剣士アスカ・グリーンディの日記

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第3章 竜の涙

アスデンの上級兵(for three days)

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王城の主塔にある礼拝室で、騎士長アーマンが、手を重ねて祈っていた。

不安だろう。

マッドク王国のセケメント地域返還要求。その後、音沙汰がない。

ゴブリンが出没し、集落が襲われたり、偵察がマッドク王国から戻らなかったりと、何か不穏な感じがする。

邪教国がこのウイプルに対して、何を企んでいるのだろう。

アスデン、コーリオ両王国の連携が必要になる。

でも、マッドク王国のセケメント地域の件は、ウイプルとマッドクとの領土問題。

表向きは。

これでは、アスデン、コーリオ両王国は、ウイプルを助けないだろう。


ペテロの10日
             ヘールベータ地区の家にて
___________
ツォルバ竜騎士団の兵が、ダルレアス自治領を出て、こちらウイプルの方へ来ているなんて、珍しい。

同盟国間の交流会に参加しようとしているのか。

それにしては、少し厳しい目を向けている。

そう思った。

アスデン、コーリオ両王国の兵達は、市場で物珍しそうに、竜の紋章入りの盾を見入っていた。

それは、僕らウイプルの兵が実際に使っているものではない。

だから、貴方達が買って、それを実践で使ってもいいんだ。

ただ、重いよ、それは。



また、あの赤茶色髪の女がいる。

ステンドグラスのランプを、不思議そうにあらゆる角度から見ている。

それは、特別珍しくはない物だと思うけど。

彼女は、面白い人だ。


ペテロの11日
             ヘールベータ地区の家にて
__________

ウイプル居住地に迷い込んだ男が1人いた。

アスデン王国の紋章が入った金装飾のある革鎧を着ている。

ここは他国の者の立ち入りが許されてはいない。

背が高く、波打つ様な金髪を首元まで伸ばしている。

態度が大きいのは、生まれつきか。

薄ら笑いを浮かべて、何かを探している様だった。

そのすぐ後に、ウイプル兵が彼に駆け寄り、立ち入り許可を得ている区域まで戻そうとしていた。

あまり言う事を訊く様な様子ではなかったから、僕が近寄ったら。

彼はうんざりとした表情で、少しは、楽しませろよ、と僕に言った。

楽しませろよ、か。

僕にできる事と言ったら、剣の手合わせくらいだけど、それを言ったとしても、この男は喜ばないだろうな。

だから、特別何も言わなかった。

彼は僕の無反応を見て、得意げに笑って、戻っていったな。

でも、後で知ったんだ。

あいつが、

ウイプルで傷害沙汰を度々起こしている、アスデンの上級兵だという事を。


ペテロの12日
             ヘールベータ地区の家にて
__________
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