剣士アスカ・グリーンディの日記

sayure

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第4章 貴方へ愛の言葉を

破滅の宝石

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ゲーベルドンの胸奥の心臓部に光る紫色の宝石は、体の外にまで強い光を放つ。












脈打つごとに、その紫色の宝石のせいか、ゲーベルドンの体が少しずつ大きくなっている様な気がした。













そう思い始めた瞬間、一気に体の各箇所の筋肉が大きく膨れ上がった。













何かに化けようとしているのか、と。












今すぐ、とどめを刺さないといけない。













僕は、足を振り上げ、鉄靴の踵で、ゲーベルドンの胸奥で光る紫色の宝石目掛けて、強く踏みつけた。











胸骨が砕ける音が響いた時、胸奥の紫色の宝石にも、僕の攻撃が伝わった、と。












そう思ったんだ。













紫色の宝石は、光を失う事なく、また砕かれる事なく、変わらない光を放っていた。










ゲーベルドンは、勝ち誇った様に笑って見せて、











私に絶望を与えたのだから、その絶望をお前にも分けてやろうと、そう言ってきた。












虚勢の様な目をしていない。何か根拠があって、自信を持って、そう僕に言ってきているんだ。












そう笑っていたゲーベルドンの表情が変わった。

















苦しくもがき始めたゲーベルドンの顔に青筋の血管が、何本も這い、












それと同時に、ゲーベルドンの皮膚が、硬化し始めている事に気がついた。














光り輝く宝石が、人の体に入り込んで、姿を大きく変え、暴れ回り、街が1つなくなった事が記された本を、昔、お母様からもらった本の中で、あったのを覚えている。










怪物に変わろうとしているゲーベルドンを前にして、あまり深く考える余裕もなかった。












ゲーベルドンの胸奥に光り続ける宝石を何とか砕こうと、また足を振り上げ、今度は重心を深く踵に乗せ、強く踏みつけた。











もう、先ほどとは感触が違う。















胸元の筋肉は何倍も分厚く、硬くなっていた。













ゲーベルドンの目が赤く染まり、人の目をしていない。もう、意識すら、ないだろう。















紫色の宝石から、ゲーベルドンの全身へ力が流れ、変貌しようとしている。












例え魔物に化けようとしていても、僕の予想の範囲内であれば、僕の敵じゃない。ただ、どう化けようと、素手で倒せるほど、僕は圧倒的な存在じゃない。












口から異常に発達した犬歯を伸ばし、ゲーベルドンは、僕に真っ赤に染まった目を向けてきた。











そして、素早い動きで、背を地面につけたまま、僕の右腕を掴んできたんだ。










怪物化し続けるゲーベルドンは、掴んだ僕の腕を引っ張り、攻撃できる範囲まで引き込もうとしている。










ゲーベルドンの腕がまだ少し伸びている状態で、僕の力が想像以上にあると感じたのか、かんたんにいかず、ゲーベルドンは唸り声を上げていた。だけど、この紫色の宝石の向かわせる姿の、最終形態がまだ完成していない状態だ、それが完成に近づくほど、勝負は怪しくなるのは、明らかだった。














だから。














竜剣。













竜剣ジオグリシェルよ。












聖鋼竜ジオハートの鱗から生まれた精鋭7本の剣、その1本の剣、ジオグリシェルよ。















僕がわかるか?












多くの戦場で、共に戦った、破壊巨神魚竜バハムートと人間の血を持つアスカ・グリーンディを。













僕を、僕を所有者と認めるならば、僕の居場所を嗅ぎ分けろ。














聖鋼竜ジオハートよ、僕を竜族と認め、その鱗から生成された剣を、正統なる所有者と認めるならば。












ジオグリシェルをこの場へ。











ゲーベルドンの腕は、力を増して、僕を右手で攻撃できる範囲まで引っ張ろうとし続けた。僕の踏ん張っている右足の鉄靴の底と、石畳の床で強く擦り合い、キリキリと音を鳴らしていた。










このままだと、やられる。












そう、感じた。




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