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6桁の数字と幻影ビルの金塊
008 夜の公園でネタ合わせ
しおりを挟む「いやいや、待たせたな。なんせ暗いもんやから、すっかり手間取っちゃって……」
さっきまでTシャツ姿だったチャーシューが、ワイシャツに赤い蝶ネクタイ、黄色いジャケットを羽織って現われた。
「ずいぶん長いことゴソゴソやってたのは、そのお笑い芸人みたいな衣装に着替えていたのからなのね」
「それだけやないで」
チャーシューはLEDライトが追加されたビデオカメラを、美玲ちゃんに手渡した。
ライトのスイッチをつけると、眩しいほどの白い光が暗闇を切り裂くようにまっすぐ伸びる。
「最初からこれを懐中電灯がわりに使えばよかったのに……」
「最大光量で1時間しかバッテリーが持たへんねん。カメラを止めてるときは、こっちのランタンで探索や」
チャーシューが手にしているランタンは比較的やわらかな灯りだが、周囲をまんべんなく照らしている。
「ほな、そろそろ始めよか。まず外観全体を写してから、ズームしてわいのバストアップ。あとは成り行きで……」
咳払いを何度かしながら、チャーシューがおもむろにビルの入り口の前に立つ。
数歩離れて、美玲ちゃんがビデオカメラを構えた。
その様子を、ぼくは少し離れて見ている。
「じゃあ撮るよぉ。3、2、1、スタート!」
美玲ちゃんのカウントダウンで、撮影が始まった。
外観をゆっくり映してから、チャーシューにピントを合わせてズームアップしたとたん……。
「はい、始まりました! チャーシューの怪奇チャンネル! ということでですね。今回はなんと……」
「ちょ、ちょっと待って!」
美玲ちゃんがカメラを下げて、急にストップをかけた。
「これオカルト系動画なのよね? なんかテンション高すぎない?」
「小さなお子さんも見てるんや。面白く見てもらいたいやん」
「いやそうだけど……」
「ほなテイク2行くで!」
納得いかない様子で、美玲ちゃんがカメラを構えなおす。
「はぁい。じゃあ3、2、1……」
「……はいっ! というわけで、今回リポートするのは、なんとあの旧日本軍の隠し財産が……」
「ごめん! やっぱ、ちょっと待って! ……あんた何で標準語なの?」
「何度も言わせんなや、小さなお子さんも見てるんや! ちゃんとした日本語で伝えなあかんやろがい!」
「いや、関西弁もちゃんとした日本語だから!」
このふたりは夜の公園で漫才の練習でもしているんだろうか?
丁々発止のやり取りは、長く連れ添ったお笑いコンビのようにも見える。
そういえば以前ママさんから、ふたりが仲良くならないよう監視しなさいって命令を受けたことがある。
そのときは、一体何を言っているのだろうと思ったけど……。
「ほんっとごめん。わがまま言って悪いけど、今回だけは静かにやってみない? もしかしたらその方が再生数が伸びるかも」
「んなわけないがな。……せやけど、黒崎はんには手伝うてもらっとるし、あとで熱々のナレーションをつけるとして今回はリポートなしで撮影しよか。しゃーなしやで」
ふたりの漫才をアップロードした方が、よっぽど再生数が伸びるだろうに……。
チャーシューが渋々、声を落として探索を始めた。
「ほんなら、わいの背後からカメラ回してついてきてや」
美玲ちゃんがカメラを再び構えたので、ぼくはその頭に飛び乗った。
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