とてもおいしいオレンジジュースから紡がれた転生冒険!そして婚約破棄はあるのか(仮)

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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その366

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相手は動いていないんだ、近づこうとすればするほど距離が狭まるのが普通だろう!

この場所の空間が歪んで、俺達とハムカンデの距離が縮まらず、大きく空いたまま。

ハムカンデの小馬鹿にした様な笑い声が近くから聞こえる。

きっと、実際にお前は近くにいるんだ。

お前が何かをしてるんだろ?

これが幻覚なら、どうやれば打ち破れるんだ?



「我が友よ、これは幻覚とは言い切れない様だ。ハムカンデとの距離感は狂ってはいるが、それ以外は現実」



「現実なら、どうしてハムカンデにたどり着がないんだ!?」



「気をつけろ、我が友よ。あの巨大な蛇はまだ俺達を追っている!」



黒い3匹の大蛇…。

魔力をオーロフ族に吸われ続けているせいか、最初に見た時より体の大きさが少し縮んでいる様に見える。

ハムカンデにたどり着かないのは、もしかして、ずっと俺達にまとわりついて離れない、この蛇のせいか?

こいつが、空間を歪めているのかも知れない。

だけど、こいつらは俺達にしか見えていない…。

存在していないのなら、倒す事もできないだろう。

どうすればいいのか、もう訳がわからない。



「シャーーーーーーッ!」



ハムカンデとの距離は遠くなっていくばかりだ。

ハムカンデが呼び出したこの黒い大蛇が俺達を襲うだけじゃなく、そのうち、魔闘石ロワに十分に魔力が溜まったオーロフ族達までもが俺達を襲うぞ。

そう悠長な事ばかりやってられない。

今は、何を優先させるべきか。

考えるんだ。



「パルンガ、あの鬱陶しい大蛇は、俺達にしか見えていないだけで、現実にいるんだよな?」



「ああ、その様だな」



「こいつがいる限り、俺達はハムカンデの元へ行けないのかも知れないな」



「…その可能性も否定は出来ないな」



周りの奴らは見えてない大蛇相手に戦ったら、何やってるんだろうこいつらみたいな目で見られるんだろうな。

いや、そんな余裕はないよな。

魔闘石にあの大蛇の魔力が流れ続けて、オーロフ族は正気が失われ始めている。

そして、体が2倍に膨れ上がって歪な形をしている奴も目につく。

あんな姿は、違和感しかない。

もうオーロフ族じゃなくなるんじゃないか?

メベヘみたいに魔族になっちまうぞ。

ハムカンデ、お前はそれでいいんだな?

この街のオーロフ族が全滅する事になっても、自分の身が守る事ができれば、それでいいなんて。

同じ種族がいなくなっても、お前は淋しくないのか?



「シャーーーーーーッ!」



「うぉお…っと!」



大蛇の動きはゆったりした動きから稲妻みたいにいきなり飛びかかるから、余裕持ってかわす事なんてできねえ。

でも食らわねえよ。例え3匹いてもな。

東角猫トーニャ族と同化した今の身体能力は、蛇をも超えるって事だ。

パルンガもまた、ゼドケフラーの幼獣から成獣となって、何十倍にも身体能力が上がっている。

あいつの方が、俺よりも少し余裕がありそうだけどな。



「…隠者怏怏正気滅戮」



「!?」



ハムカンデの野郎、また彫魔法を唱えているのか!?

今度は何をしてこようとしてんだ。

…ん?



「おい、パルンガ。あの蛇…」



「大蛇が何かに呼応している。この感じは、魔力を増強しているかも知れないぞ」



魔力を増強させてる?

冗談だろ!?

大蛇がさらに強くなっていく?

それだけじゃない、こいつらから増強した分の魔力がオーロフ族達にも多く流れるんじゃないのか?

悪循環にも程がある。

どうすればいい…。

どうすれば、倒せる?










目の前の景色が、変わっていく。

また、俺の意識が何処かの記憶の景色に飛ばされる。

過去の記憶に飛ばされたりして、行ったり来たりと、本当に意味がわからなくなる。

今度は、俺を何処につれていこうっていうんだよ。

今、俺は少しの余裕もない状態なのに。



ああ…。



迷惑だ。



















曖昧な視界がはっきりした時に見えたのは、緑の葉が生い茂る木々に囲まれた場所。

葉が風で揺らされて擦れ合い、静かな歓声みたいに聞こえる。

それ以外に音はしない。

落ち着く場所。

俺は風になって、空に投げ出され、漂っている。

ここは何処なんだろうな。

ここには誰もいないみたいだ。

いや、全く微動だにしないけど、すぐ近くの場所に2人が一点の方向を見つめて立ち尽くしている。

頭の上に耳をピンと立て、鎧と着物を組み合わせた様な物を着ている長い銀髪の男。

東角猫族だ。

そして、その横に背の高く上半身に服を身につけていない筋肉質の白い獣…の様な人?

ああ、ゼドケフラーの成獣だな。

この雰囲気、もうわかっている。

クェタルドとエズアだ。

この2人の視線の先は…。

地面にSの字を描いて睨みつけている、人を丸呑みできそうなほどの大きさの紫色の蛇だ。

俺達が対峙していた大蛇よりもひと回り小さい気もするけど、感じる圧力はもしかしたら、2人が対峙している大蛇の方が上なのかも知れない。



「ウルビエド魔種の死蛇デネクだな」



「命を落とした者の体から検出された毒種は真実を語っていた様だ…」



「ここで仕留めねば、また犠牲が増える。エズア、やるしかない」



死蛇だって?

手強そうな大蛇を、クェタルドとエズアは相手をした事があるんだな。

この2人なら、きっと…。



「シャーーーーーーッ!!」



ブゥワンッ!



死蛇が一気に飛びかかってきたぞ!?

それに対して、クェタルドは地面を蹴って土煙を上げた瞬間、姿を消した!?

何だ、何処に行ったんだ?



ザグクッ…!



突然、蛇の体の上に現れたクェタルドが、手にある槍を思いっきり下に突き立てた。

だけど、大して槍が入っていかない?



「オオオッ!」



シャキッ!



シャキィンッ!



クェタルドに続いてエズアが死蛇に突進、手から爪を大きく伸ばして、素早く左右交互後に腕を振って、爪攻撃をしたぞ!



「シャーーーーーーッ!」



大蛇は全く怯む様子はない。利いていないのか?

確かに硬そうだ。

この星の大蛇は皮膚が硬いのか?



「白妖狐仙術・炎の舞!」



ボゥオオオァアアッ!!



大蛇のいる場所の下から突然、炎が燃え盛って、螺旋状に舞い上がっていく。



「シャーーーーーーッ!」



死蛇は円を描くようにして素早く身を翻して2、3回転させ、その炎を消し去った!?

この死蛇は強い人間を相手にしての戦いに慣れているんじゃないのか!?



「外側からの攻撃の耐性は、相当高い様だな…」



「だがエズアよ、俺達相手にして敵はいないぞ」



「おおっ!」



「!?」



エズアの姿が変化していく!?

ポキポキと音を鳴らし、関節を組み替えて、人間と同じ姿から、虎やライオンみたいに四つ脚の大きな獣に変わったぞ。

クェタルドが馬の様に四つ脚のエズアの背に跨り、死蛇に槍を構えて突進していく。



ダダッ!ダダッ!ダダッ!ダダッ!



ダダッ!ダダッ!



ダダッ…!



ダタタ……タ…タ…ッ!!



速い!?

もはや、獣の駆け方とは思えないくらい高速になっている。

この勢いがついた状態での攻撃なら、きっと。



「食らえっ!桜雅一点閃光おうがいってんせんこう!!」



「シャーーーーーーッ!」



ビュゥゥゥゥウウンッッ!!



エズアの駆け足でついた勢いのまま、そのエズアの背に乗るクェタルドが魔力を使って超高速の槍を放ったぞ!?

その槍は、真っ直ぐに死蛇の喉元あたりに飛んでいく!



ビュン…ッ!!



「!?」



「シャーーーーーーッ!」



か、かわした??

あの超高速の槍を、かわしたのか?



ビュウウゥゥ…ンッ!



「まだ喜ぶのは早いぞ、死蛇よ。俺が放った槍の行く軌道の先を見届けねば、お前はその身に降り掛かる真実に気づかず果てる事になる!」



かわされた槍は勢いを極力落とさない様にして軌道を少しずつ上に変えて、死蛇の遥か頭上にまで迂回してきたぞ。

槍が黄金色に輝いている…。

これは何を意味するのか?



「千の審判の槍がお前の存在を問うだろう!これが、真の秘技…」



身侵極刑槍雨オルガリッドベイカー!!」
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