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第17話 女王の想い
01
しおりを挟む議会が終わると、わたしはトモミとアユムがいる部屋に案内された。
部屋に入るなり、トモミは心配そうに駆けよってきて、
「大丈夫? ひどいことされなかった?」と、わたしを気づかった。
いっぽうアユムは窓に張りつき、ときおり通り過ぎる小型宇宙船に歓声を上げていた。
「ひとまず、地球人が攻撃されることはなくなったよ」
「よかった……本当に……」
トモミが涙ぐみながら微笑む。
そのとき、わたしの背後にあるドアが音をたてて開いた。こわばるトモミの表情を見て、わたしはあわててふり返った。
「勝ったと思っているのか?」
そこに立っていたのは、ジランダ議長だった。
「勝ったのはわたしたちだ。正直、地球人への攻撃を議会が認めるのは難しいと思っていた。だが女王陛下が取りつけてくださったのだ。陛下はかしこいお方だよ。きさまの肩を持つようなふりをしながら、しっかり十年後の攻撃を、銀河連合議会で確約したのだからな」
「そんなことにはならないよ。地球人も進化している」
わたしの反論に、ジランダ議長はくつくつと笑った。
「たった十年で、あの野蛮な生き物が進化などするものか。おい小娘。おまえは、いずれこの男に殺されるのだ。楽しみにしておけ」
するとトモミは、わたしの背中にかくれながら、ジランダ議長を睨みつけた。
「ふん。いかにも野蛮で、排他的な生物の目つきだ」
「そう言うあなたは、ご自分の姿が見えていないようだ」
わたしの言葉に、ジランダ議長は赤黒い顔をさらに赤く染めて、わたしの胸ぐらにつかみかかろうとした。
そのとき――。
「立ち去れ」
ジランダ議長の背後から、威厳をこめた女性の声がした。
親衛隊長だ。
ジランダ議長は、ふんっと鼻を鳴らして、どすどすと部屋から出ていった。
「きさまらもだ。地球人」
トモミとアユムも、あとから入ってきた親衛隊に連れて行かれ、部屋には、わたしと親衛隊長だけが残った。
「女王陛下が、お忍びで来られる」
親衛隊長がドアの横にぴたりと立ったまま、ぴくりとも動かずに言った。その目だけが、鋭くわたしを睨みつけている。
居心地の悪い時間がしばらく続いたあと、親衛隊長が再び口を開いた。
「さきほどの銀河連合の歴史についてのやり取りは、議事録から消去される」
「だろうね」
そっけなく、わたしはこたえた。
「女王陛下が銀河連合議会でお姿を現されたことも、下賎な女の名を口にしたことについてもだ」
トモミのことだろう。わたしはつい親衛隊長を睨んでしまったが、それ以上に彼女はわたしを睨みつけていた。
「きさま、女王陛下の何者なのだ。陛下はキリ星の攻撃船が、ご自身に迫って来たときも、きさまの身を案じて動こうとはしなかった!」
それを聞いて、わたしは呆然としてしまった。
「こたえろ! きさま、陛下の何なのだ!」
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