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第3章 竜の涙
孤高なる存在
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僕は、普通の人間よりは遠くの声を拾う耳がある。
それでも、限度はあるけど。
ヘールグナンドの砦の前で、僕らリガード竜騎士団の騎士30人と国王兵200人は待機していた。
この場所でも、僕には届いていた。
威厳山の中で、すでに戦いは始まっている。
敵軍の雄叫びが耳に届いた時、やはりと思った。
この敵の大部隊は、恐らく全て、ゴブリンだろう。
邪教国が、飼い慣らした捨て駒部隊を送り込んできた。
僕らに気づかれずに、威厳山の洞窟を通り、ダルレアス自治領から攻め込む意表を突いた良い策略だと、思ったか。
中立国との交渉など、うまくいくはずもなく、強行手段で、攻め込んだのだろう。そして、威厳山の洞窟に入り込んだ。
愚かだな。
しかし、ダルレアス自治領のザシンが、僕らウイプル兵を領内に入れなかったのは、ゴブリン大部隊には、少し望みを繋いだのではと、思った。
あの咆哮を聞くまでは。
威厳山に、竜がいる。
ディオガルーダか?
違う、そんな感じがしない。
もっと、ずっと老いているけど、
孤高の存在にも感じる。
この竜は、
恐らく、
今までもこのウイプルで生活しながらも、無意識に感じていた気がする。
きっと、そうだ、と。
このウイプル王国の歴史と共にある存在。
紫雷刀身竜。
_________
紫雷刀身竜の咆哮は、きっとまだ、普通の人の耳には聞こえていない様な気がする。
僕でも、耳で聞こえた部分はとても小さく、同じ竜としての本能という部分で聞き取れた感じがしたから。
相対している敵が、人ではなく、ゴブリンという事も、関係しているのかも知れない。
この竜は、今まで一度も姿を見た事がない。
ずっと、威厳山の中?
何か、理由があるのだろうか。
それでも、お母様は紫雷刀身竜の存在を、知っていたんだろうな。
その竜の近くにいて戦っているディオガルーダは、恐らく。
ウイプルにとって、味方だ。
でも、ウイプルにはいなかった男なのに、何故。
よくはわからないけど、ただ、街中で僕に会った時の態度は、挑発的なのが気になる。
そんな事を、待機しながら、思っていたら、
ディオガルーダは、紫雷刀身竜の側でゴブリンと戦っていたからなのか、彼の本当の思いが、紫雷刀身竜の力を借りて、僕に流れ込んでくる様だった。
その思いがはっきりと伝わらない。僕に伝わらない様にディオガルーダが抵抗でもしたせいなのか。
でも、僕は、気づいたら、涙を流していたんだ。
わからない。
わからないけど、僕は彼に対して、こう言いたくなったんだ。
ごめんなさい、
どうか許して、と。
________
ゴブリン大部隊は、全滅し、ヘールグナンドの砦の橋が下りた。
ツォルバ竜騎士団の騎士の活躍もあっただろう。この戦力が、ウイプル本国に加われば、きっと大きな戦力となるはず。
ウイプル王都の正門側に配置されていたリガード竜騎士団騎士長アーマンを中心とした国王軍も、敵軍の侵攻もなく、何事もなく、終わった。
ゴブリン大部隊を寄越した敵国の特定を、ダルレアス自治領のザシンとその側近、そしてウイプルの国王マイクリーハとリガード竜騎士団騎士長アーマンが、ダルレアス自治領のクフト城で行なっている。
同盟国との交流会は、中止とはならず、継続する事となった。
赤茶色の髪をした女が、僕が酒場に行く途中に、抱きついてきた。
そこまで仲が良かったかな。
でも、何か面白い人だな。
ただ、お金はもっと持っていた方が良かったな。
一緒に行った酒場での食事は、彼女の分は、僕が奢ってあげたんだ。
次からは、この様にはいかないぞ。
ペテロの17日
王城の見張り台にて
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それでも、限度はあるけど。
ヘールグナンドの砦の前で、僕らリガード竜騎士団の騎士30人と国王兵200人は待機していた。
この場所でも、僕には届いていた。
威厳山の中で、すでに戦いは始まっている。
敵軍の雄叫びが耳に届いた時、やはりと思った。
この敵の大部隊は、恐らく全て、ゴブリンだろう。
邪教国が、飼い慣らした捨て駒部隊を送り込んできた。
僕らに気づかれずに、威厳山の洞窟を通り、ダルレアス自治領から攻め込む意表を突いた良い策略だと、思ったか。
中立国との交渉など、うまくいくはずもなく、強行手段で、攻め込んだのだろう。そして、威厳山の洞窟に入り込んだ。
愚かだな。
しかし、ダルレアス自治領のザシンが、僕らウイプル兵を領内に入れなかったのは、ゴブリン大部隊には、少し望みを繋いだのではと、思った。
あの咆哮を聞くまでは。
威厳山に、竜がいる。
ディオガルーダか?
違う、そんな感じがしない。
もっと、ずっと老いているけど、
孤高の存在にも感じる。
この竜は、
恐らく、
今までもこのウイプルで生活しながらも、無意識に感じていた気がする。
きっと、そうだ、と。
このウイプル王国の歴史と共にある存在。
紫雷刀身竜。
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紫雷刀身竜の咆哮は、きっとまだ、普通の人の耳には聞こえていない様な気がする。
僕でも、耳で聞こえた部分はとても小さく、同じ竜としての本能という部分で聞き取れた感じがしたから。
相対している敵が、人ではなく、ゴブリンという事も、関係しているのかも知れない。
この竜は、今まで一度も姿を見た事がない。
ずっと、威厳山の中?
何か、理由があるのだろうか。
それでも、お母様は紫雷刀身竜の存在を、知っていたんだろうな。
その竜の近くにいて戦っているディオガルーダは、恐らく。
ウイプルにとって、味方だ。
でも、ウイプルにはいなかった男なのに、何故。
よくはわからないけど、ただ、街中で僕に会った時の態度は、挑発的なのが気になる。
そんな事を、待機しながら、思っていたら、
ディオガルーダは、紫雷刀身竜の側でゴブリンと戦っていたからなのか、彼の本当の思いが、紫雷刀身竜の力を借りて、僕に流れ込んでくる様だった。
その思いがはっきりと伝わらない。僕に伝わらない様にディオガルーダが抵抗でもしたせいなのか。
でも、僕は、気づいたら、涙を流していたんだ。
わからない。
わからないけど、僕は彼に対して、こう言いたくなったんだ。
ごめんなさい、
どうか許して、と。
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ゴブリン大部隊は、全滅し、ヘールグナンドの砦の橋が下りた。
ツォルバ竜騎士団の騎士の活躍もあっただろう。この戦力が、ウイプル本国に加われば、きっと大きな戦力となるはず。
ウイプル王都の正門側に配置されていたリガード竜騎士団騎士長アーマンを中心とした国王軍も、敵軍の侵攻もなく、何事もなく、終わった。
ゴブリン大部隊を寄越した敵国の特定を、ダルレアス自治領のザシンとその側近、そしてウイプルの国王マイクリーハとリガード竜騎士団騎士長アーマンが、ダルレアス自治領のクフト城で行なっている。
同盟国との交流会は、中止とはならず、継続する事となった。
赤茶色の髪をした女が、僕が酒場に行く途中に、抱きついてきた。
そこまで仲が良かったかな。
でも、何か面白い人だな。
ただ、お金はもっと持っていた方が良かったな。
一緒に行った酒場での食事は、彼女の分は、僕が奢ってあげたんだ。
次からは、この様にはいかないぞ。
ペテロの17日
王城の見張り台にて
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