55 / 113
第3章 竜の涙
アスデンの上級兵(for three days)
しおりを挟む
王城の主塔にある礼拝室で、騎士長アーマンが、手を重ねて祈っていた。
不安だろう。
マッドク王国のセケメント地域返還要求。その後、音沙汰がない。
ゴブリンが出没し、集落が襲われたり、偵察がマッドク王国から戻らなかったりと、何か不穏な感じがする。
邪教国がこのウイプルに対して、何を企んでいるのだろう。
アスデン、コーリオ両王国の連携が必要になる。
でも、マッドク王国のセケメント地域の件は、ウイプルとマッドクとの領土問題。
表向きは。
これでは、アスデン、コーリオ両王国は、ウイプルを助けないだろう。
ペテロの10日
ヘールベータ地区の家にて
___________
ツォルバ竜騎士団の兵が、ダルレアス自治領を出て、こちらウイプルの方へ来ているなんて、珍しい。
同盟国間の交流会に参加しようとしているのか。
それにしては、少し厳しい目を向けている。
そう思った。
アスデン、コーリオ両王国の兵達は、市場で物珍しそうに、竜の紋章入りの盾を見入っていた。
それは、僕らウイプルの兵が実際に使っているものではない。
だから、貴方達が買って、それを実践で使ってもいいんだ。
ただ、重いよ、それは。
また、あの赤茶色髪の女がいる。
ステンドグラスのランプを、不思議そうにあらゆる角度から見ている。
それは、特別珍しくはない物だと思うけど。
彼女は、面白い人だ。
ペテロの11日
ヘールベータ地区の家にて
__________
ウイプル居住地に迷い込んだ男が1人いた。
アスデン王国の紋章が入った金装飾のある革鎧を着ている。
ここは他国の者の立ち入りが許されてはいない。
背が高く、波打つ様な金髪を首元まで伸ばしている。
態度が大きいのは、生まれつきか。
薄ら笑いを浮かべて、何かを探している様だった。
そのすぐ後に、ウイプル兵が彼に駆け寄り、立ち入り許可を得ている区域まで戻そうとしていた。
あまり言う事を訊く様な様子ではなかったから、僕が近寄ったら。
彼はうんざりとした表情で、少しは、楽しませろよ、と僕に言った。
楽しませろよ、か。
僕にできる事と言ったら、剣の手合わせくらいだけど、それを言ったとしても、この男は喜ばないだろうな。
だから、特別何も言わなかった。
彼は僕の無反応を見て、得意げに笑って、戻っていったな。
でも、後で知ったんだ。
あいつが、
ウイプルで傷害沙汰を度々起こしている、アスデンの上級兵だという事を。
ペテロの12日
ヘールベータ地区の家にて
__________
不安だろう。
マッドク王国のセケメント地域返還要求。その後、音沙汰がない。
ゴブリンが出没し、集落が襲われたり、偵察がマッドク王国から戻らなかったりと、何か不穏な感じがする。
邪教国がこのウイプルに対して、何を企んでいるのだろう。
アスデン、コーリオ両王国の連携が必要になる。
でも、マッドク王国のセケメント地域の件は、ウイプルとマッドクとの領土問題。
表向きは。
これでは、アスデン、コーリオ両王国は、ウイプルを助けないだろう。
ペテロの10日
ヘールベータ地区の家にて
___________
ツォルバ竜騎士団の兵が、ダルレアス自治領を出て、こちらウイプルの方へ来ているなんて、珍しい。
同盟国間の交流会に参加しようとしているのか。
それにしては、少し厳しい目を向けている。
そう思った。
アスデン、コーリオ両王国の兵達は、市場で物珍しそうに、竜の紋章入りの盾を見入っていた。
それは、僕らウイプルの兵が実際に使っているものではない。
だから、貴方達が買って、それを実践で使ってもいいんだ。
ただ、重いよ、それは。
また、あの赤茶色髪の女がいる。
ステンドグラスのランプを、不思議そうにあらゆる角度から見ている。
それは、特別珍しくはない物だと思うけど。
彼女は、面白い人だ。
ペテロの11日
ヘールベータ地区の家にて
__________
ウイプル居住地に迷い込んだ男が1人いた。
アスデン王国の紋章が入った金装飾のある革鎧を着ている。
ここは他国の者の立ち入りが許されてはいない。
背が高く、波打つ様な金髪を首元まで伸ばしている。
態度が大きいのは、生まれつきか。
薄ら笑いを浮かべて、何かを探している様だった。
そのすぐ後に、ウイプル兵が彼に駆け寄り、立ち入り許可を得ている区域まで戻そうとしていた。
あまり言う事を訊く様な様子ではなかったから、僕が近寄ったら。
彼はうんざりとした表情で、少しは、楽しませろよ、と僕に言った。
楽しませろよ、か。
僕にできる事と言ったら、剣の手合わせくらいだけど、それを言ったとしても、この男は喜ばないだろうな。
だから、特別何も言わなかった。
彼は僕の無反応を見て、得意げに笑って、戻っていったな。
でも、後で知ったんだ。
あいつが、
ウイプルで傷害沙汰を度々起こしている、アスデンの上級兵だという事を。
ペテロの12日
ヘールベータ地区の家にて
__________
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
拾われ子のスイ
蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】
記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。
幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。
老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。
――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。
スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。
出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。
清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。
これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。
※週2回(木・日)更新。
※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。
※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載)
※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる