探偵でSPとか、聞いてない

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【1巻】1章 聞いてないよぉ!!!!

p5.果たし状は突然に

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 二時限目。現代文。  
教室の空気は、いつもより妙に浮ついている。  
それに反し心拍数が上がる俺。背中、首筋、額から噴き出る鳥肌。しまいには汗が出てきて、シャツが肌に張りつく。気持ち悪い。原因は明白だ。教室の後ろ——そこに、いる人物。

 桜川詩織。俺の義姉になる人。文学美女、ミステリー小説のヒロイン像を絵に描いた人だ。古本屋にいそうだ。そんな彼女が、今日から実習生としてこの教室にいる。教室の後ろで静かに立っているだけなのに、空気が重い。いや、違う。冷たいっていうんだ。

 俺は内心、叫ぶ。

(授業参観日ですか!?)

 聞いてないよ!  なんでここにいるの!?
教室の後ろに立つ詩織さんは、まるで俺の人生を観察しに来た監視者。 しかも、目が合った。

 その瞬間——

 満面の笑み。

 ……怖い。怖いって。怖すぎるよ。  
 笑ってるのに、なにあの顔。  
口角が完璧な角度で上がっている。目は細くなっている。だが、そこに温度がない。笑顔の仮面をかぶった冷笑の女神だよ。背筋が凍る。心臓が跳ねる。呼吸が浅くなる。

(え……なんで笑ってるの……? 俺、なんかした……?)

 詩織さんは、微動だにせず、笑顔のまま俺を見ている。

 震えた。
貧乏ゆすりでペンが落ちる。
現代文の教科書が、まるで辞世の句に見えた。

「ねぇ……」

 ちらりと横目で声をかけてくる舞は、ペンで肩を叩いてきた。

「……和希」

 声は、ほんの囁き。教師の声に紛れるように、そっと言葉を落とす。

「大丈夫?」

 俺は、ゆっくりと顔を向ける。目の焦点が合っていない。何かを考えているというより、何も考えられていないような、そんな顔。

「……なんか、顔色悪いよ」

 ようやく小さく息を吐いた。彼女の言葉が、少しだけ彼を現実に引き戻したようだった。

「……ああ、ごめん。ちょっと」
「お腹いたいの?」

 彼女は、冗談めかして言いながらも、目は真剣だった。

「……保健室いく? 分かるよ~その気持ち、私もつい先日」

 デリカシーないなこいつ。

「私語厳禁」

 詩織のプレッシャー。重圧が凄い。恐る恐る彼女を見ると、メモを渡された。何事で――。

ホウカゴ、ロジウラノ、コウエンデマツ。

ひっぃやぁぁぁぁ!
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