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2-5 邂逅5
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「ボーッとしてないで!」
ホッとしたのも束の間、後ろから娘の声にどやされた。
「まったく礼を言うのが先だろ」と背後を振り返ると、びしょ濡れのロングナイフが目の前に飛んできた。反射的に左手で受け止める。
「これは?」
「何言ってんの。あんたがブッ飛ばしたピノってデカブツのでしょ」
「お、おお、そうか」
どうにも勘が狂う。気づけばシスターと呼ばれた女性はすでにこの場にいない。
「これ、貰っていいのか?」
「知らないわよ。とにかく自治警に捕まりたくないなら急がなくちゃ」
娘はそう叫ぶと、水の流れる通路から飛び出し複雑な街路に飛び込んでいった。俺は別に何かやましいこともないのだが、ここで自治警察に確保されて良いのかどうか判断がつかない。
「入界の連絡はすぐには届かないだろう」
オーツカ課長の粘っこい声が思い出される。
「チッ、しょうがねーな」
短棒をポケットに戻し、ぎらつく刀身が剥き出しのロングナイフを右肩に担ぐと、俺は娘の背中を追って駆け出した。
思いがけず俊足の娘の背を追いかけ、酸化した鉄の骨組みと樹脂ブロックで作られた街路を駆け抜ける。マザー創建当時の骨格に、後から付け足されたのだろう。貧弱で法則性のない建物の連なりが、複雑な迷路を作っていた。
周囲からは大勢の人の気配がするが、騒動に巻き込まれるのを嫌ったのか。誰もが建物内に引きこもり息を潜めているようだ。いくつ目かの曲がり角を曲がったとき、背後に追跡者の影がチラリと見えた。しかし、このエリアのマップを記憶しているのか、娘の駆けるルートは巧妙を極め、追手に補足されることはない。
そのペースに慣れてきた拍子に、娘は薄い垂れ幕を捲り上げて一軒の建物に突入した。追いかけて入口をくぐったところで、テーブルに座り食事をしていたらしい男と目が合う。思わず頭を下げて、向こうへ通ずる板扉から飛び出した。
ホッとしたのも束の間、後ろから娘の声にどやされた。
「まったく礼を言うのが先だろ」と背後を振り返ると、びしょ濡れのロングナイフが目の前に飛んできた。反射的に左手で受け止める。
「これは?」
「何言ってんの。あんたがブッ飛ばしたピノってデカブツのでしょ」
「お、おお、そうか」
どうにも勘が狂う。気づけばシスターと呼ばれた女性はすでにこの場にいない。
「これ、貰っていいのか?」
「知らないわよ。とにかく自治警に捕まりたくないなら急がなくちゃ」
娘はそう叫ぶと、水の流れる通路から飛び出し複雑な街路に飛び込んでいった。俺は別に何かやましいこともないのだが、ここで自治警察に確保されて良いのかどうか判断がつかない。
「入界の連絡はすぐには届かないだろう」
オーツカ課長の粘っこい声が思い出される。
「チッ、しょうがねーな」
短棒をポケットに戻し、ぎらつく刀身が剥き出しのロングナイフを右肩に担ぐと、俺は娘の背中を追って駆け出した。
思いがけず俊足の娘の背を追いかけ、酸化した鉄の骨組みと樹脂ブロックで作られた街路を駆け抜ける。マザー創建当時の骨格に、後から付け足されたのだろう。貧弱で法則性のない建物の連なりが、複雑な迷路を作っていた。
周囲からは大勢の人の気配がするが、騒動に巻き込まれるのを嫌ったのか。誰もが建物内に引きこもり息を潜めているようだ。いくつ目かの曲がり角を曲がったとき、背後に追跡者の影がチラリと見えた。しかし、このエリアのマップを記憶しているのか、娘の駆けるルートは巧妙を極め、追手に補足されることはない。
そのペースに慣れてきた拍子に、娘は薄い垂れ幕を捲り上げて一軒の建物に突入した。追いかけて入口をくぐったところで、テーブルに座り食事をしていたらしい男と目が合う。思わず頭を下げて、向こうへ通ずる板扉から飛び出した。
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