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序章 異世界への追跡
希望の光
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メデナリンジェは、アナザイドの扉の中を覗く。
それは、離れた場所から見たものとは違い、暗がりの嵐の先に、異世界が広がって見えた。
森林…か。
何年記憶を遡れば、思い出すのだろうか。
懐かしいわ。
ガーディアンワールドより、平和な証拠…
足元に落ちていた金色のスーツケースを、メデナリンジェは、手に取った。
一応、持っていった方がいいのかしら。
わからないけど。
メデナリンジェの離れた後方に、激しい爆発音が響き渡り、光と風が辺りを取り巻く。それは、彼女まで届いた。
イリュード…
さようなら。
メデナリンジェは、一瞬、悲しそうな表情を見せる。
彼女は、手を震わせるほど強く握り、意を決した表情に変え、アナザイドの扉の中へ、飛び込んだ。
扉の向こうは、澄み渡るほどの青空が広がっていて、扉側の背後に、森林が見える。
虫の鳴き声が静かに響いた。
地上から10メートル程度の高さにあったアナザイドの扉の向こう側、そこから飛び出たメデナリンジェは、少しバランスを崩したが、無理なく地面に降り立った。
「何て事なの…。そう遠くない所に、大きな魔力を持った人が、何人かいる。しかも、この感じは…まさか?」
メデナリンジェは、辺りの魔力に、大きなものがあると感じ取っていると、急激に膨れ上がる別の一つの魔力がある事に警戒を示す。
「…!!」
メデナリンジェは、目の前の光景に息を飲んだ。しかし、予想できなかったわけじゃない。
そこには、脅威があった。
彼女は、金色のスーツケースを落とし、手に魔法剣シールートを召喚し、構える。
むしろ、好都合。
「お待たせしたかしら?」
倒せる、きっと…
黒頭巾の男ザドシエリは、不敵な笑みを浮かべた。
「同志が来るまでの退屈凌ぎには、なれるだろう?」
そう言い、両手を広げ、無防備な自分にかかって来いと言うかの様に、ザドシエリはメデナリンジェを挑発する。
メデナリンジェは、凍りつく様な冷ややかな視線を向け、ふうっと息を吐いた。
「私達のガーディアンワールドは、貴方達の遊び場じゃないのよ。やり過ぎは万死に値するという事、貴方に教えてあげなければね。死ぬ準備ができたなら、返事をなさい。お姉さん、気が短いから、あまり待ってあげられないけど…」
メデナリンジェはそう言い、口角を上げ、笑って見せた。。
ザドシエリは、ハハハと笑い、
「実力のない、ただの強がりは、見ていて実に面白いものだな。笑わせてくれたお礼に…貴女に」
魔眼剣アークブロンダーを投げ槍の様に握り、
「死の薔薇を…」
メデナリンジェ目掛けて、一直線、投げ飛ばした。
剣の切っ先は、メデナリンジェへ狙いを定め、風を切り裂いて彼女の目の前まで一瞬で辿り着いた。
メデナリンジェはそれに素早く反応し、魔法剣シールートを胸元まで持ってきて、防御魔法を張った。
魔法剣シールートは砕け散り、メデナリンジェは、後方10メートル吹っ飛ばされた。
空に投げ出された魔眼剣アークブロンダーを、ザドシエリは掴み、不敵な笑みを浮かべる。
「絶命は防げたな…。素晴らしい。いいぞ…」
ザドシエリのその言葉に、メデナリンジェは、2、3回咳込み、
「褒めるのが、下手ね。まだ、終わってないのよ」
そう言った。
砕け散った剣の破片が、ザドシエリの喉元に向きを変え、次々と集まり重なって、大きな金属の手を形成していった。
「ぐッ!!?」
メデナリンジェ右手で首を絞める仕草をする。すると、それに連動して、ザドシエリの首を掴んでいた大きな金属の手が、捻り切るかの様に、強烈な力で首を絞め始めた。
「…馬鹿ね。魔人化させたザールをやったのは、私なのよ!…舐め過ぎだわ」
メデナリンジェは、そう言い、さらに金属の手の力を増強させていく。
「…!?」
持ってきていた金のスーツケースが破壊され、中身が見えている。その中にあるものに、メデナリンジェは目を見張った。
変形型戦闘服…?
これは…
ザドシエリは、金属の手を掴み、牙を剥き出しにして、力を加えていき、自分の首から引き剥がそうと試みる。
軋む手の骨に、メデナリンジェの口から悲痛の声が漏れる。
「く…あっ!」
「ハハハ…!メデナリンジェ、私は貴女が思っているほど、甘くはない…!」
ザドシエリの首から、金属の手が離れようとしている。
「…」
「青竜剛力術!!」
メデナリンジェの体から青い炎が吹き出し、ザドシエリの首から離れようとしていた金属の手が、再び、ザドシエリの首を掴み、締めつけていく。
しかし…
ザドシエリは、それを越える力を発揮し、
金属の手を砕いた。
金属の手と連動していたメデナリンジェの手もまた、同じ衝撃が伝わる。
右手の骨が砕かれ、あまりの激痛に彼女は我慢できず、叫んだ。
ザドシエリは、怒りを象徴するかの様に、赤く光る目を頭巾から垣間見せ、メデナリンジェ目掛け、突っ込んでいく。
ザドシエリの力強い突進からの肘打ちがメデナリンジェの胸を捉え、なす術もなく吹き飛ばされていく。
青竜剛力術は、消えた。
メデナリンジェの表情から、血色が失せていく。
「…終わりだな。メデナリンジェ。楽に逝かせてやろうか」
ザドシエリは、そう言い、魔眼剣を握り、メデナリンジェに近づいていく。
メデナリンジェは、血を吐き、地面に流しながら、唇を震わせ、笑って見せた。
「終わりは、貴方よ。待ち人来ず、ってね…。アンタの、相棒は。私の仲間が、やっつけたのよ。…バカね」
メデナリンジェは、膝を震わせながら、何とか立ち上がった。
「そして、貴方は…」
「…私が」
メデナリンジェは、手に魔法剣バイアーガーを召喚した。
「…そうか。だからと言って、どうだというんだ?何も変わらないよ。何もね」
ザドシエリは、魔眼剣を構え、メデナリンジェを睨む。
メデナリンジェも、ザドシエリの動きを窺い、魔法剣を構えた。
イリュード…
私を助けてくれたわね。
ありがとう。
でも、
それも、無駄にしてしまう…
魔力がもう底を尽くわ。
そんな弱音。
聞きたくは、ないでしょうね。
わかっているわ。
だから、やる…
「我が血を以って命ずる、遥か彼方より千戦に旅立ち…討ち滅ぼされし聖なる心…」
「血肉は滅し、姿は消え、深い眠りにつくが、真はそこにあらず…」
「今、我の血を食い、蘇りて、その姿を現せ…」
メデナリンジェの召喚魔法の詠唱に、ザドシエリの目の色が変わる。
なり振り構わず、魔眼剣を握り突進してきた。
メデナリンジェの詠唱していた召喚魔法は、己の身と引き替えに、魔人をも震え上がらせるものを呼び寄せる。
ザドシエリはそれに気づき、召喚魔法を完成させない様、飛び込んできていた。
そのザドシエリに、対抗する力は、今のメデナリンジェには、なかった。
上から重心を掛けて振り下ろされた魔眼剣の斬撃は、メデナリンジェの魔法剣を真っ二つにし、そして彼女へと。
魔眼剣の魔力に反応した戦闘服が、自動魔法盾を張り、致命傷は、辛うじて回避できたが、深い傷を重ねたメデナリンジェは、再び、血を吐き、片膝を地面につけ、首を垂れた。
「…フフ」
メデナリンジェは、笑った。
「笑うか。そう、最後の笑いなんだ、笑えばいい」
「金のスーツケース…明暗を、分けたわね」
「…!?」
「地竜爆烈!」
メデナリンジェの戦闘服腕部の盾型に呪文が流れ、魔法発動。
ザドシエリの足元から吹き出した土砂の圧力、しかし魔人の魔力を以ってして、途端に無力化されてしまった。
砂埃の中から、姿を現わすザドシエリ。
メデナリンジェの姿は、そこから消えていた。
血痕が、点々と続く地面に、ザドシエリは気づき、目を閉じた。
「他愛のない…。そして、愚かだな」
メデナリンジェは、手に変形型戦闘服を持ち、体を引き擦る様にしながらも、アスファルトに変わった道を歩き続けた。
すぐ近くの建物から、鐘の音が鳴り響く。
もう少し…
もう少しで。
出会えるわね。
メデナリンジェは、戦闘モードを維持する最低限の魔力をも失い、黒い魔法衣に姿が戻っていた。
ガードレールにもたれ掛かり、遠くから歩いてくる一人の存在に目をやっていた。
「…感じていた、大きな魔力は、あそこから、くる」
身長は、150cmあるかどうか。
ジョリスよりも小さいわ。
でも、身長は、あまり関係ないわね。
…
…
赤い鞄を背負っているわ。
武器でも入っているのかしら。
…
胸骨が折れているわ、痛い…
でも、あの人に話さなければ。
ガーディアンワールドの危機を。
この世界の…危機を。
…
随分、若そうね…
…
私に気づいたわ。
…良い子ね。
心配そうに、駆け寄って来てくれた。
二つ結びで、髪を分けて背中まで流している。
大きな目をパチパチと瞬きし、メデナリンジェの顔を眺めている。
メデナリンジェの口から流れている血を見ている。
「大丈夫ですかぁ?」
不思議そうな目をして、メデナリンジェに話しかけた少女。
メデナリンジェは、首を振った。
「大丈夫…。まだ、数分はイケるわよ。お名前は、何て言うのかしら?」
メデナリンジェの問いに、少女は、
「…明花、鈴木…明花です」
そう、答えた。
「…明花、もう長く…話すのが辛く、なった。今、私の右側から来る男、こいつは、貴女のこの、世界を…殺すわ」
「え…?あの人…?」
「貴女の中にある大きな魔力が、きっと…導いてくれる、は、ず…」
メデナリンジェは、明花に変形型戦闘服を差し出し、手に取る様に催促する。
明花は、躊躇った。
「…先生、呼んできて、あげます…」
「先生は、いいわ。ケンカするかも、知れない…し」
二人の会話に、男の声が混じる。
「道連れを探していたのか?…そうか、その子か?」
ザドシエリは、ニヤリと笑みを浮かべ、魔眼剣の切っ先を、明花に向けた。
明花は、呆然とザドシエリの魔眼剣の切っ先を眺め、魔人の顔を見た。
「やっぱり、何か違うわ…ね。この子」
メデナリンジェは、変形型戦闘服を明花に投げ、空に目を向けた。
明花の胸元に届いた変形型戦闘服は、彼女の魔力に反応し、戦闘服の胸元の黄金色宝石が、彼女の認証確認を始める。
「…認証、するわ…。きっと」
綺麗な空…
昔が懐かしい…
あの頃の様に、また…
「照合確認…魔力適合…」
「メデナリンジェ、お前が死ねば、もうこの子には、用がない」
ザドシエリは、魔眼剣の切っ先をメデナリンジェに向けた。
「ガーディアンワールド遺伝子確認致しマシタ、認証確認終了致しマス」
ザドシエリは、変形型戦闘服の音声に、口元に怒りを浮かべて驚き、魔眼剣を振りかざし、狙いをすぐ様、明花に変えた。
「Magic Operation」
光に包まれる明花に、魔眼剣の斬撃が、襲いかかる。
「…くっ、ガァァ!!」
ザドシエリの魔眼剣が、明花を包んだ魔法防御により、跳ね返される。
明花の身につけている衣服は全て、黄金色宝石に吸収され、全てが攻防に特化された魔法戦闘の衣服に姿を変える。
メデナリンジェは、空に目をやりながら、笑みを浮かべた。
「…同志よ…後は、お願…い」
そして、
目の色を失くし、カクリと首を垂れ、地面に崩れる様にして、倒れていった。
明花は、魔力を増大していき、覚醒状態に陥った。
その中での一撃が、魔人に放たれる。
「グォ…オオオ!!」
放たれた高密度の魔法エネルギー弾は、ザドシエリの体に絡みつく様に圧力をかけ、跳ね返す事ができない。
ザドシエリの体から軋む音が響いた。
「…この力は一体…!?」
序章 END
それは、離れた場所から見たものとは違い、暗がりの嵐の先に、異世界が広がって見えた。
森林…か。
何年記憶を遡れば、思い出すのだろうか。
懐かしいわ。
ガーディアンワールドより、平和な証拠…
足元に落ちていた金色のスーツケースを、メデナリンジェは、手に取った。
一応、持っていった方がいいのかしら。
わからないけど。
メデナリンジェの離れた後方に、激しい爆発音が響き渡り、光と風が辺りを取り巻く。それは、彼女まで届いた。
イリュード…
さようなら。
メデナリンジェは、一瞬、悲しそうな表情を見せる。
彼女は、手を震わせるほど強く握り、意を決した表情に変え、アナザイドの扉の中へ、飛び込んだ。
扉の向こうは、澄み渡るほどの青空が広がっていて、扉側の背後に、森林が見える。
虫の鳴き声が静かに響いた。
地上から10メートル程度の高さにあったアナザイドの扉の向こう側、そこから飛び出たメデナリンジェは、少しバランスを崩したが、無理なく地面に降り立った。
「何て事なの…。そう遠くない所に、大きな魔力を持った人が、何人かいる。しかも、この感じは…まさか?」
メデナリンジェは、辺りの魔力に、大きなものがあると感じ取っていると、急激に膨れ上がる別の一つの魔力がある事に警戒を示す。
「…!!」
メデナリンジェは、目の前の光景に息を飲んだ。しかし、予想できなかったわけじゃない。
そこには、脅威があった。
彼女は、金色のスーツケースを落とし、手に魔法剣シールートを召喚し、構える。
むしろ、好都合。
「お待たせしたかしら?」
倒せる、きっと…
黒頭巾の男ザドシエリは、不敵な笑みを浮かべた。
「同志が来るまでの退屈凌ぎには、なれるだろう?」
そう言い、両手を広げ、無防備な自分にかかって来いと言うかの様に、ザドシエリはメデナリンジェを挑発する。
メデナリンジェは、凍りつく様な冷ややかな視線を向け、ふうっと息を吐いた。
「私達のガーディアンワールドは、貴方達の遊び場じゃないのよ。やり過ぎは万死に値するという事、貴方に教えてあげなければね。死ぬ準備ができたなら、返事をなさい。お姉さん、気が短いから、あまり待ってあげられないけど…」
メデナリンジェはそう言い、口角を上げ、笑って見せた。。
ザドシエリは、ハハハと笑い、
「実力のない、ただの強がりは、見ていて実に面白いものだな。笑わせてくれたお礼に…貴女に」
魔眼剣アークブロンダーを投げ槍の様に握り、
「死の薔薇を…」
メデナリンジェ目掛けて、一直線、投げ飛ばした。
剣の切っ先は、メデナリンジェへ狙いを定め、風を切り裂いて彼女の目の前まで一瞬で辿り着いた。
メデナリンジェはそれに素早く反応し、魔法剣シールートを胸元まで持ってきて、防御魔法を張った。
魔法剣シールートは砕け散り、メデナリンジェは、後方10メートル吹っ飛ばされた。
空に投げ出された魔眼剣アークブロンダーを、ザドシエリは掴み、不敵な笑みを浮かべる。
「絶命は防げたな…。素晴らしい。いいぞ…」
ザドシエリのその言葉に、メデナリンジェは、2、3回咳込み、
「褒めるのが、下手ね。まだ、終わってないのよ」
そう言った。
砕け散った剣の破片が、ザドシエリの喉元に向きを変え、次々と集まり重なって、大きな金属の手を形成していった。
「ぐッ!!?」
メデナリンジェ右手で首を絞める仕草をする。すると、それに連動して、ザドシエリの首を掴んでいた大きな金属の手が、捻り切るかの様に、強烈な力で首を絞め始めた。
「…馬鹿ね。魔人化させたザールをやったのは、私なのよ!…舐め過ぎだわ」
メデナリンジェは、そう言い、さらに金属の手の力を増強させていく。
「…!?」
持ってきていた金のスーツケースが破壊され、中身が見えている。その中にあるものに、メデナリンジェは目を見張った。
変形型戦闘服…?
これは…
ザドシエリは、金属の手を掴み、牙を剥き出しにして、力を加えていき、自分の首から引き剥がそうと試みる。
軋む手の骨に、メデナリンジェの口から悲痛の声が漏れる。
「く…あっ!」
「ハハハ…!メデナリンジェ、私は貴女が思っているほど、甘くはない…!」
ザドシエリの首から、金属の手が離れようとしている。
「…」
「青竜剛力術!!」
メデナリンジェの体から青い炎が吹き出し、ザドシエリの首から離れようとしていた金属の手が、再び、ザドシエリの首を掴み、締めつけていく。
しかし…
ザドシエリは、それを越える力を発揮し、
金属の手を砕いた。
金属の手と連動していたメデナリンジェの手もまた、同じ衝撃が伝わる。
右手の骨が砕かれ、あまりの激痛に彼女は我慢できず、叫んだ。
ザドシエリは、怒りを象徴するかの様に、赤く光る目を頭巾から垣間見せ、メデナリンジェ目掛け、突っ込んでいく。
ザドシエリの力強い突進からの肘打ちがメデナリンジェの胸を捉え、なす術もなく吹き飛ばされていく。
青竜剛力術は、消えた。
メデナリンジェの表情から、血色が失せていく。
「…終わりだな。メデナリンジェ。楽に逝かせてやろうか」
ザドシエリは、そう言い、魔眼剣を握り、メデナリンジェに近づいていく。
メデナリンジェは、血を吐き、地面に流しながら、唇を震わせ、笑って見せた。
「終わりは、貴方よ。待ち人来ず、ってね…。アンタの、相棒は。私の仲間が、やっつけたのよ。…バカね」
メデナリンジェは、膝を震わせながら、何とか立ち上がった。
「そして、貴方は…」
「…私が」
メデナリンジェは、手に魔法剣バイアーガーを召喚した。
「…そうか。だからと言って、どうだというんだ?何も変わらないよ。何もね」
ザドシエリは、魔眼剣を構え、メデナリンジェを睨む。
メデナリンジェも、ザドシエリの動きを窺い、魔法剣を構えた。
イリュード…
私を助けてくれたわね。
ありがとう。
でも、
それも、無駄にしてしまう…
魔力がもう底を尽くわ。
そんな弱音。
聞きたくは、ないでしょうね。
わかっているわ。
だから、やる…
「我が血を以って命ずる、遥か彼方より千戦に旅立ち…討ち滅ぼされし聖なる心…」
「血肉は滅し、姿は消え、深い眠りにつくが、真はそこにあらず…」
「今、我の血を食い、蘇りて、その姿を現せ…」
メデナリンジェの召喚魔法の詠唱に、ザドシエリの目の色が変わる。
なり振り構わず、魔眼剣を握り突進してきた。
メデナリンジェの詠唱していた召喚魔法は、己の身と引き替えに、魔人をも震え上がらせるものを呼び寄せる。
ザドシエリはそれに気づき、召喚魔法を完成させない様、飛び込んできていた。
そのザドシエリに、対抗する力は、今のメデナリンジェには、なかった。
上から重心を掛けて振り下ろされた魔眼剣の斬撃は、メデナリンジェの魔法剣を真っ二つにし、そして彼女へと。
魔眼剣の魔力に反応した戦闘服が、自動魔法盾を張り、致命傷は、辛うじて回避できたが、深い傷を重ねたメデナリンジェは、再び、血を吐き、片膝を地面につけ、首を垂れた。
「…フフ」
メデナリンジェは、笑った。
「笑うか。そう、最後の笑いなんだ、笑えばいい」
「金のスーツケース…明暗を、分けたわね」
「…!?」
「地竜爆烈!」
メデナリンジェの戦闘服腕部の盾型に呪文が流れ、魔法発動。
ザドシエリの足元から吹き出した土砂の圧力、しかし魔人の魔力を以ってして、途端に無力化されてしまった。
砂埃の中から、姿を現わすザドシエリ。
メデナリンジェの姿は、そこから消えていた。
血痕が、点々と続く地面に、ザドシエリは気づき、目を閉じた。
「他愛のない…。そして、愚かだな」
メデナリンジェは、手に変形型戦闘服を持ち、体を引き擦る様にしながらも、アスファルトに変わった道を歩き続けた。
すぐ近くの建物から、鐘の音が鳴り響く。
もう少し…
もう少しで。
出会えるわね。
メデナリンジェは、戦闘モードを維持する最低限の魔力をも失い、黒い魔法衣に姿が戻っていた。
ガードレールにもたれ掛かり、遠くから歩いてくる一人の存在に目をやっていた。
「…感じていた、大きな魔力は、あそこから、くる」
身長は、150cmあるかどうか。
ジョリスよりも小さいわ。
でも、身長は、あまり関係ないわね。
…
…
赤い鞄を背負っているわ。
武器でも入っているのかしら。
…
胸骨が折れているわ、痛い…
でも、あの人に話さなければ。
ガーディアンワールドの危機を。
この世界の…危機を。
…
随分、若そうね…
…
私に気づいたわ。
…良い子ね。
心配そうに、駆け寄って来てくれた。
二つ結びで、髪を分けて背中まで流している。
大きな目をパチパチと瞬きし、メデナリンジェの顔を眺めている。
メデナリンジェの口から流れている血を見ている。
「大丈夫ですかぁ?」
不思議そうな目をして、メデナリンジェに話しかけた少女。
メデナリンジェは、首を振った。
「大丈夫…。まだ、数分はイケるわよ。お名前は、何て言うのかしら?」
メデナリンジェの問いに、少女は、
「…明花、鈴木…明花です」
そう、答えた。
「…明花、もう長く…話すのが辛く、なった。今、私の右側から来る男、こいつは、貴女のこの、世界を…殺すわ」
「え…?あの人…?」
「貴女の中にある大きな魔力が、きっと…導いてくれる、は、ず…」
メデナリンジェは、明花に変形型戦闘服を差し出し、手に取る様に催促する。
明花は、躊躇った。
「…先生、呼んできて、あげます…」
「先生は、いいわ。ケンカするかも、知れない…し」
二人の会話に、男の声が混じる。
「道連れを探していたのか?…そうか、その子か?」
ザドシエリは、ニヤリと笑みを浮かべ、魔眼剣の切っ先を、明花に向けた。
明花は、呆然とザドシエリの魔眼剣の切っ先を眺め、魔人の顔を見た。
「やっぱり、何か違うわ…ね。この子」
メデナリンジェは、変形型戦闘服を明花に投げ、空に目を向けた。
明花の胸元に届いた変形型戦闘服は、彼女の魔力に反応し、戦闘服の胸元の黄金色宝石が、彼女の認証確認を始める。
「…認証、するわ…。きっと」
綺麗な空…
昔が懐かしい…
あの頃の様に、また…
「照合確認…魔力適合…」
「メデナリンジェ、お前が死ねば、もうこの子には、用がない」
ザドシエリは、魔眼剣の切っ先をメデナリンジェに向けた。
「ガーディアンワールド遺伝子確認致しマシタ、認証確認終了致しマス」
ザドシエリは、変形型戦闘服の音声に、口元に怒りを浮かべて驚き、魔眼剣を振りかざし、狙いをすぐ様、明花に変えた。
「Magic Operation」
光に包まれる明花に、魔眼剣の斬撃が、襲いかかる。
「…くっ、ガァァ!!」
ザドシエリの魔眼剣が、明花を包んだ魔法防御により、跳ね返される。
明花の身につけている衣服は全て、黄金色宝石に吸収され、全てが攻防に特化された魔法戦闘の衣服に姿を変える。
メデナリンジェは、空に目をやりながら、笑みを浮かべた。
「…同志よ…後は、お願…い」
そして、
目の色を失くし、カクリと首を垂れ、地面に崩れる様にして、倒れていった。
明花は、魔力を増大していき、覚醒状態に陥った。
その中での一撃が、魔人に放たれる。
「グォ…オオオ!!」
放たれた高密度の魔法エネルギー弾は、ザドシエリの体に絡みつく様に圧力をかけ、跳ね返す事ができない。
ザドシエリの体から軋む音が響いた。
「…この力は一体…!?」
序章 END
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