とてもおいしいオレンジジュースから紡がれた転生冒険!そして婚約破棄はあるのか(仮)

sayure

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第一章 オレン死(ジ)ジュースから転生

その49

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うさ耳オヤジの体が怒りに震え、毛が逆立ち、真っ赤な目を俺に向ける。赤い目に真っ赤な亀裂が入って…。いや、充血。目が破裂しそうなほど目を見張る。

体の感覚がまた少し麻痺してくる様な気がする。自分の体温すら、あまり感じない。生きた心地がしないな。やっぱり、あの狂気の赤い目が向けられてると、まともじゃいられなくなる。体が死ぬ準備をし始めてるのかな。さっきの次元斬、もう少し深手だったりしないかな。そうじゃないと、俺。

弱気になるなよ。なっちゃダメだ。そうだろ?



「まさか、俺に傷を負わせるとはな。シンガリ族の疾風と呼ばれた俺相手に、よぉ?」



自尊心ってヤツが傷ついたか?お前が俺を侮っただけじゃないか。俺のせいじゃない、自分のせいだ。

次のうさ耳オヤジの攻撃も、俺の胸への攻撃をしてくれるのか。いや、タイミングを計っていた事にはもう、気づいただろうな。もう同じ攻撃はしてこない。

お話しライオンとの戦いで、鎧の所々が欠けている。そこに奴の攻撃をまともに受けたら、反撃どころじゃない。



ぴょん。





くそっ、早速の恒例、攻撃前準備体操だ。





ぴょん、ぴょん、ぴょん、ぴょん。






「うっ…!?」





準備体操のテンポを変えてきやがった。そして、俺への攻撃に入る。地面を蹴って、そしてうさ耳オヤジの姿が景色に溶け込んでいく。風を切る音と、地面を蹴る音が聞こえるだけで、姿が見えない。うさ耳オヤジの動きに、相変わらず目が中々慣れていかない!





ヒュンッ!







風を切る音が左に大きく逸れた。さっきとは軌道が、違う。




俺は目に頼らず、音で判断して、左前を斬るイメージで、落ち着いて、なるべく速くと、水平に大剣を振った。ただ、次元斬を意識して斬るには、ほど遠い。





ビュンッ!







空を斬る感じだ。タイミングが早過ぎたのか?変に警戒されたのか、風を切る音は、俺の左後ろまで聞こえて、そこから一直線に俺に向かってきた。予想以上に、回り込んできた。








意識が飛ぶのには十分の衝撃、横っ面に思いっ切り…蹴っ飛ばされた??何となく、これは拳じゃないな。それでも、顔がなくなったかと思いほどの威力は変わらない。左側を警戒してそっちに顔を向けていた方向が、うさ耳オヤジの左横っ面への攻撃で、一気に真逆の右側の遠くの方を見る様に顔を向け、ちぎれそうなほど、首を伸ばす羽目になった。左頬に重く深い痛みを受け、それが顔全体に広がっていく。そして、顔が急に麻痺していった。顔が、なくなったかのか?いや、亡くなった。か。







横っ面を殴られたのは、これで3度目だ。







そうだ。







1度目は、小学生の時、体格のいい乱暴な同級生に横っ面を殴られた。理由は、よく覚えていないな。給食の時、並び順を無視して入った相手に、注意をしたら、拳が飛んできたとか。とにかく、くだらない理由だった気がする。どうでもいいさ。すぐに仲直りもした。そんなもんさ。ガキの時なんて。




2度目の時は、中学2年の時、友達に横っ面を殴られたな。大して力のない奴だったから、別に痛くはなかった。もっと体を鍛えてた方が効いてたかもな。でも、傷ついたよ。俺、お前を庇ったのにな。クラスで財布がなくなったって騒いだ奴がいて、そしてお前がそれを見つけていて、本人に返したのに、中身が少ないからと、責められていたよな。お前は気が弱くて、でも筋が通らない事は嫌いで、怒るとすぐに表情が苦々しくなる。正直者なんだよな。



俺がお前を庇ったのが気に入らなかったんだろうな。標的は俺になった。財布を失くしてた奴が、お前に謝って。本当は、俺が財布を盗んでいたんだって、財布の中身を抜いて、お前が見つけやすい様に、前の授業で使ったPC教室の、お前の席の下に落とした。それを見ていた奴がいたって。


お前は、そいつの話を信じた。俺の事、疑ったんだ。俺は、お前の事、信じたのにな。


中学2年と3年は同じクラスのまま。それでも、俺は、お前と仲直りしなかった。お前も、できなかっただろう。そして、俺達は、そのまま中学を卒業したんだ。



別に、どうでもいいさ。今さら、興味なんて、ない。そんな事。どうでもいい。








あー、花畑だ!死んだな、これは。俺にはわかるぞ。全部摘んでやるぞ、このヤロー!





あ…。







白装束の、忍者達!?村を襲ってる。うわっ!皆殺しにするつもりか!?女子供も標的にしやがって。何なんだ、コイツらは?



黒装束の、これも忍者達が現れたぞ。白装束の忍者達は、笑いながら逃げて行ったな。黒装束の忍者達のほとんどは村に残って、負傷した人達を手当てしてる。酷い…。最低な奴らだな、白装束のクソ忍者!



そうか。俺は、地獄行きだったのか。酷い。まぁ、確かに何かいい事やった覚えもないけどな。人命救助とか、やってこなかったし。それは俺以外もないだろうな。ああ、でも残念だな…。



あれ?黒装束の忍者の中に、霧蔵と右京がいる!?村人が霧蔵の事、慕ってる様な気がする。もしかして、霧蔵の故郷?それとも、それに近い様な場所かな。



って、じゃあ地獄でもないな!?まぁた、あの紫色の炎かぁ?いい加減しつこいな!だから、お前を受け入れるつもりはないって言ってんだろうが!



俺は、まだ死んでないの?いや、死ぬ寸前なのかも。



雑木林で霧蔵と右京の修行、この風景は前に見た様な気がするな。村が襲われたのは、忍者の派閥争いなのかな。霧蔵は真っ直ぐないい目をしてる。いい奴なんだろうな。そんな霧蔵を右京は裏切って、霧蔵が手に入れたリーダー的ポジションを奪うんだから、非道だよな。死んで当然だ。




あ!




また見るのこれ?





屋敷の長い廊下に座って、夜月を見る霧蔵と右京。



右京から酒を注がれて…。




霧蔵は盃に注がれる酒をうれしそうに、見つめてる。



霧蔵、飲むな、飲むんじゃねぇ!



それは、毒が…。




毒が…。




俺の声が届かねぇ…。





霧蔵が、死んだ。




また、このシーン見る羽目になった。





もう、見たくないのに。





だから、お前が嫌いなんだよ。





右京。




何で…お前は、笑ってるんだ。





そして。





何で、お前は、泣いているんだ。

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