とてもおいしいオレンジジュースから紡がれた転生冒険!そして婚約破棄はあるのか(仮)

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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その316

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「儂が誰か、その口でもう一度、言ってみるか?」



「頭が高いと、言うまでもない…。すでにお前は、儂よりも頭が低い。だがな、身の程をわきまえぬ口を利く小僧には、もうちぃっとだけ、頭を下げてもらわねばな」



カチャッ…。



「胴体と頭を切り離し、地面に置くのなら。ふぅむ、そうだな…。頭が十分に低い。それなら、許してやらんでもない」



メベヘは、一度刀を鞘に納めた。

そして、片手を鞘に、もう片方の手を柄に置いて、腰を屈め、抜刀の構えをする。

お前の大好きな、殺人…。

周りがまた騒がしくなった。

俺がメベヘに刀で刺されたから、この街が古球磨ごくま族に乗っ取られるって思ったのか、オーロフ族が慌ててこの場から逃げていく。

東角猫トーニャ族は、逃げるのも残るのも判断がつかず、ただこの誇闘会ことうかいの舞台近くから後退りしている様に感じる。

正解は、ここから逃げる事だ。

古球磨族がハムカンデを倒そうが、やられようが、もうこの街のシステムは壊れたんだ。

あいつらが手を組んでいたからこそ、この街は成り立っていたんだろう?

それが崩れたら、もう今まで通りにはいかないんじゃないのか?

ついでに、もし可能なら、その胸につけている魔闘石ロワも外しちまえよ…。

人格が乗っ取られてちまうぞ。



「血の気が顔にしっかりと表れているな?だがな、すぐに蒼白とした顔色に変えてやるから、安心しろよ?」



「グルルルルルッ…!」



そう、俺の覚悟っていうのは、変わらないんだ。

この世界の全てが汚らわしいって思えるのなら、それなら、そこにいて、暮らしていた人達の力なんて、借りるべきじゃない。



ザザッ…。



「そのまま、首を斬り落としてやる。それが、儂のお前へのせめてもの情けでもあるのだ」



みくびるなよ、メベヘ。俺は片膝をついて、立ち上がってすらいない。だけど、俺の右手には、大剣が握られている。

ちゃんと、剣を構えているんだよ。

曲げた膝を起こしながら、腰を振れば、お前にこの大剣の刃が向かう。

東角猫族の治癒魔法の 回療クーリョは、思ったより回復が早い。

もちろん、傷口が塞ぐほどじゃないけど、何とか戦えそうな状態には戻ってきた。

ただ、左目の視界が落ちてきたのは、少し問題だけどな。

この左目は、小鈴ショウレイの全力パンチをまともに受けて、見えなくなったのを、何かの術で一時的に見える様にしていただけだ。

回療で俺の体の回復に魔力とやらを使っているから、目の方にあまり力がいかないんだろう。

この回療で左目も治してくれれば良かったけど、一度失った視力は戻らないのかも知れない。



「このメベヘに歯向かった事を後悔しながら、あの世に旅立てぃ!小僧!」



カチャッ!



「!?」



メベヘのやつ、攻撃してくるぞっ!?



「かぁああッ!」



シャキィィンッ!



メベヘの抜刀術は、多分、最速とも思えるものだったに違いない。

ど素人の俺でも、無駄のない動きだと思えた。

体と刀の動きが連動して、俺の首にその刃がむかう。

ただ、その軌道が途中から変わり、俺の首から反れた。



ガキィィンッ!



俺は大剣を振らず、それをメベヘに投げつけたからだ。

その大剣を弾き落とそうと、メベヘが動きを変えたんだ。

俺はその隙に地面を蹴り、飛んで…。



ズザザザッ…!



メベヘの背後を取った。



「ガルルルルッ!!」



俺の今の武器は、ゼドケフラーの様に…この爪での攻撃だ!!



メベヘはまだ俺の方に振り向けていない。今なら、メベヘに攻撃ができる。

お前こそ、今さらクラファミースを殺して、俺に恨みを買った事を後悔しても、遅いんだよ!?



「ガルルルルアッ!!」



くらえ、メベヘ!!



「!?」



ドガァッ!



「うぐっ…!」



何だ?

何か重い攻撃…?

背中当たりから、食らった。

な…何が。



ズドオオオンッ…!



壇上から、首なしの大きな体の奴が落ちてきた…!?

俺の背中から攻撃したのは…。

この体についていたはずの、頭。



壇上にいたグラッチェリが、この大きな体の奴の首をはねて、壇上から落としたんだ。



「しまった…っ!?」



バランスを崩して倒れちまった!早く体を起こさないと!



「小僧、惜しかったな。油断大敵と言うものだ。お前の命は残り数秒足らずだが、覚えておけ…!」



くっ!?



「こ…のっ!」



「カカカッ!さらばだ、小僧!!」



ビュンッ!!




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