剣士アスカ・グリーンディの日記

sayure

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第3章 竜の涙

困惑(for three days)

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セケメント地域の現地統治組織であるアルタイ岩頭院を解散させる命を、ウイプル国王マイクリーハより出された。

そして、ウイプル本国から選抜された者達がセケメント地域に渡り、新たに現地統治組織を結成する。

長らく他国の支配下に置かれて、ウイプルへの忠誠が乏しいと見たのか、ウイプルが戦に出る際には、傭兵という形で雇うらしい。

そして、ダルレアス自治領へゴブリンの大部隊を送り込んだ敵国を、特定できそうだ。

僕らには、まだその国が何処かは伝わらないけど、主犯と見ていた邪教国の聖バハールの、さらに背後に動く国がいる。その国が、やった事だという話だ。

その国がドメイル教信仰国であれば、同盟国のアスデン、コーリオが共に動いてくれるだろう。

ダルレアス自治領は、しばらくウイプル本国との人々の行き来を制限するらしい。

威厳山いげんざんの中にいる竜を見られたくないのか?

北の中立国が崩され、突破を許したんだ。虎口山ここうざんと威厳山との抜け道は、確実に塞ぐだろうな。



ディオガルーダの姿は、このウイプルでは見ていない。

まだダルレアス自治領内にいるのか。

まさか、死んではいないだろうから。

彼のダルレアス自治領における、立ち位置は、何処にあるのか。

気になる。


ペテロの18日
             自分の家にて
_________

いつもの木の下で。

幼い頃、待ち合わせ場所として使った、緑葉に青紫色の実のなる高木。

今もまだ、存在する。



青く光る水晶の欠片。

これは、何でしょう、と。

このパンは、とてもふっくらして食べやすい、何処で買ったでしょう、と。

暗闇で光る水がある、今から一緒に見に行こう、と。

面白そうな話を僕に、訊かせて、連れ出してくれたよね。



僕の幼馴染、ミスルタ。



君に姿を見られない様に、時間を選んで自分の家に帰っていた。

僕は、ブルーシーズと共に行動していた時、ウイプルで君に姿を見られていないから。

戦で死んだのだろうと、思われたままでいいのだと。



でも、僕自身を知るために、このお母様と暮らした家に度々戻る必要があった。



いつの間に、気づかれていた。



ミスルタ、君を避けて通っていた事。



君は僕に声をかけた。

悲しそうで、そして怒っていた。



今まで、部屋の窓から、僕に声をかけずに、ミスルタを避ける僕を不快に思って、眺めていたんだね。



僕はウイプルが戦場になった時に、ミスルタは死んだのだと思っていたけど、君を見つけ、生きていた事を知った時。

あの時に、君が死んだままでいたらよかったのにと思った理由が、ようやくわかった。



もう、大切に思う人が、

死んでいく事に、耐えられない。



もう、君は死んでしまったと、一度思ったんだ。

また、君が死んでしまえば、僕は。



今、このウイプルは邪教国に狙われている。奴らの聖戦の対象になっているだろう。

僕は、このウイプルを守る。

そのために、きっと僕は人とは思えないほどの残忍な戦い方をするだろう。

もう、人じゃない、と思われるかも知れない。

君と仲が良かった頃の、アスカ・グリーンディは、
母殺しドラゴンバスターになった時から、死んだんだ。



ミスルタ、どうか。

君も、僕は死んだと、思ってほしい。


ペテロの19日
             ヘールベータ地区の家にて
_________

ウイプルの街中で人気のない場所に入った時、背後から気配を感じたんだ。

黒い鎧を身につけた、ディオガルーダ。

視線はまっすぐ僕に向けていた。

僕に用があるんだと、わかった。



ダルレアス自治領の状況が、僕に十分に伝わっていない事を知ると、ディオガルーダは軽蔑する様な目を向けて笑った。

無様だな、と。

そう言われた。

この男は、ダルレアス自治領のザシンと何か関係があるのは疑いがないだろう。

君は、何者だ?

そう、率直に訊いてみた。

それがわからない事も、お前の未熟さ故だな、と言ってきた。

偉さそうな男だ。

意味がわからない。

お前が腑抜けなままであれば、また会う事になるだろうと、言った。

どういう意味だ?

僕がそう言葉を吐く前に、ディオガルーダの続けた次の言葉に絶句したんだ。



ウイプルを敵と見なして。



ダルレアス自治領を救った男が、ウイプルには敵となるという事なのか?



腑抜けなままであれば?



ディオガルーダ、こいつはやはり要注意な男だ。



それをただ伝えに、僕の元へ来たのか。

僕に背を向け、去っていった。



でも、

お前が威厳山いげんざんの中、紫雷刀身竜ゲボルトベルザスドラゴンの側で戦っていた時に、お前から僕に伝わったものは、一体。



1つは違うものに対しての感情。



そして、もう1つは。



僕に対しての感情。



ディオガルーダは、何故、僕に対して、悲しむ感情を持っていたんだ? 




ペテロの20日
             ヘールベータ地区の家にて
_________
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