とてもおいしいオレンジジュースから紡がれた転生冒険!そして婚約破棄はあるのか(仮)

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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その265

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体の中を熱くて黒いものがぐるぐると回る。それに心がついていけば、先ほどの体の不安定さを一気に解消できた。

力一杯に殴った俺の拳はとても固く感じて、俊敏さも大きく上がった様に思う。

そうだ、俺は明らかに強くなった。

これなら、《冬枯れの牙》ラグリェさえも、倒せる気がする。

あいつも、次に見つけたら、必ず復讐してやる!

借りは必ず返す、200倍にして。

今の俺なら、それができる。



「だははっ!中々いい攻撃だなぁ?私には、そんなもん、きかないけどな!?」



何を強気でいやがる!お前は、家庭を崩壊させたカスだ。母さんを泣かせたカスだ。

俺に人の心が如何に冷たいかを教えたカスだ。

お前に心の温もりは存在しない。

だから、今もずっと心の奥底で凍傷が消えてなくならない。

絶対に温まらない部分を、俺はいつも不思議に見ていた。

俺、おかしくなったんじゃないかって。

人はここまで冷たくなれるんだって。

そんな部分を作り出したのは、お前だ。

俺は、お前が憎い。



「私の反撃を食らいなよ、小せぇ赤ちゃん!」



父さんが手を上げた。そうだ、それを俺にぶつける気だ。

日常の不満を全てぶつける様に、俺を殴る気だ。

やれるもんならやってみろ!?

俺もお前を思いっきり殴り倒してやる!



「こいよ!やれるもんなら、やってみろぉっ!?」



ブォオンッ!!


何だ?



相手の拳が急に大きく…。



とても、大きくなっていく。



バキィイィッ!!



耳が…!

耳が痛いっ!



「はぐっ…?」



顔と胸が重い。

重くて、苦しい…。



「ぐっはッ…!」



「ゴホッ!ゴホッ…!」



しまった。

俺、相手のパンチをまともに、もらっ…た。



小鈴ショウレイの攻撃をまともに受けたな…。それでも立っている事は賞賛に値する。リョウマ族の真髄、このハムカンデに見せてみよ」



ハムカンデ?今何か言ったのか?

奴の声が聞こえた様な気がする。

ハムカンデ、お前を許しはしない。

お前を…。



「お前の相手は私だ!こんのぉ、こっち向け!」



ブォオオッ!



うっ…!?

今度は、下から地面を這う様にして蹴りが…!



足が、足が近づくにつれて大きくなるっ!?



ドボオォォオッ!!



「ぐおッ…。は、はッ…!」



ガシャッ…!



「ぐく…ッ!」



い、息ができない!



「は、は…ッ!はぐッ!」



鳩尾辺りにもらっちまった。

だ、ダメだ!

息が…!



「はっ!はぁ…ッ!」



目が霞んでくる。ダメだ、このままだと!

ここで倒される訳にはいかねえのに。

てめぇなんかに、負けたくねえ!

人の人生を台なしにした、奴なんかに、これ以上…!

お前なんかによ…。

何だってんだ。



「…?」



何で余計な事言ってくるんだよ。

いつも、いつも。

そんなの。

うるせえよ…!

うるせえんだよ!

そんな事、わかってんだよ!



「お?何だ、その目は。片膝をついて苦しそうだなぁ?何ができるんだ?そこから…!」



呼吸をしようとしてもできないんなら、仕方がね…え。



「はっ…!」



呼吸を停止ッ…!

苦しいけど、我慢して呼吸機能をゼロに戻す。

その間、目は相手を牽制するために睨みつけろ!何かあるんだと思わせろ!



「そこから何がやれんだよ、小せぇくせして!」



ぐっ…。

まだ、まだだ。



…。



…。



よし。

呼吸をゆっくり大きく…。

い、痛ぇ。

まだ鳩尾が完全に回復してねえ。

落ち着け。

ゆっくり吸って。

今度は、ゆっくり吐く。

呼吸機能を正常に戻すため。

ゆっくり吸う。

ゆっくり吐いて…。

湧き出る怒りに耳を貸すな!

落ち着け、落ち着けって!



「!?」



痛ぇ…な、クソッ。

でも、だいぶ回復してきたぞ。



はぁぁぁ…っ。



はぁぁ…。



よし…。

どうした?

俺はまだやれるぞ。



「小せぇ赤ちゃんが、生意気に立ってよ?褒めて欲しいのか?」



褒めたければ褒めろよ。

褒めた事なんてないくせによ。

家庭を壊した分、お前も壊してやるよ。



「次はもっと思いっきりぶん殴ってやるからな!?二度と立てねえ様にしてやるだはっ!」



だは?いつからそんなクソみてえな語尾つけてやがるんだ、てめぇはよ。

言葉のセンスも本当に底辺のカスだな。

やってやるよ。

俺も、次はお前を殺す気でやってやるよ!



「?」



何だ、今…。

俺の体からか?

パルンガの臭いがした様な気がした。

いや、まさかな。

気のせいか。



「…」



まさかパルンガ、お前なのか?

いや、違う…。

何か違うな。

この臭いは、何処からだ?

周りを見渡してもゼドケフラーはいない。

パルンガの死体は、四隅の竜の杭のある外側に置かれている。俺からは遠い。

もっと近くから臭いがする。

それは、俺の…体の中?

俺の体の中に、何で?



「またよそ見したな、お前!もう許さねえからな!?」



まさか、俺の体の中を巡る奴か?

それは、力を宿してくれた東角猫トーニャじゃない。

俺に怒りや憎しみを直接与えてくる奴。



「お前が来ねえなら、行くぞ!小せぇ、赤ちゃん!」



父さんが振りかぶった!

次の攻撃がくる!?

足がさっきの攻撃で腹から下が重い。

それでも!



「オラァッ!」



動くしかねえッ!



ザシュッ!



ブォオンッ!!



「うが…?」



ザザザッ…!



意外とうまく体が動いてくれた。

よくも、俺に攻撃してくれたな!?

このカスめが。

この世に不要な奴が!



落ち着け…!



落ち着がないと、まともに戦えない。



お前は、誰だ?

俺の中で動き回って、怒りを駆り立てる奴は、誰なんだ?

パルンガの臭い…。

そうか。

お前は、きっと。

そうだ。

お前は、パルンガと同じ臭い。

ゼドケフラーだ。

こいつのおかげで、俺は冷静になれていない。

そうだ、あの吹き矢を首に打ち込まれたからだ。

よく考えろ、俺の目の前に父さんがいるなんて、あり得る訳がない。

俺は今、別の世界にいる。

父さんはこの世界にはいない。

目の前にいるのは…。

どういう訳か、父さんにしか見えないな。

どうなってんだ?



「どうした、小せぇ赤ちゃん?もう終わりか?」



「じゃあ、もう殺してしまうからなあ?ガハハッ!」



父さんが振りかぶった…。

何て無様なんだ。

そうだよ、あの父さんがさ!



「ははははっ!」



「ガハハッ!死ねえぇっ!!」



ブォオンッ!!



さっきみたいに拳が近づくにつれて大きくなるのは計算済みだ。

お前は無様なんだよ!

そうだ、そんな奴に怯える必要もないよな!?



ダッ!



そんなに大きく顎を上げて殴ろうとするお前は!

間違いなく、父さんじゃない!!



「よしッ!」



「何!?」



相手の攻撃を跳んでかわしながら、俺の攻撃範囲から相手を出さない様に、宙でバランスを取って体を留める…!



「くらえッ!」



そのいかれた顎に制裁を加えてやるッ!



これが!



宙構ちゅうがまえ…」



天王てんおう突きだあッ!!」




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