・グリーンディの日記

第3章 竜の涙

巨大な影(for three days)

あの集落の状況、周辺探索の報告を国王マイクリーハにして、この件については、僕の手を離れた。

また何かあれば、ウイプルかコーリオが動くだろう。



この間は、ダルレアス自治領のザシンにクフト城と威厳山に繋がる洞窟で竜の壁画とその纏まつわる話を訊いたけど、その先にある威厳山には行かなかった。

その先にあるものに、何かを感じていたんだ。

恐らく、僕にも話しはしない何かがあるのだろう。

まぁ、いいさ。

だけど、あの黒鎧を着たディオガルーダという男。

ザシンと会っている様な気がする。

あの男には、威厳山に案内はするのかな。

それとも、元々知っているのか。

あの男には、内に秘める強大な力を感じる。

敵となれば、油断ならない存在だ。

警戒は解かないでおこう。


アリグルドの29日
                     ヘールベータ地区の家にて
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街中で人集りができていたけど、警備兵がそれを散らしていた。

地面に血痕がある。

何が起こったのか訊こうとしたが、リガード竜騎士団のメリアスが僕を見つけ、小道に連れ、話してくれた。

今は、同盟国との活発な交流のため、比較的自由に他国間を行き来できる。

あまり、良い事ばかりじゃない。



話の内容だと、少し前に騒ぎを起こした者と同じ様だ。アスデン王国の上級兵。

警備を強化した方がいいだろう。

同じ様な事を、何度も起こされては堪らない。



でも、その上級兵は、また不問になるのだろうな。

アスデン王国の１つの砦を任されているらしい。



僕の出る幕はない。



とても不愉快な気分だけど。




アリグルドの30日
                      ヘールベータ地区の家にて
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夕暮れ時に、遠くの空に巨大な影を見た。

とても、嫌な予感がしたんだ。

とは言っても、このウイプルから遠い空だ。

ここに来る事はないだろう。

何処へ向かっているのか。



特に気にする事もないか。



赤い翼竜ベルベッタ、君は今、幸せかい？

幼少の頃、僕と遊んでいた時に、よく貴覇竜の咆哮を真似て、僕の反応を見ていたよね。

とても似ていた。

だから。

そうだね、僕はその時、喜んでいた。

笑っていたんだよ。

この僕が。



遠くの空に巨大な影を見ただけで、嫌な予感がするなど、思うべきじゃないな。



僕も竜になれば、遠くの国から見れば、巨大な影だ。


アリグルドの31日
                      ヘールベータ地区の家にて
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