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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い
その314
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記憶の景色にまた、波紋が広がる。
この波紋は、何だ?
アンタの涙が、この景色に落ちて、こんな現象を見せているのか?
後悔なのか?
それとも…。
ゼドケフラーに真実を見極めて欲しかったのに、そうはならなかったから、悲しんでいるのか?
俺は…。
俺の知っているゼドケフラーは、イヤな奴じゃなかった。
きっと。
アンタのよく知っているゼドケフラーも、きっと悪い奴じゃないって、わかっているよな?
俺をこんな戦いに巻き込みやがった奴らは許せねえ。
あのハムカンデは、俺とパルンガとの戦いを仕組みやがった。
パルンガに幻覚で暴走させやがって。
俺は、メベヘをやっつけて。
ハムカンデまで行き着かないといけないんだ。
頼む…。
力を貸してくれよ。
パルンガの敵を討たせてくれよ。
そうだ。
そうして、俺は再びメベヘのいるこの誇闘会の舞台に戻って来たんだ。
「小僧!?何処へ消えた?」
メベヘのひと振りは、やっぱり片手だけで振ったのものとは明らかに違う。
力強くて、鋭い振りだ。
いや、メベヘだけの力じゃない。
あの不気味な白い手が、メベヘの力を増大させているんだ。
「小僧、いつの間に…!?」
俺は誇闘会の四隅にある、大きな竜の杭の真上にいる。
この異常な速さは何だ?
俺はどうやってここまで来たんだ…。
「逃げ足の速度を増して、お前は何を狙う…?儂の命か?」
「カカカッ!お前が死ぬまでの時間稼ぎ、そんなもの捨ててしまえ。塵みたいに価値のない僅かな時間を生き延びたところで、それが何になる?せっかくの戦いだ、血を浴びせ合うくらいの気持ちで来い、小僧!」
俺は…お前が許せない。
やってやるよ。
メベヘ。
「儂から行くのが良いか?ならそこで待っていろ!こ…殺してやる、ぞ?小僧!!」
あの胸にある魔闘石がそうさせるんだろう。やっぱり、あの白い腕が生えてから、メベヘは少しおかしい。
元々、メベヘは狂っていたけど、あの青い石の中に見える白い顔の奴の力が加わってくると、どういう行動に出るのか、予測が難しい。
構わないさ…。
お前と、その白い顔の奴も、同時に倒してやる。
タタッ!
「カカカッ!その竜の杭が小僧、お前の墓標だ!」
メベヘが飛びかかってきた!?
この跳躍力は一体?
こいつにこんな動きなんか…!?
「何っ!?」
ズバッ!
「ギャアアッ!」
「メベヘの野郎、浮浪殲滅部隊を斬ったぞ!?」
「もうめちゃくちゃだ!このメベヘは、オーロフ族の敵だ。オーロフ族を斬り殺したぞ!?」
「壇上でも古球磨族とやり合っている。こいつらはみんな、敵だ!」
周りの奴らは混乱して、どうしていいかわからないんだろうな。
グラッチェリとゲルが、ハムカンデと何だかでかい奴と戦っている。
野心が剥き出しになったな。
この街での仲良しごっこもここまでって事だな?
「お前がかわしたから、生け贄が1人出たぞ…?
「小僧、お前は何者だ?」
俺はメベヘの突進をかわした。
問題はそのかわし方だ。
俺はとっさに口に大剣をくわえ、両手を一瞬、両足と同じ位置に置き、体をバネの様にして高く弧を描いて、メベヘの反対側に飛び降りた。
俺の中にいる、この今までと違う力は何だ…?
「逃げられん様に、足を奪ってやる。そして、お前の恐怖に引き攣る顔を眺めながら、じわりじわりと殺してやるが良いな…」
「お前は、何がしてえんだ?」
「カカカッ!この世の住人の死に様を眺めるのが好きで堪らんのだ。今はお前の死への道筋を、儂が描いてやる。楽しみにしていろ」
「お前に描いてもらわなくてもな、俺のは決まってんだよ…」
俺はしもべに殺された。
だから、今の俺はまだ死んでるに等しい。
自分の世界に戻った時に、初めて俺は生き返るんだ。
メベヘ、お前もまた、死んでいる。
だから、自分と同じ死というものに執着するのさ。
お前は何をしても生き返りはしない。
俺は、お前とは違う!
「面倒な小僧だが、こいつを使わせるに足る男だよ、お前は」
目つきが変わった?奥の手を出すつもりだな。
目を凝らして警戒しろ!
「狂乱一汽…」
「ガルルルルッ!」
「そうやって構えたが、さて、それが意味を成すのか楽しみだな?」
「死ねぇ…小僧!」
ザッ!
「恣意一蓮斬!」
「!?」
メベヘの目と体の動きが、バラバラだ。
そして、その刀の幾重の刺突を狙う動きもまた、体と意思が一致していない…!?
「ガルルルルァアアッ!!」
どう動くのが正解だ!?
わからない…!
でも、このままだとやられる!
だから、直感で…動いた。
ダダダッ!
ザシュッ!ザシュッ!
「ぐあッ!?」
ガァアウッ!
ザザザ…ッ!
「ふぅむ。気でも狂ったか、小僧。儂の首の皮一枚、噛みちぎっていったな。野蛮な戦い方をする。まるで、獣だな…」
ブシュウゥ…!
「く、あ…あ!」
「儂の刺突をまともに食らったのだ、お前はようやく、死に向かう。時の砂は落ち始めたのだよ」
はあっ…。
はあっ…。
まだ…。
死ねねえよ。
そうだよな?
俺に力を宿してくれた東角猫族。
そして…。
その東角猫族と仲の良かった…ゼドケフラー。
今、わかったよ。
あの時、東角猫族の記憶の景色の中で、波紋が広がったあれは。
ゼドケフラー、お前の涙だ。
仲の良かった東角猫族がやられるその景色を感じて、悲しくて泣いていたんだな。
やっぱり、アンタらは仲良しじゃねえか。
お互いに心が通ってやがる。
今、俺の中にアンタら2人の力を感じる。
もう、ゼドケフラーに狂った怒りの感情は残っていない。
呪いの血は、浄化された。
2人が力を貸してくれてんのに、ここで死んだらアンタらに笑われちまうよな。
俺にだって、意地はある。
ここは、負けられ…ねえ。
「ほう?まだ、儂と殺し合えるというのか?」
「へっ…!」
「やられるのは、お前だけで…十分だろ!」
この波紋は、何だ?
アンタの涙が、この景色に落ちて、こんな現象を見せているのか?
後悔なのか?
それとも…。
ゼドケフラーに真実を見極めて欲しかったのに、そうはならなかったから、悲しんでいるのか?
俺は…。
俺の知っているゼドケフラーは、イヤな奴じゃなかった。
きっと。
アンタのよく知っているゼドケフラーも、きっと悪い奴じゃないって、わかっているよな?
俺をこんな戦いに巻き込みやがった奴らは許せねえ。
あのハムカンデは、俺とパルンガとの戦いを仕組みやがった。
パルンガに幻覚で暴走させやがって。
俺は、メベヘをやっつけて。
ハムカンデまで行き着かないといけないんだ。
頼む…。
力を貸してくれよ。
パルンガの敵を討たせてくれよ。
そうだ。
そうして、俺は再びメベヘのいるこの誇闘会の舞台に戻って来たんだ。
「小僧!?何処へ消えた?」
メベヘのひと振りは、やっぱり片手だけで振ったのものとは明らかに違う。
力強くて、鋭い振りだ。
いや、メベヘだけの力じゃない。
あの不気味な白い手が、メベヘの力を増大させているんだ。
「小僧、いつの間に…!?」
俺は誇闘会の四隅にある、大きな竜の杭の真上にいる。
この異常な速さは何だ?
俺はどうやってここまで来たんだ…。
「逃げ足の速度を増して、お前は何を狙う…?儂の命か?」
「カカカッ!お前が死ぬまでの時間稼ぎ、そんなもの捨ててしまえ。塵みたいに価値のない僅かな時間を生き延びたところで、それが何になる?せっかくの戦いだ、血を浴びせ合うくらいの気持ちで来い、小僧!」
俺は…お前が許せない。
やってやるよ。
メベヘ。
「儂から行くのが良いか?ならそこで待っていろ!こ…殺してやる、ぞ?小僧!!」
あの胸にある魔闘石がそうさせるんだろう。やっぱり、あの白い腕が生えてから、メベヘは少しおかしい。
元々、メベヘは狂っていたけど、あの青い石の中に見える白い顔の奴の力が加わってくると、どういう行動に出るのか、予測が難しい。
構わないさ…。
お前と、その白い顔の奴も、同時に倒してやる。
タタッ!
「カカカッ!その竜の杭が小僧、お前の墓標だ!」
メベヘが飛びかかってきた!?
この跳躍力は一体?
こいつにこんな動きなんか…!?
「何っ!?」
ズバッ!
「ギャアアッ!」
「メベヘの野郎、浮浪殲滅部隊を斬ったぞ!?」
「もうめちゃくちゃだ!このメベヘは、オーロフ族の敵だ。オーロフ族を斬り殺したぞ!?」
「壇上でも古球磨族とやり合っている。こいつらはみんな、敵だ!」
周りの奴らは混乱して、どうしていいかわからないんだろうな。
グラッチェリとゲルが、ハムカンデと何だかでかい奴と戦っている。
野心が剥き出しになったな。
この街での仲良しごっこもここまでって事だな?
「お前がかわしたから、生け贄が1人出たぞ…?
「小僧、お前は何者だ?」
俺はメベヘの突進をかわした。
問題はそのかわし方だ。
俺はとっさに口に大剣をくわえ、両手を一瞬、両足と同じ位置に置き、体をバネの様にして高く弧を描いて、メベヘの反対側に飛び降りた。
俺の中にいる、この今までと違う力は何だ…?
「逃げられん様に、足を奪ってやる。そして、お前の恐怖に引き攣る顔を眺めながら、じわりじわりと殺してやるが良いな…」
「お前は、何がしてえんだ?」
「カカカッ!この世の住人の死に様を眺めるのが好きで堪らんのだ。今はお前の死への道筋を、儂が描いてやる。楽しみにしていろ」
「お前に描いてもらわなくてもな、俺のは決まってんだよ…」
俺はしもべに殺された。
だから、今の俺はまだ死んでるに等しい。
自分の世界に戻った時に、初めて俺は生き返るんだ。
メベヘ、お前もまた、死んでいる。
だから、自分と同じ死というものに執着するのさ。
お前は何をしても生き返りはしない。
俺は、お前とは違う!
「面倒な小僧だが、こいつを使わせるに足る男だよ、お前は」
目つきが変わった?奥の手を出すつもりだな。
目を凝らして警戒しろ!
「狂乱一汽…」
「ガルルルルッ!」
「そうやって構えたが、さて、それが意味を成すのか楽しみだな?」
「死ねぇ…小僧!」
ザッ!
「恣意一蓮斬!」
「!?」
メベヘの目と体の動きが、バラバラだ。
そして、その刀の幾重の刺突を狙う動きもまた、体と意思が一致していない…!?
「ガルルルルァアアッ!!」
どう動くのが正解だ!?
わからない…!
でも、このままだとやられる!
だから、直感で…動いた。
ダダダッ!
ザシュッ!ザシュッ!
「ぐあッ!?」
ガァアウッ!
ザザザ…ッ!
「ふぅむ。気でも狂ったか、小僧。儂の首の皮一枚、噛みちぎっていったな。野蛮な戦い方をする。まるで、獣だな…」
ブシュウゥ…!
「く、あ…あ!」
「儂の刺突をまともに食らったのだ、お前はようやく、死に向かう。時の砂は落ち始めたのだよ」
はあっ…。
はあっ…。
まだ…。
死ねねえよ。
そうだよな?
俺に力を宿してくれた東角猫族。
そして…。
その東角猫族と仲の良かった…ゼドケフラー。
今、わかったよ。
あの時、東角猫族の記憶の景色の中で、波紋が広がったあれは。
ゼドケフラー、お前の涙だ。
仲の良かった東角猫族がやられるその景色を感じて、悲しくて泣いていたんだな。
やっぱり、アンタらは仲良しじゃねえか。
お互いに心が通ってやがる。
今、俺の中にアンタら2人の力を感じる。
もう、ゼドケフラーに狂った怒りの感情は残っていない。
呪いの血は、浄化された。
2人が力を貸してくれてんのに、ここで死んだらアンタらに笑われちまうよな。
俺にだって、意地はある。
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