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第3章 二日目、そして事件が起こる

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 それぞれが、何か思うところがあったのだろう。帰りの車中では会話は盛り上がらず、みんな黙り込んでいた。何か大切なものを忘れてきたような、そんな気持ちを引きずってペンションに帰ってきた。受付カウンターの時計の針は十時三十分を指していた。

「先輩、しつこいですが、大丈夫ですか?」

 一度部屋に戻ったところで無口な先輩の顔を見るが、やはりいつもの元気はない。

「心配するな。これで一区切りがついたわ。しばらくしんみりするかもしれんが、気にせんでええ」

 まあ、落ち込むなと言う方が酷というものだろう。

「しんみりですか……」
「ははは、冗談やって。さて、昼飯のあとはお待ちかねの海水浴や。お前はそれまで部屋で昼寝するなり散歩に行くなりしてたらええ。俺はちょっと海でも眺めて友人との思い出に浸ってくるわ」

 そんな似合わないキザなセリフを言って、三輪さんは恥ずかしそうに笑った。
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