剣士アスカ・グリーンディの日記

sayure

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第3章 竜の涙

影に寄る(for three days)

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北西に細く長い黒煙が上がった。

ただの火事。

それは、すぐに鎮火し、特別大きな事にはならない。

ただの火事ならば。

煙が上がった場所は、中立国のホルヘルツ王国。

茶褐色の険しい山である虎口山ここうざんに囲まれた国だ。

それは、ダルレアス自治領の威厳山いげんざんと端が重なる。

しかし、今まであの様なものが見えた事があったか。

あの煙は細い。しかし、天まで届きそうなほど、長く伸びていた。

何か、違和感を感じてはいたけど。

そして、今度はまた北東の方に、ゴブリン出没の噂が流れた。

ウイプル領土から外れてはいるけど、前の時よりウイプルに近い、アルジの岩場付近だ。

その2つの出来事を、1つの結論に結びつけるには、場所が離れ過ぎている。

少し、落ち着いた方がいいか。

でも、少なくとも、ゴブリンの件は、早急に対処しなくてはならない。


ペテロの13日
             ヘールベータ地区の家にて
__________

あの時、僕は何才だったのだろうか。

ベッドの上で僕は見ていた。

お母様が戸口で、外に誰かに目を向けていた。

その先にいた者は、誰だったのか。

少し、横顔が見えた瞬間があったけど。

年は若く、どの様な感じの者だったか。

あまり覚えていないな。

君は、何処へ行くの?

その時、そう思った様な気がした。

わからないな。

でも、その何年か後に、その子らしき者と再会したんだ。

その者に対して、以前と印象が変わった、そう感じた事を覚えている。

もしかしたら、別人だったのかも。

不思議だ。

今更、気になった。



まぁ、どうでもいいか。


ペテロの14日
             ヘールベータ地区の家にて
________

ダルレアス自治領の兵が筒を持ち、駆け足で王城まで向かって行くのを見かけたけど。

嫌な予感がした。

僕は国王の命により、再びゴブリンの出没先へ、部隊を編成して向かう身支度をしようとしていた時だった。



ダルレアス自治領に、何かあったのだろうと。



きっとそれは、小さな出来事ではない。



駆け足で王城から戻っていったダルレアス自治領の兵がヘールグナンドの砦に入ると、砦の橋が上がり、ダルレアス自治領とウイプル王国側の行き来が遮断されたという事を聞いた時、それは確信に変わった。



ザシン領主、何があったのか。



同盟国との交流会は、一時中断、ウイプル王国内で、ダルレアス自治領側から遠く離れた宿へ、同盟国の来客を誘導させ始めていた。

また、ウイプルの民も、ダルレアス自治領側に住む者達の避難を伝えられた。



僕のゴブリン出没先への派遣は、中止となり、

僕を含めたリガード竜騎士団の騎士30名と国王兵200名が国王の命により、ダルレアス自治領ヘールグナンドの砦付近に集結した。

具体的な理由はまだ伝えられてはいない。だけど、当然、ダルレアス自治領が敵に回るなどという事ではないらしい。

だとしたら、中立国のホルヘルツ王国の黒煙は、やはり何かの知らせ。

ウイプルと敵対する国が進軍し、ホルヘルツ王国領土を通過、同王国内にある虎口山の洞窟に入り、ダルレアス自治領の威厳山の洞窟への繋がる道を探し出せれば、ダルレアス自治領への侵入が可能になる。

邪教国軍か。



戦力を維持し、交代でこの場所に駐留する事になったけど、恐らく、何かがこの後、起こる気がする。



このままいけば、陽が沈む。戦が始まるのなら、夜戦となるけど、街中での戦いは最悪だ。

せめて、ダルレアス自治領内にウイプルの戦力を受け入れてほしかった。

何故、自治領内の兵だけで戦おうとする?

戦力が大きくなると、被害が大きくなると感じたのかは、わからないけど。

でも、

これはきっと、気のせいではないだろう。





ディオガルーダが、ダルレアス自治領内にいる。



ペテロの15日
             ソルフローツ教会礼拝室にて
________
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