剣士アスカ・グリーンディの日記

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第3章 竜の涙

ウイプルの兵として(for three days)

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情報が錯綜さくそうしている。

まず、マッドク王国のセケメント地域返還要求は、音沙汰がない。

そのマッドク王国軍を相手に勝利し、マッドク国王の首をはねた邪教国の聖バハール王国軍。

その聖バハールは、ウイプルとの戦いで敗れ、疲弊しているのは、事実。

その聖バハールを後ろで操っていたとされていたジーダペンス王国は、邪教国と無関係で、特別ウイプルに敵対心を持ってはいないという。



マッドク王国のセケメント地域返還要求は、本当にあったのだろうか。



ゴブリン大部隊のダルレアス自治領侵攻も、ジーダペンス王国が放ったものかどうか。



ディオガルーダやその一味が、意図して情報を操作しているのか。



明日、ダルレアス自治領のザシンの所へ行ってみよう。



ディオガルーダの事について、何か知っているに違いない。



ウイプルに迫る脅威は、何処から。



ディオガルーダの、僕が腑抜けなままなら、ウイプルの敵として会う事になるという言葉。





気になる。





お前は、敵なのか?




シュリエルの21日
                     自分の家にて
_______

硬い皮の実、アマシヤン。



同じ騎士団のアゾルフが、僕に元気が出る様にと、くれた。



これを断ると、今、ヘールベータ地区で借りている家を出なければならなくなる。



だから、受け取った。



捨てる訳にも、誰かにあげる訳にもいかないだろう。



昔、よく食べていたな。



この硬い皮を、ベルベッタが砕くんだ。



そして、中に入っている甘くて濃厚な味の、まるでチーズを食べている様な感触の実を、ベルベッタと分けて食べていた。



ベルベッタは、その割った硬い皮を僕の頭に被せて、ギャーギャーと笑っていたな。



僕をからかって、喜んだりして。



でも、僕が川で溺れそうになった時、必死で川に飛び込んで、助けてくれた事もあった。



川に入る事を、誰も想像できないくらいに暴れて、嫌がるくせに。






消えた感情は、都合がいいから。





ベルベッタは、もういない。





僕は、ウイプルの兵なんだ。





ベルベッタの事も、思い出さない方がいいのかも。





ほら…




シュリエルの22日
                     自分の家にて
_______

リガード竜騎士団騎士長アーマンは、度々僕を励ましに来る。



おかしな事だ。



僕は、もう立ち直っているのに。



ダルレアス自治領のザシンへの謁見えっけんは、できないらしい。



昨日、クフト城へ行ったけど、しばらくは何かの対応で誰にも会う事はできないと。



急に、忙しくなった。



ディオガルーダがその城にいるからなのか。






そう思ったけど、





勝手にすればいいさ。





雷刀身竜ゲボルトベルザスドラゴン、ウイプルが成り上がる時を共にしたのなら、朽ち果てる時も、共にするか。



邪教国も、1つや2つの国じゃない。その全てがこのウイプルに向かってきたら、この王国は滅ぶだろう。



僕は、最後まで戦うさ。



そして、アスデン、コーリオも手を貸すはず。



ベルベッタが殺されても、対邪教国のために、同盟のために、アスデン王国を不問にしたのだから。





このウイプルの繁栄のため、何年もここに居続けた金呼鈴福竜コードペイリンカドラゴンを、最後はあんな死に方をさせるなんて。




僕は、このウイプルの王じゃないから、決定権も何もない。





今は、お母様の大好きなウイプルを、




守るのみ。




シュリエルの23日
                      自分の家にて
_______
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