73 / 113
第3章 竜の涙
竜戦士の奥義
しおりを挟む
ディオガルーダの渾身の鋭い袈裟斬りを受け止めず、剣の軌道を逸らす様にして竜剣ジオグリシェルで弾いて、横に飛び退いた。
首から斜めに入り、そのまま心臓まで深く斬りつける様な狙いだった。後少しでも遅れていたら、弾く事ができず、そのまま斬り殺されていただろう。
斬撃が、想像以上に重い。
僕より長身の割に、動作が機敏。
ディオガルーダの頭上からの斬撃は全て、体重が載る。まともに受けると、後手に回り、場合によってはそのまま斬り殺される。
僕の水平斬りだと、ディオガルーダは受けづらいに違いないが、深く踏み込まないと、あの黒い鎧は破れない。
ディオガルーダ、僕が憎いのか?
そう思った。
でも。
ゴブリン大部隊襲撃時の雷刀身竜の側で戦っていた時、ディオガルーダは、僕に悲しみの感情を持っていた。
その感情を受けた時、離れた場所にいた僕は、ごめんなさい、と。
どうか、許して、と思ったんだ。
僕を殺す気があったなら、出会った時からそう言えば良かったのに。
ディオガルーダは胸元へ、刺突を狙ってきた。
僕の作った隙を突こうとしたんだ。
一瞬で終わらせようとした。
ディオガルーダは、誘いに乗った。
僕を刺突で仕留められはしない。
重心を載せづらい刺突の技は、一瞬で仕留められなければ、剣でかわされ、そして。
僕が、人間側に立って、戦ってほしかったのだろうか?
ディオガルーダ。
同じ竜の血を持つ者同士が、何故、僕にそんな要求をする?
ウイプルを守って、ほしかったのにって。
そう言いたかったのだろうか。
ディオガルーダの強烈な怒り、それは剣に宿り、僕の命を書き消そうとしている。
ディオガルーダの刺突をかわし、僕は彼の懐に入り込んだ。
悲しみの終わりを。
願ったんだ。
__________
僕とディオガルーダの剣がすれ違う。
ウイプルの敵になるというのなら。
お前は、僕にとって、倒さなければいけない敵。
でも。
ディオガルーダは腰を捻って、剣を外から大きく円を描いて、すくい上げる様な斬り方、円月斬を仕掛けてきた。
瞬時に腰を捻って、遠心力を利用する彼のその剣技は、あまりにも速く、強い。
その剣の軌道は、僕のディオガルーダへの一太刀を防ぐばかりではなく、僕に致命傷を負わせようとするものだった。
僕のディオガルーダへの突進する勢いを利用して、僕も円月斬に切り替えるしかなかった。
ディオガルーダの強烈な斬撃を、まともに剣で受ける事になった。
戦慄が走った。
剣を持つ手から腕、肩にかけて亀裂が入り、腕ごと失ったと思わせるほどの威力。
ディオガルーダは、想像通り、相当戦い慣れている。
お母様の書室に入って、最初に見た手記は、人間の繁栄と、それと同時に竜が進化を遂げていた事。
机の上に置かれた手記で、一番手に取りやすいものだった。
僕に知らせたかったのは、竜への警鐘?
人間の世界に竜族は入り込んでいる。
竜の目論みは、世界の支配権奪還。
それを世界の崩壊と見て、人間と竜の間に入る竜もいる。
お母様やベルベッタ、そしてかつてのブルーシーズの様に。
ディオガルーダ、お前は?
覇王竜ダイダロス直系の竜族、天黄覇王竜が、人間と竜の間に入れるのだろうか。
ほぼ不可能だ。
お前が良いと言っても、ゾーファルや同族が許さないに違いない。
このウイプルにいた事もあった、お前が。
昔、お母様にも、会っていたお前が。
このウイプルを、僕に託したがっていたのか?
そう思った。
何故なら、このディオガルーダの激しい怒りの中、僕への大きな失望が感じられたから。
お母様の手記の中に、天黄覇王竜の名前、お前の名前はなかった。
多くの手記の中で、所々ページが破られ、抜かれていたのは。
お前が、自分の正体を隠そうとしていたからなのか?
お前は、本当は何者なんだ?
________
ディオガルーダは、僕との戦いの中、少し驚いた様でもあった。
竜族同士の戦いは、想像を超えている。そして、僕の方が分が悪い。
ある瞬間から、ディオガルーダは何かを狙っていた。
恐らく、何かの強力な技を隠している。
それが、僕には恐ろしく感じたんだ。
このまま、やられる訳にはいかなかった。
ディオガルーダが世界の崩壊を防ぐために、今の竜と人間の力の均衡を崩したくないとしても。
ディオガルーダは、今の厳しい立場だと、そのまま竜側に立ち、本格的に人間界への攻撃指令が下りれば、意に反してでも人間界を破滅させるだろう。
ヘンターの岩場でのゴブリン退治の後、お母様の書室の手記で読んだ、竜が人間に姿を変えて、空からの脅威に立ち向かった竜戦士の剣技。
あの文章にその剣技のヒントがあり、やり方は僕に伝わった。
一撃で、力を使い果たしてしまうかも知れない。
でも、今ここで死ぬ訳にはいかないんだ、と。
ディオガルーダが、これ以上、僕を殺そうとするなら。
その『竜形異技天地壊滅斬』を放つ。
_________
首から斜めに入り、そのまま心臓まで深く斬りつける様な狙いだった。後少しでも遅れていたら、弾く事ができず、そのまま斬り殺されていただろう。
斬撃が、想像以上に重い。
僕より長身の割に、動作が機敏。
ディオガルーダの頭上からの斬撃は全て、体重が載る。まともに受けると、後手に回り、場合によってはそのまま斬り殺される。
僕の水平斬りだと、ディオガルーダは受けづらいに違いないが、深く踏み込まないと、あの黒い鎧は破れない。
ディオガルーダ、僕が憎いのか?
そう思った。
でも。
ゴブリン大部隊襲撃時の雷刀身竜の側で戦っていた時、ディオガルーダは、僕に悲しみの感情を持っていた。
その感情を受けた時、離れた場所にいた僕は、ごめんなさい、と。
どうか、許して、と思ったんだ。
僕を殺す気があったなら、出会った時からそう言えば良かったのに。
ディオガルーダは胸元へ、刺突を狙ってきた。
僕の作った隙を突こうとしたんだ。
一瞬で終わらせようとした。
ディオガルーダは、誘いに乗った。
僕を刺突で仕留められはしない。
重心を載せづらい刺突の技は、一瞬で仕留められなければ、剣でかわされ、そして。
僕が、人間側に立って、戦ってほしかったのだろうか?
ディオガルーダ。
同じ竜の血を持つ者同士が、何故、僕にそんな要求をする?
ウイプルを守って、ほしかったのにって。
そう言いたかったのだろうか。
ディオガルーダの強烈な怒り、それは剣に宿り、僕の命を書き消そうとしている。
ディオガルーダの刺突をかわし、僕は彼の懐に入り込んだ。
悲しみの終わりを。
願ったんだ。
__________
僕とディオガルーダの剣がすれ違う。
ウイプルの敵になるというのなら。
お前は、僕にとって、倒さなければいけない敵。
でも。
ディオガルーダは腰を捻って、剣を外から大きく円を描いて、すくい上げる様な斬り方、円月斬を仕掛けてきた。
瞬時に腰を捻って、遠心力を利用する彼のその剣技は、あまりにも速く、強い。
その剣の軌道は、僕のディオガルーダへの一太刀を防ぐばかりではなく、僕に致命傷を負わせようとするものだった。
僕のディオガルーダへの突進する勢いを利用して、僕も円月斬に切り替えるしかなかった。
ディオガルーダの強烈な斬撃を、まともに剣で受ける事になった。
戦慄が走った。
剣を持つ手から腕、肩にかけて亀裂が入り、腕ごと失ったと思わせるほどの威力。
ディオガルーダは、想像通り、相当戦い慣れている。
お母様の書室に入って、最初に見た手記は、人間の繁栄と、それと同時に竜が進化を遂げていた事。
机の上に置かれた手記で、一番手に取りやすいものだった。
僕に知らせたかったのは、竜への警鐘?
人間の世界に竜族は入り込んでいる。
竜の目論みは、世界の支配権奪還。
それを世界の崩壊と見て、人間と竜の間に入る竜もいる。
お母様やベルベッタ、そしてかつてのブルーシーズの様に。
ディオガルーダ、お前は?
覇王竜ダイダロス直系の竜族、天黄覇王竜が、人間と竜の間に入れるのだろうか。
ほぼ不可能だ。
お前が良いと言っても、ゾーファルや同族が許さないに違いない。
このウイプルにいた事もあった、お前が。
昔、お母様にも、会っていたお前が。
このウイプルを、僕に託したがっていたのか?
そう思った。
何故なら、このディオガルーダの激しい怒りの中、僕への大きな失望が感じられたから。
お母様の手記の中に、天黄覇王竜の名前、お前の名前はなかった。
多くの手記の中で、所々ページが破られ、抜かれていたのは。
お前が、自分の正体を隠そうとしていたからなのか?
お前は、本当は何者なんだ?
________
ディオガルーダは、僕との戦いの中、少し驚いた様でもあった。
竜族同士の戦いは、想像を超えている。そして、僕の方が分が悪い。
ある瞬間から、ディオガルーダは何かを狙っていた。
恐らく、何かの強力な技を隠している。
それが、僕には恐ろしく感じたんだ。
このまま、やられる訳にはいかなかった。
ディオガルーダが世界の崩壊を防ぐために、今の竜と人間の力の均衡を崩したくないとしても。
ディオガルーダは、今の厳しい立場だと、そのまま竜側に立ち、本格的に人間界への攻撃指令が下りれば、意に反してでも人間界を破滅させるだろう。
ヘンターの岩場でのゴブリン退治の後、お母様の書室の手記で読んだ、竜が人間に姿を変えて、空からの脅威に立ち向かった竜戦士の剣技。
あの文章にその剣技のヒントがあり、やり方は僕に伝わった。
一撃で、力を使い果たしてしまうかも知れない。
でも、今ここで死ぬ訳にはいかないんだ、と。
ディオガルーダが、これ以上、僕を殺そうとするなら。
その『竜形異技天地壊滅斬』を放つ。
_________
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
拾われ子のスイ
蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】
記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。
幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。
老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。
――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。
スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。
出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。
清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。
これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。
※週2回(木・日)更新。
※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。
※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載)
※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
わたしのことがお嫌いなら、離縁してください~冷遇された妻は、過小評価されている~
絹乃
恋愛
伯爵夫人のフロレンシアは、夫からもメイドからも使用人以下の扱いを受けていた。どんなに離婚してほしいと夫に訴えても、認めてもらえない。夫は自分の愛人を屋敷に迎え、生まれてくる子供の世話すらもフロレンシアに押しつけようと画策する。地味で目立たないフロレンシアに、どんな価値があるか夫もメイドも知らずに。彼女を正しく理解しているのは騎士団の副団長エミリオと、王女のモニカだけだった。※番外編が別にあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる