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最終択
殺人衝動の選択
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失敗作。長谷川先生は俺にそう断言してみせた。俺の背負っている≪悪魔の脳≫は幸か不幸か、完全に俺を支配できないでいるのだという。完全支配下に陥った人間は、今も同じ街の中に潜んでいる。
「まるで自由に操縦できるロボットだね」
この話を聞いて感想を漏らした茜であったが、あまりに気味の悪い話に声が上ずっていた。家族に情報を共有することが長谷川先生の絶対の意向であり、これが俺の助けとなる。しかし、このまま家族を巻き込み続けるのは如何なものかと俺は悩んでいた。
夏休みが明け、残暑も消えかかった秋のこと。
あの1件以来、憲司からの連絡はパタリと止まった。被害者である俺に気を遣っていたのだろうと思っていたが、内情は全然見当違いであったようだ。
自分の将来も考えながら過ごす必要があった俺は、あとわずかで単位が取れるところまで出席数を積み重ねていた。それを達成さえすれば、もう大学に来ることも殆どなくなり、知り合いと顔を合わせることもなくなる。
食堂には寄り付かない。あの頃の楽しい思い出に浸りたくないというのと同時に、憲司や優衣、あるいはムラッセと顔を合わせたくないからだ。
俺の顔を確認する度、他の学生に注目されているような気がする。あの事件以降、ネットで拡散された俺たちの写真。世間では緒方による理不尽な殺人事件とされており、むしろ、俺に向けられるのは同情の目であったと思う。
しかし、真犯人が俺という事実は覆ることなく、やはり俺の心奥底にある背徳感が同情の目として素直に受け入れられなかった。
他者の視線を掻い潜るように帰宅しようと思った矢先、授業終わりの俺を待ち伏せしていたムラッセが眼前に現れる。
「体の具合は大丈夫か?」
「そっちこそ、緒方があんなことになって……」
「緒方が死んで辛いのか、緒方が烏場を殺したことが哀しいのか。正直、未だに心の整理はついていない。あいつのことを分かってあげていたつもりだが、俺なんかじゃ計り知れない悩みを抱えていたんだな」
緒方のことを考えまいと、アルバイトを詰め込んで働いていると耳に届いていたが、以前よりも肉が削げ落ちて顔色が悪い。毅然として平常を見せてはいるが、心も体もボロボロといった印象を受ける。
「学校に足を運んだ理由は、教務課で手続きを済ませにくるためだ」
「手続き?」
「ああ、自主退学することにしたんだ。元々単位も不足していたし、緒方が死んでキリがいいかなって。というより、もう予定が立っているんだ。来週末にはカナダへ渡航して、向こうで語学学習に励む。そのままノマドワーカーを目指しながら世界中の旅をするというのが目標だ」
ムラッセは行動力のある男だ。彼が言うからには、それを実現させるのだろう。精神状態が不安定な中でも、次の1歩を歩みだしている彼を単純に凄いと感心する。
いつまでも悲しみの中にいても変化は起きない。ムラッセのように自分からアクションを無理にでも起こして気持ちを切り替えるしか、痛んだ心を早期快復させるのは難しいのかもしれない。
「そうか、寂しくなるな。送別会でも開こうか?」
「遠慮しておく。しみったれた会になりそうだしな」
「ははっ……、間違いない」
「それに」
一旦、ムラッセが言い淀む。だが、彼なりに決意を持って俺の前に立ったのだろう。彼は一呼吸を入れて言葉を続ける。
「お前は憲司と優衣に避けられているだろう?」
そんなド直球で言われると、さすがに胸が張り裂けそうに痛い。
「さ、避けられているってなんだよっ」
「違うのか?」
「……」
多分、違わない。憲司が俺に気を遣って連絡を寄越さないと思い込みたかっただけなのかもしれない。薄々と、彼に距離を置かれているような嫌な気はしていたのだ。
「優衣がお前のことを恐れている。詩奈の件も白馬の件も、お前が緒方を脅して仕向けたものだってな」
「お、おい。そ、そんなはずないだろ」
「優衣はお前に襲われていると言っている。俺としては両者の言い分も聞いて、どちらの話を信じるべきか判断する必要がある。けれど、憲司はすっかり優衣の言うことを信じているようだ」
こうなることを阻止したかった。優衣がいよいよ、あの話について明かしたのだった。俺の意志によるものでないにしても、彼女にとって俺は強姦しようとしていた獣に見えていたのだろう。
仕方がない。そう簡単に流せれば、俺の行動は大きく変わったと思う。
しかし、俺の心に瞬時として浮かび上がったのは、優衣と憲司を今すぐに消し去って秘密を隠す必要があると思ってしまったこと。優衣は詩奈にも打ち明けた経緯もあるので、どうにも口は軽いようだ。そんな人間は、次第に噂を広めることに快感を得るに違いないと俺は踏んでいる。
(消さなきゃ、消さなきゃ、消さなきゃ)
俺の罪は全て揉み消さなければいけない。
運が良いことに、最近の俺は悪いことをしても罰を受けていないではないか。≪悪魔の脳≫に深く関わっている人間から見えない援助を受けている可能性は十二分にある。それならば、今この時に利用しない手はない。
欲望に向かって決意が固まると、今度はウキウキとした胸躍る高揚感が強くなる。平常心でありながら、自分が凶悪な性格に変貌していることを自覚している。今まではその変化を恐れて否定し、倫理観を守り続けようと制御が利いていた。
だけど、もう止まれない。残念、止まる気がさらさら湧いてこなかった。
▽
頭が痛い。ガンガンと頭部を叩きつけるような痛み。
視界には幾つもの無数の選択肢が浮かんでいる。そのどれもが殺害方法を記した選択肢だ。あちこちに飛び回り揺れ動いたり、近づいては遠ざかったり。すべての選択肢がまるで浮遊するホコリのように鬱陶しくて仕方がない。
(殺し方は俺が決める! 邪魔すんなよ!)
脳が随分と浸食されて、自我を保つ時間が余り無いことに俺は気付き始めている。
目標地点に向かいながら、俺は小野塚と面会した日のことを思い出す。
――須藤 杏子が席を外し、後方で会話記録を取っている刑務官と3人になる。彼がどういう気持ちで今までの会話を聞いていたのか。笑いを堪えていたのかもしれないし、驚愕をしていたかもしれない。あるいは無機質なロボットのように淡々と書記に徹していたのかもしれない。
小野塚はそんな刑務官を無視して、俺に向けて鋭い眼差しを向けた。
「私の≪悪魔の脳≫と君の≪悪魔の脳≫とでは、違いがある」
「はい、そうですね」
「だが、それは決して進化なんかではない。ごくわずかな個人差でしかない」
「……つまりは?」
「時間もないし、簡潔に伝えよう。先の件で、私は≪悪魔の脳≫によって彼女の家族を殺したと言った。だが、それは嘘だ」
肌に粟が立つ。この男はなんてことを暴露しているんだ。今まで≪悪魔の脳≫を理由に犯罪を否定してきた人間ではなかったのか。それなのにどうして、刑務官が耳にしている場所で堂々と――。
「びっくりさせたか、無理もない。だが、事実だ。私は故意で殺人を犯したのだ」
「じゃあ、なにか? アンタが脳を操られていたってのは全て嘘だったのかよ」
「そうじゃない。確かに君と同じ爆弾を頭に抱えている。現に強盗という行為は≪悪魔の脳≫によって選択されたからな」
「どうして、人殺しなんかっ」
「そりゃ、君にももう分かるんじゃないか?」
ドクンッ! 強烈な脈打ち。
小野塚の発言は俺のことを見透かしているようだった。
「え、えっと……」
刑務官に声が届きにくいように、彼はボソリと発言する。
「殺人衝動が抑えられなくなっているんだろ?」
「こらっ! ボソボソと喋らないように!」
刑務官に注意された小野塚はペコペコと頭を下げて謝罪をする。
殺人衝動。まさにその自覚はある。恐らく友人たちと白馬に向かったあの日から。キッカケは詩奈を殺したことか? 邪魔者を消せた喜びが俺に中毒性を植え付けたとでも言うのか。
「気を付けろよ。罪を犯したくないのであれば、≪悪魔の脳≫の問題だけでなく、お前自身の心の問題と向き合う必要がある」
小野塚は自身の失敗を俺に活かしてほしそうに、最後は少し寂し気な瞳を向けてきたのだった。
「まるで自由に操縦できるロボットだね」
この話を聞いて感想を漏らした茜であったが、あまりに気味の悪い話に声が上ずっていた。家族に情報を共有することが長谷川先生の絶対の意向であり、これが俺の助けとなる。しかし、このまま家族を巻き込み続けるのは如何なものかと俺は悩んでいた。
夏休みが明け、残暑も消えかかった秋のこと。
あの1件以来、憲司からの連絡はパタリと止まった。被害者である俺に気を遣っていたのだろうと思っていたが、内情は全然見当違いであったようだ。
自分の将来も考えながら過ごす必要があった俺は、あとわずかで単位が取れるところまで出席数を積み重ねていた。それを達成さえすれば、もう大学に来ることも殆どなくなり、知り合いと顔を合わせることもなくなる。
食堂には寄り付かない。あの頃の楽しい思い出に浸りたくないというのと同時に、憲司や優衣、あるいはムラッセと顔を合わせたくないからだ。
俺の顔を確認する度、他の学生に注目されているような気がする。あの事件以降、ネットで拡散された俺たちの写真。世間では緒方による理不尽な殺人事件とされており、むしろ、俺に向けられるのは同情の目であったと思う。
しかし、真犯人が俺という事実は覆ることなく、やはり俺の心奥底にある背徳感が同情の目として素直に受け入れられなかった。
他者の視線を掻い潜るように帰宅しようと思った矢先、授業終わりの俺を待ち伏せしていたムラッセが眼前に現れる。
「体の具合は大丈夫か?」
「そっちこそ、緒方があんなことになって……」
「緒方が死んで辛いのか、緒方が烏場を殺したことが哀しいのか。正直、未だに心の整理はついていない。あいつのことを分かってあげていたつもりだが、俺なんかじゃ計り知れない悩みを抱えていたんだな」
緒方のことを考えまいと、アルバイトを詰め込んで働いていると耳に届いていたが、以前よりも肉が削げ落ちて顔色が悪い。毅然として平常を見せてはいるが、心も体もボロボロといった印象を受ける。
「学校に足を運んだ理由は、教務課で手続きを済ませにくるためだ」
「手続き?」
「ああ、自主退学することにしたんだ。元々単位も不足していたし、緒方が死んでキリがいいかなって。というより、もう予定が立っているんだ。来週末にはカナダへ渡航して、向こうで語学学習に励む。そのままノマドワーカーを目指しながら世界中の旅をするというのが目標だ」
ムラッセは行動力のある男だ。彼が言うからには、それを実現させるのだろう。精神状態が不安定な中でも、次の1歩を歩みだしている彼を単純に凄いと感心する。
いつまでも悲しみの中にいても変化は起きない。ムラッセのように自分からアクションを無理にでも起こして気持ちを切り替えるしか、痛んだ心を早期快復させるのは難しいのかもしれない。
「そうか、寂しくなるな。送別会でも開こうか?」
「遠慮しておく。しみったれた会になりそうだしな」
「ははっ……、間違いない」
「それに」
一旦、ムラッセが言い淀む。だが、彼なりに決意を持って俺の前に立ったのだろう。彼は一呼吸を入れて言葉を続ける。
「お前は憲司と優衣に避けられているだろう?」
そんなド直球で言われると、さすがに胸が張り裂けそうに痛い。
「さ、避けられているってなんだよっ」
「違うのか?」
「……」
多分、違わない。憲司が俺に気を遣って連絡を寄越さないと思い込みたかっただけなのかもしれない。薄々と、彼に距離を置かれているような嫌な気はしていたのだ。
「優衣がお前のことを恐れている。詩奈の件も白馬の件も、お前が緒方を脅して仕向けたものだってな」
「お、おい。そ、そんなはずないだろ」
「優衣はお前に襲われていると言っている。俺としては両者の言い分も聞いて、どちらの話を信じるべきか判断する必要がある。けれど、憲司はすっかり優衣の言うことを信じているようだ」
こうなることを阻止したかった。優衣がいよいよ、あの話について明かしたのだった。俺の意志によるものでないにしても、彼女にとって俺は強姦しようとしていた獣に見えていたのだろう。
仕方がない。そう簡単に流せれば、俺の行動は大きく変わったと思う。
しかし、俺の心に瞬時として浮かび上がったのは、優衣と憲司を今すぐに消し去って秘密を隠す必要があると思ってしまったこと。優衣は詩奈にも打ち明けた経緯もあるので、どうにも口は軽いようだ。そんな人間は、次第に噂を広めることに快感を得るに違いないと俺は踏んでいる。
(消さなきゃ、消さなきゃ、消さなきゃ)
俺の罪は全て揉み消さなければいけない。
運が良いことに、最近の俺は悪いことをしても罰を受けていないではないか。≪悪魔の脳≫に深く関わっている人間から見えない援助を受けている可能性は十二分にある。それならば、今この時に利用しない手はない。
欲望に向かって決意が固まると、今度はウキウキとした胸躍る高揚感が強くなる。平常心でありながら、自分が凶悪な性格に変貌していることを自覚している。今まではその変化を恐れて否定し、倫理観を守り続けようと制御が利いていた。
だけど、もう止まれない。残念、止まる気がさらさら湧いてこなかった。
▽
頭が痛い。ガンガンと頭部を叩きつけるような痛み。
視界には幾つもの無数の選択肢が浮かんでいる。そのどれもが殺害方法を記した選択肢だ。あちこちに飛び回り揺れ動いたり、近づいては遠ざかったり。すべての選択肢がまるで浮遊するホコリのように鬱陶しくて仕方がない。
(殺し方は俺が決める! 邪魔すんなよ!)
脳が随分と浸食されて、自我を保つ時間が余り無いことに俺は気付き始めている。
目標地点に向かいながら、俺は小野塚と面会した日のことを思い出す。
――須藤 杏子が席を外し、後方で会話記録を取っている刑務官と3人になる。彼がどういう気持ちで今までの会話を聞いていたのか。笑いを堪えていたのかもしれないし、驚愕をしていたかもしれない。あるいは無機質なロボットのように淡々と書記に徹していたのかもしれない。
小野塚はそんな刑務官を無視して、俺に向けて鋭い眼差しを向けた。
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「はい、そうですね」
「だが、それは決して進化なんかではない。ごくわずかな個人差でしかない」
「……つまりは?」
「時間もないし、簡潔に伝えよう。先の件で、私は≪悪魔の脳≫によって彼女の家族を殺したと言った。だが、それは嘘だ」
肌に粟が立つ。この男はなんてことを暴露しているんだ。今まで≪悪魔の脳≫を理由に犯罪を否定してきた人間ではなかったのか。それなのにどうして、刑務官が耳にしている場所で堂々と――。
「びっくりさせたか、無理もない。だが、事実だ。私は故意で殺人を犯したのだ」
「じゃあ、なにか? アンタが脳を操られていたってのは全て嘘だったのかよ」
「そうじゃない。確かに君と同じ爆弾を頭に抱えている。現に強盗という行為は≪悪魔の脳≫によって選択されたからな」
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「え、えっと……」
刑務官に声が届きにくいように、彼はボソリと発言する。
「殺人衝動が抑えられなくなっているんだろ?」
「こらっ! ボソボソと喋らないように!」
刑務官に注意された小野塚はペコペコと頭を下げて謝罪をする。
殺人衝動。まさにその自覚はある。恐らく友人たちと白馬に向かったあの日から。キッカケは詩奈を殺したことか? 邪魔者を消せた喜びが俺に中毒性を植え付けたとでも言うのか。
「気を付けろよ。罪を犯したくないのであれば、≪悪魔の脳≫の問題だけでなく、お前自身の心の問題と向き合う必要がある」
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