剣士アスカ・グリーンディの日記

sayure

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第3章 竜の涙

竜戦士の奥義

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ディオガルーダの渾身の鋭い袈裟斬けさぎりを受け止めず、剣の軌道を逸らす様にして竜剣ジオグリシェルで弾いて、横に飛び退いた。

首から斜めに入り、そのまま心臓まで深く斬りつける様な狙いだった。後少しでも遅れていたら、弾く事ができず、そのまま斬り殺されていただろう。



斬撃が、想像以上に重い。



僕より長身の割に、動作が機敏。



ディオガルーダの頭上からの斬撃は全て、体重が載る。まともに受けると、後手に回り、場合によってはそのまま斬り殺される。

僕の水平斬りだと、ディオガルーダは受けづらいに違いないが、深く踏み込まないと、あの黒い鎧は破れない。



ディオガルーダ、僕が憎いのか?



そう思った。



でも。



ゴブリン大部隊襲撃時の雷刀身竜ゲボルトベルザスドラゴンの側で戦っていた時、ディオガルーダは、僕に悲しみの感情を持っていた。



その感情を受けた時、離れた場所にいた僕は、ごめんなさい、と。



どうか、許して、と思ったんだ。





僕を殺す気があったなら、出会った時からそう言えば良かったのに。











ディオガルーダは胸元へ、刺突を狙ってきた。



僕の作った隙を突こうとしたんだ。



一瞬で終わらせようとした。



ディオガルーダは、誘いに乗った。



僕を刺突で仕留められはしない。



重心を載せづらい刺突の技は、一瞬で仕留められなければ、剣でかわされ、そして。







僕が、人間側に立って、戦ってほしかったのだろうか?







ディオガルーダ。







同じ竜の血を持つ者同士が、何故、僕にそんな要求をする?







ウイプルを守って、ほしかったのにって。






そう言いたかったのだろうか。







ディオガルーダの強烈な怒り、それは剣に宿り、僕の命を書き消そうとしている。





ディオガルーダの刺突をかわし、僕は彼の懐に入り込んだ。





悲しみの終わりを。








願ったんだ。



__________

僕とディオガルーダの剣がすれ違う。



ウイプルの敵になるというのなら。



お前は、僕にとって、倒さなければいけない敵。




でも。






ディオガルーダは腰を捻って、剣を外から大きく円を描いて、すくい上げる様な斬り方、円月斬を仕掛けてきた。

瞬時に腰を捻って、遠心力を利用する彼のその剣技は、あまりにも速く、強い。

その剣の軌道は、僕のディオガルーダへの一太刀を防ぐばかりではなく、僕に致命傷を負わせようとするものだった。



僕のディオガルーダへの突進する勢いを利用して、僕も円月斬に切り替えるしかなかった。





ディオガルーダの強烈な斬撃を、まともに剣で受ける事になった。






戦慄が走った。






剣を持つ手から腕、肩にかけて亀裂が入り、腕ごと失ったと思わせるほどの威力。





ディオガルーダは、想像通り、相当戦い慣れている。







お母様の書室に入って、最初に見た手記は、人間の繁栄と、それと同時に竜が進化を遂げていた事。




机の上に置かれた手記で、一番手に取りやすいものだった。





僕に知らせたかったのは、竜への警鐘?



人間の世界に竜族は入り込んでいる。



竜の目論みは、世界の支配権奪還。



それを世界の崩壊と見て、人間と竜の間に入る竜もいる。



お母様やベルベッタ、そしてかつてのブルーシーズの様に。







ディオガルーダ、お前は?





覇王竜ダイダロス直系の竜族、天黄覇王竜アノメルガダイダロスが、人間と竜の間に入れるのだろうか。








ほぼ不可能だ。





お前が良いと言っても、ゾーファルや同族が許さないに違いない。






このウイプルにいた事もあった、お前が。







昔、お母様にも、会っていたお前が。








このウイプルを、僕に託したがっていたのか?







そう思った。







何故なら、このディオガルーダの激しい怒りの中、僕への大きな失望が感じられたから。






お母様の手記の中に、天黄覇王竜アノメルガダイダロスの名前、お前の名前はなかった。



多くの手記の中で、所々ページが破られ、抜かれていたのは。



お前が、自分の正体を隠そうとしていたからなのか?





お前は、本当は何者なんだ?



________

ディオガルーダは、僕との戦いの中、少し驚いた様でもあった。



竜族同士の戦いは、想像を超えている。そして、僕の方が分が悪い。



ある瞬間から、ディオガルーダは何かを狙っていた。



恐らく、何かの強力な技を隠している。



それが、僕には恐ろしく感じたんだ。



このまま、やられる訳にはいかなかった。



ディオガルーダが世界の崩壊を防ぐために、今の竜と人間の力の均衡を崩したくないとしても。




ディオガルーダは、今の厳しい立場だと、そのまま竜側に立ち、本格的に人間界への攻撃指令が下りれば、意に反してでも人間界を破滅させるだろう。





ヘンターの岩場でのゴブリン退治の後、お母様の書室の手記で読んだ、竜が人間に姿を変えて、空からの脅威に立ち向かった竜戦士の剣技。





あの文章にその剣技のヒントがあり、やり方は僕に伝わった。



一撃で、力を使い果たしてしまうかも知れない。




でも、今ここで死ぬ訳にはいかないんだ、と。






ディオガルーダが、これ以上、僕を殺そうとするなら。









その『竜形異技天地壊滅斬エンデステンシェル・ドラーク・ラグナロク』を放つ。




_________
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