剣士アスカ・グリーンディの日記

sayure

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第4章 貴方へ愛の言葉を

囚人の存在

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何人か、足りない。



特別、重い罪を犯したとは思えなかった者達だから、僕の意識から外れていたのかも知れない。



看守に釈放された者がいたかどうかを確認した。





看守達は、笑っていたな。







そんな者がいるわけがない。






釈放される事のない重い罪を犯した囚人、釈放されては困る王族、上流階級の貴族がいる囚人。




このカインハッタ牢獄にいる囚人は、故郷に戻る事はない。





それでも、家族や知人がこのカインハッタ牢獄に訪ねて、差し入れを贈る。






看守には、お金を。








このカインハッタ牢獄にとって、利益となる囚人。








なら、家族や知人の来ない囚人は?








生きても、死んでも。










誰にも興味を持たれない。








このアメリディロ島に、海賊船が近づいていた事があったな。







このカインハッタ牢獄は、ウイプル王国の管轄下にある。






本国から離れ、孤島だからと好き放題にしてはならないんだ。







お前達は。









見放された存在か。






この限られた狭い部屋の中で一生を過ごすくらいなら。







海賊にでもなった方がましだと思うか?








それを望んだとしても、海賊に知恵や力を与えるわけにはいかない。








お前達も、使い捨ての様に扱われ、死んでしまうだろう。








海賊が気にする、絆を持っていない。











海賊に囚人を渡している確実な証拠が必要だ。







そこまでして救う必要があるのか、と。









ウイプルの民もいる。










罪を犯した後でも、彼らはウイプルの民か?









ベリオストロフ・グリーンディは、どうなんだ。








彼は、僕を殺そうとした。











まだ幼い僕を。










僕も望まれていない。











望まれて、生まれなかった。










僕も、囚人と同じ様に、必要がない?











それでも。













僕は、お母様との約束を果たすんだ。










僕は、ブルーシーズの心の片隅にあった、願いにも似た想いに気づけず、剣の軌道を変える事ができなかった。









僕は、ブルーシーズを殺してしまった。










でも、その時にブルーシーズがかばったヴィルアズ王。







母国ウルヘイド王国を守護する竜であるブルーシーズの白灰千王竜ホローエヴァルドドラゴンを、邪教国の圧力に屈する形で殺してしまったのに、彼はその白灰千王竜によって、命を救われた。








君が死んだ時、彼は泣いていた。










ヴィルアズ王の死んだ心を、蘇らせた。











その後、ヴィルアズ王率いるウルヘイド王国軍は、邪教国に反旗を翻し、邪教国ガンジルと交戦、そして、見事に打ち勝ったんだ。









今の僕も、ヴィルアズ王と同じ。










まだ死ねない。










ブルーシーズを殺してしまった事で、僕は希望を失って。










死のうとした。













でも、ベルベッタが僕が死なない様に、身を投げ出して、守ってくれた。









その時。













ベルベッタは、僕に命を吸われてしまったのかな。










もっと。









もっと生きたかったはずなのに。













今でも、僕の心の中に。











ずっと、ベルベッタ、お前がいる。










この命は、お前に救われた。










そして。










シルファリアスとの、約束を。そうだ、あれは約束だ。











ベルベッタを殺され、全てに失望をしたまま、いい加減な状態でウイプルを守ろうとした。そんな僕を、シルファリアスは命を賭けて、道を示してくれた。











兄さん。
















僕の死んだ心は、蘇ったんだ。















お母様に代わり、僕がウイプルを守ってみせる。





人類を滅しかねない野望に満ちた竜、ゾーファルに、ウイプルをやらせはしない。




人間と竜との均衡を、崩し、大きく片側に偏れば、竜か、人間のどちらかが、滅びてしまう。









僕は、ウイプルの人間。











そして、ウイプルの竜。











僕にたくさんの者達が関わり、紡がれた糸を。









ベリオストロフ・グリーンディが僕の存在を否定しても。









ここで、途切れさせるわけにはいかない。










僕は。













僕は、人間と竜の王国、ウイプルと共に。









これからも生きていく。










だから。










カインハッタ牢獄を管轄するウイプルから、終わりの鐘が鳴らされるまで、お前達、囚人の身は。










僕が守ってみせるよ。






ジスマリアの20日
     カインハッタ牢獄内にて
___________


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