とてもおいしいオレンジジュースから紡がれた転生冒険!そして婚約破棄はあるのか(仮)

sayure

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第一章 オレン死(ジ)ジュースから転生

その50

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あれ…?

石橋の手すりが目の前にある。

うさ耳オヤジに横っ面蹴っ飛ばされて。ここまで吹っ飛んだのかな。

あれ…?

いて…ぇッ!!?

左頬の鈍い痛みから、激痛に変わってきた。俺の意識がはっきりしてきたからか?この痛みの大きさ、骨までやられていないだろうな!?くそっ、触りたくねぇ…。



「よぉし!よく生きてたな。そろそろゲルロブライザー装置の中にお前を投げ込むとしようか。さっきの斬撃で傷を負わされ、本来なら俺に殺されても文句は言えないだろうが、俺は別に殺しを楽しむ気はねぇからな。全ては、炎真えんま大将グレンベールのおかげってヤツだな」



得意げにそう言って、豪快に笑うバカ耳オヤジ。大陸が浮いてないと、この第2大陸とやらが維持できないか。だったら、壊れちまえよ。どうせ、まともな奴なんて、存在しないだろうからな。互いに殺し合い、とっくに滅びてしまえばよかったのによ。



手すりに乗っかってる俺の手の指が痙攣してる。ちょっと力入れたら、それは止まった。

指の動きの確認…と。

いち、にぃ、さん、しぃ、ご…。

ちゃんと反応する。

意外と俺、丈夫なのかな。体にまだ、力が入る。

鎧越しじゃなく、直接顔を蹴られたのに、本当、よく生きてたな。





「この世界は弱肉強食、弱い奴は滅び、強い者が残る。そうだろ?小僧、お前はどっちの方かは…もうわかったな?」



偉そうに言いやがって。お前がそんなに強いか?多分、お前はお話しライオンに勝てないと思うぞ。殺人鬼シュティールなら、もっとだ。でも、俺よりは、強いだろうな。俺は…最弱だからな。



その俺に、傷を負わされてるんだ。お前も本当は俺と大差ないんじゃないのか?体の外側じゃないから、傷の大きさがイマイチわからないけど。まぁ、平然と立ってしゃべってるんだから、重傷じゃないって事くらいはわかるさ。

この大陸のためだけど、この大陸に住んでる奴らとは直接協力するのは、嫌なんだろ?他の奴らを見てると、そんな気がするんだよ。

いや、全員が全員でもないか?

いや、俺がお人好しなだけ。この世界だとな。



「お?まだやるつもりか?止めておけ、そこまで痛みが酷くならないうちに、ゲルロブライザー装置に入っていけよ」



くそっ、十分酷い痛みになってんだよ。痛みが酷くならないうちに、病院に行きなさいみたいな言い方するんじゃねぇよ。ゲルロブライザーは処刑場と同じだろうが。



落ちていた大剣を拾って、と。まだいけるな、俺。どうせ、今も死んでる様なもんなんだから、いくらでもいけるだろ?最弱は撤回だ。やっぱり、最強にしておくよ。俺は、最強だ。



「いいぜぇ?俺の強さを存分に味わってくれよ」



うさ耳オヤジの赤い目に力がみなぎってる感じがする。はぁ…。俺相手に余裕そうだな。



「なぁ…?1つ言ってもいいか?」



このうさ耳オヤジに、これだけは言ってやらないと。




「ああ?何だ、小僧。コームーを飲みてぇとか言うんじゃねぇだろうな?もう、お前にやるものはねぇぜ」





コームーは今すぐ根絶やしにするべきだ。2度と見たくはないからな。





「あんたが尊敬する炎真大将グレンベールって人はさ、クズだって事がよくわかったよ…」



俺がそう言ったら、明らかにうさ耳オヤジの表情が変わったな。驚いて、強張った表情になって、そこから鼻や頬をピクピクと痙攣させていく。それがどんどん速くなって、額にたくさんの筋が入るようになってきた。

眉間にモリッと、山が出来上がると、目つきが今までにないくらい鋭くなってきた。何て目つきだ。呪われそうなほど凄い怨みの目だ。




「ああ…?そりゃ、どういう意味だ、おい。俺を怒らせてぇのか?」



何だ、まだ怒ってなかったのか?うさ耳オヤジ。



「…心が広いって。みんなが背を向けていたのに、みんな、奴の方を向いて話をする様になったって、あんたが話してくれたじゃないか。

足元をすくう奴とは違うとか、言ってたよな?」



「あ?」



「…そう見せかけておいて、他人を利用して、殺して、結局は自分の事ばかり考える事が1番なんだって、教えてくれたんだろ?

そのグレンベールを尊敬するお前を見てれば、よくわかるんだよ…。笑えるよな?グレンベールって…」




うさ耳オヤジの悔しそうに食いしばる歯が意外と大きい。噛みつかれたら、食いちぎられそうだ。




「この…野郎!この大陸のために動いたグレンベールの、何がわかる?」



わかりたくもないね。お前が尊敬する奴は、みんなクズみたいな奴なんだろうからさ。



次元斬は、細胞と細胞の間か、異次元への筋道か、全てが重なって、道を開けているのがわかる瞬間がある。その一瞬に、大剣をぶれずに素早く振り抜く必要がある。最後までスパッといくのは、俺の剣の技術じゃ無理だ。だから、筋道が見えた時は、そこに集中して振り抜く、プチ次元斬で、奴の体内に少しでも深く攻撃をしていくしかない。



これ以上、疲労がたまり過ぎたり、傷を負ってまともに剣が振れなくなれば、筋道が見えても、次元斬は無理だ。力任せにうさ耳オヤジに剣を振って、倒せるかどうか。



「…何か策でも思い浮かんだか?お前をどうしてやろうか…。このままエネルギー搾取してもいいんだけど、このまま…殺しちまおうか、迷ってんだよ。よぉ…、お前、選べよ」



第3の選択肢、お前自身がエネルギー取られてくたばるっていうのは、どうだ?



このうさ耳オヤジとの戦い、長引かせれば圧倒的に不利なのは間違いない。そもそも、互角の戦いじゃねぇ。 最初から、わかってるんだよ。




ぴょん…。




ぴょん、ぴょん、ぴょん。





「次はお前…」





恒例の、ぴょんぴょん準備体操。






「死ぬかもな…?」






うさ耳オヤジは地面を強く蹴り、そして姿を消した。






!!?















あ…あれ?





また。






明らかに、違う場所だな。







また紫の炎…か。いい加減しつこいな。



森の中。







はぁ。






うわっ!危ねぇッ!



手裏剣が飛んできた!






黒装束と白装束の人達が森の中で戦っている。




体にたくさんの鎖を巻いて機敏に動く白装束の大男がいる。

嘘だろ!?今の黒装束の忍者の刀の一振りを、バックステップで避けたのか??

首に巻いている鎖鎌を器用に振り回して、黒装束の忍者を次から次へと斬りつけ、殺している。

血が飛び散ってる。あー、見たくねぇ!

こいつ、5、6人を一度に相手にしても、全く負ける様子がない。

バケモノだ、こいつ。

でも、霧蔵がいたら、こいつには負けはしないかっただろう。

霧蔵に完全武装なんて、意味がない。



次元斬がある。



この場面は、いつのものだ?



わからない…。



最初にここに意識を飛ばされた時は、いきなり右京が墓石の前で開き直った様に1人で話していて、その後、川に身を沈めて、死んだ。



でも、その次は、黒装束の忍者達の中に
霧蔵と右京がいた。



前の、霧蔵の力を手に入れた時は、そうじゃなかったはず。霧蔵の出来事を見せられた時は、場面場面が時の流れ通りに順番に現れた感じだ。



俺が…。



右京の力を拒んでいるからか?




順番がメチャクチャになってる…。








白装束の鎖巻き大男が、遠くの煙に気づいて、そこに向かい始めたぞ。



黒装束の忍者達が手裏剣で狙って投げても、あの鎖巻きの体が弾いてる。意味がない。



白装束の忍者が鎖巻き大男の名前を呼んだな。

牙音番禺げおんばんぐ様って、言われてるな。こいつ、白装束の忍者のリーダーか?

木の枝を蹴って、あの体格でかなり速い移動速度だな。あの体の中には、綿しか入ってないんじゃないか?





あ、右京がいるじゃないか!?



右京が、ついて行ってる。



牙音番禺は右京に気づいていない様だ。



牙音番禺達の向かっている煙が空に昇っている場所は、里?忍者の里か?



少し開けた場所に出た瞬間に、右京が仕掛ける!




え?






あ、そう。








お前の心の声が聞こえた…?








次元斬、は習得できなかったが…って言った?









もしかして、こいつを倒すために、次元斬が必要だったのか?











霧蔵…?







やっぱり。










お前が、霧蔵を殺した後の事か、これは。







右京、こいつはバケモノだ。









次元斬を会得してないのに、どうするんだ?







この後、逃げたのか、お前。








やられて、でもこの時は死ななかったとか。

あー、それはあり得るな。







右京は、晴れ晴れした表情で墓石に話しかけて、その後川の中に入り、死んでいった。







あの墓石は、誰のだ?









まさか。










霧蔵のか…?










右京、お前…もしかして。












…牙音番禺を倒せたのか? 
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