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第五話 聴診器は男性器
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井上は本当に夜勤だった。その日は姿を見せず、予告通り翌日の夜やってきた。
──ピンポーン
島田は、インターフォンの画面に映る男を確認して玄関に駆けた。ドアを開けると、あの緑のダッフルコートが滑り込んできて、心臓が高鳴る。井上は「こんばんは」と今から抱かれることを感じさせない爽やかな挨拶を返してきた。
しかしそれもすぐさま豹変する。
「島田くん……」
狭い玄関で、2人だけの空間が誕生すると、井上は島田を壁に追い込む。
「いや……島田先生……」
井上の涙袋が膨らみ、その下は朱に染まり、声は色気を帯びている。
「はや、く……早く、診察してください……」
一時停止なしの猛スピードで井上の性欲が島田を襲う。
欲しがりな患者は、医者の触診を求め手を握った。その手を自身の股間へ持っていき、腰を揺らす。患者の期待に応えようと、島田はジーンズの上から熱っぽい膨らみをまさぐった。
「大丈夫ですか? ここの膨らみが異様ですが……」
「何故か苦しくて……病気でしょうか」
「少し失礼しますね」
患部を優しく撫で、手の中で揉むと井上は腕で顔を隠した。
「痛いですか?」
「いいえ」
「反応してますが? 何か感じるならいってください」
完璧に医者と患者になりきった二人のプレイはヒートアップしていく。
「もっとよく診察しないと分かりませんね。ちょっと恥ずかしいかも知れませんが、貴方の為です……脱いでくれますね?」
一度首が縦に振られる。
「では、診察室へ」
診察室は寝室。ベッドの上に腰を下ろす前に、島田によってベルトが抜き去られる。ジーンズは降ろされ、下着はそのまま、ベッドの上を手で叩くと、井上は黙って座った。
「上の服を脱いで貰えますか?」
「はい」
診察の始まりだ。会話は普通の病院でのやりとりと変わらない。井上はシャツの釦を一つ一つ外していく。恥ずかしさで顔を上げられない。しかしこの羞恥心が気持ちいい。その証拠に瞳が濡れている。その瞳を思い切って上げると……
「島田……くん?」
「今は先生ですよ」
丁寧に訂正する島田は白衣に腕を通していた。ポケットには聴診器も入っている。
「何で白衣なんて着ているんだ」
「お医者さんなんだから当然ですよ」
島田が用意していた物は白衣と聴診器だったのだ。襟を整え、腰に手をあて井上を見下ろす。完璧に医者の姿で、昨日病院で見たそのままだった。
完璧に島田先生になりきり、患者の顎をとる。井上の鼻を薬品の香りが掠め、一気に医者と患者プレイに引き戻していく。
「この方が、興奮するでしょ? 井上さん、身体の隅々まで診察していいですね?」
井上の性欲が赤色灯を点滅させる。予想を超えたサプライズで性欲は緊急走行を始め、頬は赤色灯並みに真っ赤だ。
「おねがい、します」
心臓の高鳴りが痛くて、声も上ずる。井上の反応に島田は微笑んだ。そして聴診器を耳に装着した。
「では聴診器を当てて診察していきますね」
島田は持って帰ってきた聴診器を心臓や肺の位置する箇所に当てる。ただの診察かと井上に思い込ませ気を抜かせた瞬間に、弧を描いている部分──ノンテルリムを乳首に当てる。
「んんッ」
井上が小さく声を上げる。
「どうかしましたか?」
「いえ……大丈夫、です」
「ふーん、ここら辺が気になるのかと思いましたが?」
さっきより強く乳首を擦る。
「ッあ」
「井上さん? ここかな?」
聴診器の肌に触れる丸いダイヤフラムを乳首に押し付け転がす。井上の身体が跳ね、予想通りの反応に島田はポーカーフェイスを気取っている医者の顔が緩みそうになる。
「どうですか? どこがおかしいか自分で分かりますか?」
分かりやすく乳首で反応している井上は首を横に振る。
「仕方ありませんね。もっと違う聴診器で調べましょうか」
聴診器を首にかけ、島田はベルトを外した。そして既に勃ち上がった雄を露わにし、先端を井上の胸筋の谷間にあてがった。雄の匂いを吸い込み、井上は自身の股間をさらに膨らませた。
「先生、それは聴診器なんですか?」
「聴診器ですよ。しかもとても高性能です。さっきの聴診器では音しか分かりませんでしたが。これだと井上さんの身体の熱まで伝わりますよ? ああ、やっぱり凄く熱い。もっと調べないと」
胸の上で性器を滑らせ、乳首に持っていく。直ぐには触れず、乳輪の周りで遊ばせる。それを見つめる井上の呼吸が荒くなり、島田の腹部に熱い吐息をかける。艶っぽい溜息と興奮を帯びた熱視線が島田の男性器……ではなく高性能聴診器の機能を破壊し、濡らしていく。淫靡に光る先走りは島田の興奮の現れ。それが井上にも伝わり、お互いの下半身を繋げたいと求めてしまう。
「く、あッ、もう……我慢できない」
「何か言いましたか? 診察なのに我慢できないっておかしいですね?」
「島田先生こそ聴診器から何かが……」
「井上さんが苦しんでるからお薬の準備を始めたんですよ」
井上の胸筋がぬらりと光り、滑っては乳首に触れそうになる。しかし島田は乳首には当てず、とうとう胸からも離した。
「お薬の時間ですよ」
高性能聴診器「男性器」からのお薬。井上は自然と欲しいところ——臀部をシーツに擦りつけアピールした。だが島田は冷たく見下ろした。
「お薬はまずお口で飲まないと。ほら、零れる前に早く」
カウパーが艶めく性器の先端を井上の口元に持っていく。
「ついでにお口の中も調べますから。ね?」
「聴診器なのに薬も出て、口の中まで調べられるんですか?」
悪徳医者に疑問を投げかける患者を演じる井上。しかし島田が
「とても便利でしょ? でもとても気難しいやつで、上手に飲めないと、この聴診器……」
医者は患者の耳もとで怪しげな低い声を出した。
「アナル大好きなお注射にもなりますので。気を付けて下さいね」
井上の湿った唇がたまらなそうに薄く開く。
「お願いします」
開かれた口内に糸が引いている。早く卑猥な聴診器を綺麗にしたいと欲を溢れさせているようだ。その熱い場所へ、島田は性器をゆっくり入れた。先端が上唇に触れたとたん、激しいバキュームで全てが飲み込まれる。
「くっ、すごいな」
「せんせ、い、どうれふか?」
井上は「先生、どうですか?」と自分の淫乱な身体の状態を尋ねた。
「まだ分からないなあ……もっと舌を動かして」
吸い付くだけだった狭い咥内で分厚い舌が動く。
「そんなに欲しがって、いやらしい患者さんだ」
島田はその患者の口内を診察するため腰を揺らした。舌の上で高性能聴診器を滑らせると、ザラザラとした感触が裏筋を這う。やり手な患者も舌先だけ尖らせ、緩急をつけて刺激してくる。
「本当にいやらしいなぁ。奥はもっと凄そうですね」
井上の後頭部を掴み奥へ押し込む。
「すごく熱いですよ。締めつけもきつい。痙攣かな? これは大変だ。すぐにお薬を飲まないと。とても濃いやつ」
島田は診断結果を伝えると腰の動きを激しくし、白濁の投薬の準備を始める。口内を侵される井上はその時が来るのを目を潤ませて待った。
「苦いけど大丈夫?」
島田の素の気遣いに、井上はピストンを繰り出す腰に両腕を回して返事する。出すまで離さない。その欲しがりな男の口内で聴診器が雄になる。
——ビュクッ
「やべっ!」
「?!」
お薬は井上の喉奥に放たれた。強制的に喉をドロドロにさせられ、胃袋に流れこんでいく精子に井上は咥えたままむせた。
「げほッ」
「ごめん! 大丈夫?!」
慌てた島田は役目を果たした聴診器を引き抜き、井上の背中をさすった。井上はむせながら身を捩り、島田の優しい手から逃げる。
「げほッ。すみません、せっかくのお薬が」
井上の中ではまだプレイは続いているのだ。島田は素に戻ってしまった自分を申し訳なく思ってしまった。
もう一度白衣を整える。
そして、井上の口元から垂れる白い液を掬い、井上に見せつけた。
「ちゃんと飲んでって言ったのに」
飲めなかったらどうなるか。最初に突きつけられた条件を思い出し、井上は火照った身体を差し出そうとしたが、荒ぶる聴診器を持つ医者は「お仕置ですね」と井上の自主性を蔑ろにして力任せに身体を反転させ、下に纏っていた衣服を無理矢理下ろし臀部を鷲掴みにした。
「アッ……ごめんな、さい、先生」
桃色の秘部がひくついている。島田の雄を欲し、持ち主同様誘ってくる。
「ごめんなんて言っている割に、ここもなかなか重症ですよ?」
人差し指をあてがうと、前回同様吸い込まれるように中へ侵入できた。
「こんなに柔らかくして。おや、ここに何かありますね?」
「そ、それは?!」
「……突起みたいな……何かな?」
ドクター前立腺は患者の前立腺をすぐに探り当てた。しかし、何も知らぬ顔をして首を傾げる。
「このまま触診しますね」
つついたかと思うと、急に擦ったりして、島田は前立腺を調べた。プクッと膨らんだそこをあと少し押せば、患者が甘い声を発することはわかっている。しかし島田は意地悪にも優しくしかしない。しかも……
「んー、ここはどうされたんですか?」
四つん這いの井上の筋肉質な太ももの間にぶら下がるものに本物の聴診器を当てた。
「アアッ!」
冷たい感触が睾丸に触れ、予期せぬ診察に井上はシーツを握りしめた。
「硬く張ってますよ」
ツーとダイヤフラムを這わせ、睾丸をくまなく調べる。弧を描くと井上の腰がビクン、ビクンと跳ね、器用に手のひらで聴診器を抑えて睾丸を刺激し、伸ばした二本の指で膨らんだ性器を扱くと、とうとう井上は腰が砕けてしまった。
「ダメですよ。ほら、腰上げて。直腸の検査もまだ終わってません」
砕けた際に抜けた指を再び直腸へ。もちろん片方の手は睾丸を聴診器攻めにしながら、性器にも快楽を与える。
そして焦らしていた指が井上の前立腺を激しく襲った。
「くっ……ッあ、あ、あ……!!」
「どちらが気持ちがいいですか? 中と外」
中は前立腺、外は性器。どちらにも激しい快楽を与えながら、島田は問診をする。
「気持ちのいい方が分からないと診断できないのですか?」
「まって……気持ちよすぎて……分かりません……はぁ、はぁ」
首だけ回した井上は喘ぎながら島田に答える。蕩けた脳内では快楽だけしか理解出来ず、全てが気持ちよすぎて、壊れかけていた。
「……なるほど。これは末期のド淫乱ですね」
呆れたような演技のため息をついた島田は井上を快楽から解放した。末期のド淫乱診断を受けた患者はその名の通り
「抜かないで、もっと、ください」
と、欲しがる。身体を起こして座り、M字に大きく股を開き、自身で秘部を広げた。そして……
──先生の太い注射で、もっと、疼かせて
もっと快楽に蝕まれたいと懇願する患者を白衣が覆い被さる。押し倒された患者は足を高く持ち上げられ、されるがまま注射を受け入れた。
「もっと、奥ま、で……注射、してくださいッ! ああッ、もう、おかしくなる、先生!」
「おかしくなってみますか? そしたら治るかもしれませんよ?」
「ほ、本当、んあ、です……かッ?」
「はい。その代わり、もっと気持ちよくなって、もっと喘ぐことになりますよ?」
「ッは……もっと、もっと気持ちよく……なりたいッ、島田先生、はあ、ああんッ……あ、ああ……して、もっと奥まで注射してッ!」
喘ぎながら激しいセックスをさらに望んでくる。島田は一度性器を抜き、またひくつく秘部へ捻じ込んだ。
井上は力任せに奥まで押し込まれ、快楽に天を仰いだ。
「ぁあ! だめだ……身体が、勝手にッ」
井上は本来の職業を彷彿される力で、逆に島田を押し倒した。唖然とする島田に跨り、腰を沈めて、反り勃った性器を飲み込む。
騎乗位で喘ぎ、太い注射で中を擦る。肉壁に包み込まれた雄が火傷しそうになるほど激しく動き、今度は島田を追い込んだ。
患者の狂ったような性への執着に島田は唇を噛み締めた。
「くっ……先生を襲ってしまうなんて、隔離する必要がありますね」
「隔離されて、毎日……エッチな診察……されたいです」
「実験もさせてくださいね? ああ、本当にド淫乱な患者さんだ」
上で果てそうになる井上を島田は抱きしめた。そして見えない位置で、医者の顔を捨てる。
──本当にあんたを俺だけのものにしたい
胸の内でそう呟き、もう一度強く抱きして、井上が果てるのを待った。
***
事後。井上は相変わらずサッと身なりを整える。島田もベッドの淵に腰かけ白衣を雑に畳みながらその様子を眺めていた。初めてした時より、燃え上がって、役になりきってしまった自分が恥ずかしくなり、井上から視線を逸らした。そして、羞恥心を払拭すために別の話題を振る。
「そういえば、あのチョコレート美味かった?」
違反者として捕まった時、押し付けたチョコレートだ。
「チョコレート? ああ、あれか。悪いけど食べていないよ。職務上不可能だ」
数分前の末期ド淫乱患者の艶かしい声は皆無。
「やぱり真面目だな井上さんは。処分した?」
「……まだ持ってる」
「本当に真面目だな。それなら返してもらおうかな」
その言葉の意味を井上は考えた。浮かんでくるのは、初めて島田の家に来たときに騒いでいた男。
「あの子と復縁できた?」
「そうじゃなくて、井上さんの性格上、持ってると食べる事も出来ないし、捨てる事も出来ないだろ? だから返してもらおうかなって」
「そうか」
井上は「待ってて」と言い、部屋を出て行った。しばらくして戻ってきたその手には渡したあの日と変わらないチョコレートの箱があった。
「持ち歩いてたの?」
「ああ。どうすればいいか分からなくて」
返せばよかったのに、それすらできなかった。井上は自分の真面目な性格と相反した思考に苦しんでいた。
「でも君が言うなら返すよ」
今の台詞もおかしい。本当は返したくないみたいな台詞。そして島田もそれに気が付いていた。差し出されたチョコレートを受け取り、もう一度井上に贈った。井上は目を瞬いた。
「これなら職務中にチョコレートを貰ったことにならないよな?」
苦しい細工に、井上は顎に手を当てて考えた。その間を長く感じた島田は耐えきれず「やっぱ自分で食うわ!」と結局自分でリボンを解いた。開け放たれた箱からは甘い香りが漂い、この緊張感漂う部屋に充満する。一粒拾い上げ、口に放り込む。口内で溶けだしたチョコレートはミルクチョコレートなのにほろ苦い気がした。指にまで溶けたチョコの感触がし、舌で舐めとって抜こうとしたその時、島田の手首を井上が掴んだ。
「んんんんんん?」
島田は「井上さん?」とくぐもった声を出した。井上は黙って手首を引きよせる。島田の口内から抜かれた指には茶色の甘味がべっとりとついている。固形は口内に残したまま。
井上は島田の甘い唇にキスをし、舌でこじ開けた。
「?!」
急な展開に島田は掴まれている手に力が籠り、チョコレートのついた指先が困って忙しなく動いていた。
——チュッ、クチュ、クチュ
井上の舌が島田の中で滑らかに動く。熱い舌先は口内でチョコレートを見つけると、攫う様に絡めとった。
空っぽになった島田はもう一度名前を呼ぶ。
「井上、さん? ……ッちょっと、それは!」
——ちゅっ
頬が膨らんでいる井上は島田の指先も口内に含んだ。今度は指先のチョコレートを舌先でチロチロと舐める。唾液とチョコレートの放つ艶がいやらしく光り、井上は島田に見せつける様に角度を変えて舐めて行く。
最後に自身の唇をペロリと舐め、井上は島田からチョコレートを受け取った。
「美味しかったよ、ありがとう」
「反則」
「何が?」
確信犯の笑みを浮かべる井上。初めて見る微笑みに、島田の心は揺さぶられる。その表情を両手で包み込み、島田は目を細めた。
島田好みの顔。何度も興奮させてくれた顔の持ち主をもっと欲しいと強請る気持ちが逸ってしまう。
「あのさ」
「ん?」
告白してしまおうか。そう悩んだ末、島田は……
「お返しとかいらないから」
告白したい気持ちを抑えた。
「どうして?」
「実はこの前、お尻触ったのが俺的にホワイトデーだったんだ。あれがお返しのつもりで貰っといたから」
「でも、あのわいせつ罪の分はきちんと身体で払ってもらっただろ?」
「そうだけど……」
「きちんとお返しさせてほしい。何がいい?」
島田は告白したい気持ちを抑えた。だが、もっと井上を知りたいという気持ちは抑えられなかった。猥褻の件は、きちんと身体で支払いチャラになっている事は島田自身も分かっている。あの衝撃的な最初のセックスをお互い忘れる筈がなかった。つまり、バレンタインのお返しを島田はまだ貰ってない事になる。だからこそ、今回贈ったバレンタインのお返しは、井上の性格ならきちんと返すことが分かっていた。島田は、井上の真面目な性格を逆手にとったのだ。
「お返し、何がいい? やっぱり——」
井上は島田が性行為を望むと予想し、頭の中で勤務表を思い出していた。しかし島田は予想外の事を言ってきた。
「ツーリングしない?」
「え?」
「ダメかな? 井上さんもバイク持ってるよね? どこか景色のいいところ探しておくからさ。それがお返しで、どう?」
井上は困惑した。
「セックスじゃなくていいのかい?」
「それじゃないとダメっていうならそれでもいいよ。けど、お互いきつい仕事してるし、たまには気分転換もいいかなって」
気分転換させてあげたいという気持ちは半分。本当はもっと陽の当たる場所で井上を見て、中身を知りたかったのだ。当の本人はまだ困惑しきっており、なかなか返事を返さなかった。結局、
「答え、少し待ってもらってもいいかな?」
と、残し島田の家を去ってしまった。
井上が去った寝室で、島田は頭を抱えた。
どうすれば井上と近づけるのか、そして何より気になるのが、井上が島田と距離を取ろうとすることだ。男同士のセフレや恋人はすぐに捕まるものではない。貴重な相手だ。しかし、絶対的な関係を持とうとせず、ほぼ偶然が重なり二回目のセックスが実現した。井上が病院に現れなければ二度と会えなかっただろう。
「大人だから大人の関係を望むのかな? いや、でも……」
島田には一つ気がかりな事があった。病院勤務だからこそ分かる人間の表情から感情を読み取る能力。それが井上の普通とは違う何かを捉えていたのだ。そしてドクター前立腺と異名を持つだけはあり、井上の中の緩さにも気づいていた。
「病院で診察した時は、たまに使っているんだろうなってくらいの緩さだった。でも俺とする時は、必ず……」
数刻前に使用していた形跡があるのだ。一度目もすんなりと挿入された。今日も問題なかった。抵抗なく、それでいて内側に残るローションの状態から、井上が誰かに抱かれてからすぐ島田の前に現れているのが分かる。
「恋人持ちだったりして」
それも相まって告白を躊躇ってしまった。嫌な想像が脳内を埋め尽くす。口内のチョコレートはすっかりなくなっていた。
──ピンポーン
島田は、インターフォンの画面に映る男を確認して玄関に駆けた。ドアを開けると、あの緑のダッフルコートが滑り込んできて、心臓が高鳴る。井上は「こんばんは」と今から抱かれることを感じさせない爽やかな挨拶を返してきた。
しかしそれもすぐさま豹変する。
「島田くん……」
狭い玄関で、2人だけの空間が誕生すると、井上は島田を壁に追い込む。
「いや……島田先生……」
井上の涙袋が膨らみ、その下は朱に染まり、声は色気を帯びている。
「はや、く……早く、診察してください……」
一時停止なしの猛スピードで井上の性欲が島田を襲う。
欲しがりな患者は、医者の触診を求め手を握った。その手を自身の股間へ持っていき、腰を揺らす。患者の期待に応えようと、島田はジーンズの上から熱っぽい膨らみをまさぐった。
「大丈夫ですか? ここの膨らみが異様ですが……」
「何故か苦しくて……病気でしょうか」
「少し失礼しますね」
患部を優しく撫で、手の中で揉むと井上は腕で顔を隠した。
「痛いですか?」
「いいえ」
「反応してますが? 何か感じるならいってください」
完璧に医者と患者になりきった二人のプレイはヒートアップしていく。
「もっとよく診察しないと分かりませんね。ちょっと恥ずかしいかも知れませんが、貴方の為です……脱いでくれますね?」
一度首が縦に振られる。
「では、診察室へ」
診察室は寝室。ベッドの上に腰を下ろす前に、島田によってベルトが抜き去られる。ジーンズは降ろされ、下着はそのまま、ベッドの上を手で叩くと、井上は黙って座った。
「上の服を脱いで貰えますか?」
「はい」
診察の始まりだ。会話は普通の病院でのやりとりと変わらない。井上はシャツの釦を一つ一つ外していく。恥ずかしさで顔を上げられない。しかしこの羞恥心が気持ちいい。その証拠に瞳が濡れている。その瞳を思い切って上げると……
「島田……くん?」
「今は先生ですよ」
丁寧に訂正する島田は白衣に腕を通していた。ポケットには聴診器も入っている。
「何で白衣なんて着ているんだ」
「お医者さんなんだから当然ですよ」
島田が用意していた物は白衣と聴診器だったのだ。襟を整え、腰に手をあて井上を見下ろす。完璧に医者の姿で、昨日病院で見たそのままだった。
完璧に島田先生になりきり、患者の顎をとる。井上の鼻を薬品の香りが掠め、一気に医者と患者プレイに引き戻していく。
「この方が、興奮するでしょ? 井上さん、身体の隅々まで診察していいですね?」
井上の性欲が赤色灯を点滅させる。予想を超えたサプライズで性欲は緊急走行を始め、頬は赤色灯並みに真っ赤だ。
「おねがい、します」
心臓の高鳴りが痛くて、声も上ずる。井上の反応に島田は微笑んだ。そして聴診器を耳に装着した。
「では聴診器を当てて診察していきますね」
島田は持って帰ってきた聴診器を心臓や肺の位置する箇所に当てる。ただの診察かと井上に思い込ませ気を抜かせた瞬間に、弧を描いている部分──ノンテルリムを乳首に当てる。
「んんッ」
井上が小さく声を上げる。
「どうかしましたか?」
「いえ……大丈夫、です」
「ふーん、ここら辺が気になるのかと思いましたが?」
さっきより強く乳首を擦る。
「ッあ」
「井上さん? ここかな?」
聴診器の肌に触れる丸いダイヤフラムを乳首に押し付け転がす。井上の身体が跳ね、予想通りの反応に島田はポーカーフェイスを気取っている医者の顔が緩みそうになる。
「どうですか? どこがおかしいか自分で分かりますか?」
分かりやすく乳首で反応している井上は首を横に振る。
「仕方ありませんね。もっと違う聴診器で調べましょうか」
聴診器を首にかけ、島田はベルトを外した。そして既に勃ち上がった雄を露わにし、先端を井上の胸筋の谷間にあてがった。雄の匂いを吸い込み、井上は自身の股間をさらに膨らませた。
「先生、それは聴診器なんですか?」
「聴診器ですよ。しかもとても高性能です。さっきの聴診器では音しか分かりませんでしたが。これだと井上さんの身体の熱まで伝わりますよ? ああ、やっぱり凄く熱い。もっと調べないと」
胸の上で性器を滑らせ、乳首に持っていく。直ぐには触れず、乳輪の周りで遊ばせる。それを見つめる井上の呼吸が荒くなり、島田の腹部に熱い吐息をかける。艶っぽい溜息と興奮を帯びた熱視線が島田の男性器……ではなく高性能聴診器の機能を破壊し、濡らしていく。淫靡に光る先走りは島田の興奮の現れ。それが井上にも伝わり、お互いの下半身を繋げたいと求めてしまう。
「く、あッ、もう……我慢できない」
「何か言いましたか? 診察なのに我慢できないっておかしいですね?」
「島田先生こそ聴診器から何かが……」
「井上さんが苦しんでるからお薬の準備を始めたんですよ」
井上の胸筋がぬらりと光り、滑っては乳首に触れそうになる。しかし島田は乳首には当てず、とうとう胸からも離した。
「お薬の時間ですよ」
高性能聴診器「男性器」からのお薬。井上は自然と欲しいところ——臀部をシーツに擦りつけアピールした。だが島田は冷たく見下ろした。
「お薬はまずお口で飲まないと。ほら、零れる前に早く」
カウパーが艶めく性器の先端を井上の口元に持っていく。
「ついでにお口の中も調べますから。ね?」
「聴診器なのに薬も出て、口の中まで調べられるんですか?」
悪徳医者に疑問を投げかける患者を演じる井上。しかし島田が
「とても便利でしょ? でもとても気難しいやつで、上手に飲めないと、この聴診器……」
医者は患者の耳もとで怪しげな低い声を出した。
「アナル大好きなお注射にもなりますので。気を付けて下さいね」
井上の湿った唇がたまらなそうに薄く開く。
「お願いします」
開かれた口内に糸が引いている。早く卑猥な聴診器を綺麗にしたいと欲を溢れさせているようだ。その熱い場所へ、島田は性器をゆっくり入れた。先端が上唇に触れたとたん、激しいバキュームで全てが飲み込まれる。
「くっ、すごいな」
「せんせ、い、どうれふか?」
井上は「先生、どうですか?」と自分の淫乱な身体の状態を尋ねた。
「まだ分からないなあ……もっと舌を動かして」
吸い付くだけだった狭い咥内で分厚い舌が動く。
「そんなに欲しがって、いやらしい患者さんだ」
島田はその患者の口内を診察するため腰を揺らした。舌の上で高性能聴診器を滑らせると、ザラザラとした感触が裏筋を這う。やり手な患者も舌先だけ尖らせ、緩急をつけて刺激してくる。
「本当にいやらしいなぁ。奥はもっと凄そうですね」
井上の後頭部を掴み奥へ押し込む。
「すごく熱いですよ。締めつけもきつい。痙攣かな? これは大変だ。すぐにお薬を飲まないと。とても濃いやつ」
島田は診断結果を伝えると腰の動きを激しくし、白濁の投薬の準備を始める。口内を侵される井上はその時が来るのを目を潤ませて待った。
「苦いけど大丈夫?」
島田の素の気遣いに、井上はピストンを繰り出す腰に両腕を回して返事する。出すまで離さない。その欲しがりな男の口内で聴診器が雄になる。
——ビュクッ
「やべっ!」
「?!」
お薬は井上の喉奥に放たれた。強制的に喉をドロドロにさせられ、胃袋に流れこんでいく精子に井上は咥えたままむせた。
「げほッ」
「ごめん! 大丈夫?!」
慌てた島田は役目を果たした聴診器を引き抜き、井上の背中をさすった。井上はむせながら身を捩り、島田の優しい手から逃げる。
「げほッ。すみません、せっかくのお薬が」
井上の中ではまだプレイは続いているのだ。島田は素に戻ってしまった自分を申し訳なく思ってしまった。
もう一度白衣を整える。
そして、井上の口元から垂れる白い液を掬い、井上に見せつけた。
「ちゃんと飲んでって言ったのに」
飲めなかったらどうなるか。最初に突きつけられた条件を思い出し、井上は火照った身体を差し出そうとしたが、荒ぶる聴診器を持つ医者は「お仕置ですね」と井上の自主性を蔑ろにして力任せに身体を反転させ、下に纏っていた衣服を無理矢理下ろし臀部を鷲掴みにした。
「アッ……ごめんな、さい、先生」
桃色の秘部がひくついている。島田の雄を欲し、持ち主同様誘ってくる。
「ごめんなんて言っている割に、ここもなかなか重症ですよ?」
人差し指をあてがうと、前回同様吸い込まれるように中へ侵入できた。
「こんなに柔らかくして。おや、ここに何かありますね?」
「そ、それは?!」
「……突起みたいな……何かな?」
ドクター前立腺は患者の前立腺をすぐに探り当てた。しかし、何も知らぬ顔をして首を傾げる。
「このまま触診しますね」
つついたかと思うと、急に擦ったりして、島田は前立腺を調べた。プクッと膨らんだそこをあと少し押せば、患者が甘い声を発することはわかっている。しかし島田は意地悪にも優しくしかしない。しかも……
「んー、ここはどうされたんですか?」
四つん這いの井上の筋肉質な太ももの間にぶら下がるものに本物の聴診器を当てた。
「アアッ!」
冷たい感触が睾丸に触れ、予期せぬ診察に井上はシーツを握りしめた。
「硬く張ってますよ」
ツーとダイヤフラムを這わせ、睾丸をくまなく調べる。弧を描くと井上の腰がビクン、ビクンと跳ね、器用に手のひらで聴診器を抑えて睾丸を刺激し、伸ばした二本の指で膨らんだ性器を扱くと、とうとう井上は腰が砕けてしまった。
「ダメですよ。ほら、腰上げて。直腸の検査もまだ終わってません」
砕けた際に抜けた指を再び直腸へ。もちろん片方の手は睾丸を聴診器攻めにしながら、性器にも快楽を与える。
そして焦らしていた指が井上の前立腺を激しく襲った。
「くっ……ッあ、あ、あ……!!」
「どちらが気持ちがいいですか? 中と外」
中は前立腺、外は性器。どちらにも激しい快楽を与えながら、島田は問診をする。
「気持ちのいい方が分からないと診断できないのですか?」
「まって……気持ちよすぎて……分かりません……はぁ、はぁ」
首だけ回した井上は喘ぎながら島田に答える。蕩けた脳内では快楽だけしか理解出来ず、全てが気持ちよすぎて、壊れかけていた。
「……なるほど。これは末期のド淫乱ですね」
呆れたような演技のため息をついた島田は井上を快楽から解放した。末期のド淫乱診断を受けた患者はその名の通り
「抜かないで、もっと、ください」
と、欲しがる。身体を起こして座り、M字に大きく股を開き、自身で秘部を広げた。そして……
──先生の太い注射で、もっと、疼かせて
もっと快楽に蝕まれたいと懇願する患者を白衣が覆い被さる。押し倒された患者は足を高く持ち上げられ、されるがまま注射を受け入れた。
「もっと、奥ま、で……注射、してくださいッ! ああッ、もう、おかしくなる、先生!」
「おかしくなってみますか? そしたら治るかもしれませんよ?」
「ほ、本当、んあ、です……かッ?」
「はい。その代わり、もっと気持ちよくなって、もっと喘ぐことになりますよ?」
「ッは……もっと、もっと気持ちよく……なりたいッ、島田先生、はあ、ああんッ……あ、ああ……して、もっと奥まで注射してッ!」
喘ぎながら激しいセックスをさらに望んでくる。島田は一度性器を抜き、またひくつく秘部へ捻じ込んだ。
井上は力任せに奥まで押し込まれ、快楽に天を仰いだ。
「ぁあ! だめだ……身体が、勝手にッ」
井上は本来の職業を彷彿される力で、逆に島田を押し倒した。唖然とする島田に跨り、腰を沈めて、反り勃った性器を飲み込む。
騎乗位で喘ぎ、太い注射で中を擦る。肉壁に包み込まれた雄が火傷しそうになるほど激しく動き、今度は島田を追い込んだ。
患者の狂ったような性への執着に島田は唇を噛み締めた。
「くっ……先生を襲ってしまうなんて、隔離する必要がありますね」
「隔離されて、毎日……エッチな診察……されたいです」
「実験もさせてくださいね? ああ、本当にド淫乱な患者さんだ」
上で果てそうになる井上を島田は抱きしめた。そして見えない位置で、医者の顔を捨てる。
──本当にあんたを俺だけのものにしたい
胸の内でそう呟き、もう一度強く抱きして、井上が果てるのを待った。
***
事後。井上は相変わらずサッと身なりを整える。島田もベッドの淵に腰かけ白衣を雑に畳みながらその様子を眺めていた。初めてした時より、燃え上がって、役になりきってしまった自分が恥ずかしくなり、井上から視線を逸らした。そして、羞恥心を払拭すために別の話題を振る。
「そういえば、あのチョコレート美味かった?」
違反者として捕まった時、押し付けたチョコレートだ。
「チョコレート? ああ、あれか。悪いけど食べていないよ。職務上不可能だ」
数分前の末期ド淫乱患者の艶かしい声は皆無。
「やぱり真面目だな井上さんは。処分した?」
「……まだ持ってる」
「本当に真面目だな。それなら返してもらおうかな」
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「あの子と復縁できた?」
「そうじゃなくて、井上さんの性格上、持ってると食べる事も出来ないし、捨てる事も出来ないだろ? だから返してもらおうかなって」
「そうか」
井上は「待ってて」と言い、部屋を出て行った。しばらくして戻ってきたその手には渡したあの日と変わらないチョコレートの箱があった。
「持ち歩いてたの?」
「ああ。どうすればいいか分からなくて」
返せばよかったのに、それすらできなかった。井上は自分の真面目な性格と相反した思考に苦しんでいた。
「でも君が言うなら返すよ」
今の台詞もおかしい。本当は返したくないみたいな台詞。そして島田もそれに気が付いていた。差し出されたチョコレートを受け取り、もう一度井上に贈った。井上は目を瞬いた。
「これなら職務中にチョコレートを貰ったことにならないよな?」
苦しい細工に、井上は顎に手を当てて考えた。その間を長く感じた島田は耐えきれず「やっぱ自分で食うわ!」と結局自分でリボンを解いた。開け放たれた箱からは甘い香りが漂い、この緊張感漂う部屋に充満する。一粒拾い上げ、口に放り込む。口内で溶けだしたチョコレートはミルクチョコレートなのにほろ苦い気がした。指にまで溶けたチョコの感触がし、舌で舐めとって抜こうとしたその時、島田の手首を井上が掴んだ。
「んんんんんん?」
島田は「井上さん?」とくぐもった声を出した。井上は黙って手首を引きよせる。島田の口内から抜かれた指には茶色の甘味がべっとりとついている。固形は口内に残したまま。
井上は島田の甘い唇にキスをし、舌でこじ開けた。
「?!」
急な展開に島田は掴まれている手に力が籠り、チョコレートのついた指先が困って忙しなく動いていた。
——チュッ、クチュ、クチュ
井上の舌が島田の中で滑らかに動く。熱い舌先は口内でチョコレートを見つけると、攫う様に絡めとった。
空っぽになった島田はもう一度名前を呼ぶ。
「井上、さん? ……ッちょっと、それは!」
——ちゅっ
頬が膨らんでいる井上は島田の指先も口内に含んだ。今度は指先のチョコレートを舌先でチロチロと舐める。唾液とチョコレートの放つ艶がいやらしく光り、井上は島田に見せつける様に角度を変えて舐めて行く。
最後に自身の唇をペロリと舐め、井上は島田からチョコレートを受け取った。
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「反則」
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「あのさ」
「ん?」
告白してしまおうか。そう悩んだ末、島田は……
「お返しとかいらないから」
告白したい気持ちを抑えた。
「どうして?」
「実はこの前、お尻触ったのが俺的にホワイトデーだったんだ。あれがお返しのつもりで貰っといたから」
「でも、あのわいせつ罪の分はきちんと身体で払ってもらっただろ?」
「そうだけど……」
「きちんとお返しさせてほしい。何がいい?」
島田は告白したい気持ちを抑えた。だが、もっと井上を知りたいという気持ちは抑えられなかった。猥褻の件は、きちんと身体で支払いチャラになっている事は島田自身も分かっている。あの衝撃的な最初のセックスをお互い忘れる筈がなかった。つまり、バレンタインのお返しを島田はまだ貰ってない事になる。だからこそ、今回贈ったバレンタインのお返しは、井上の性格ならきちんと返すことが分かっていた。島田は、井上の真面目な性格を逆手にとったのだ。
「お返し、何がいい? やっぱり——」
井上は島田が性行為を望むと予想し、頭の中で勤務表を思い出していた。しかし島田は予想外の事を言ってきた。
「ツーリングしない?」
「え?」
「ダメかな? 井上さんもバイク持ってるよね? どこか景色のいいところ探しておくからさ。それがお返しで、どう?」
井上は困惑した。
「セックスじゃなくていいのかい?」
「それじゃないとダメっていうならそれでもいいよ。けど、お互いきつい仕事してるし、たまには気分転換もいいかなって」
気分転換させてあげたいという気持ちは半分。本当はもっと陽の当たる場所で井上を見て、中身を知りたかったのだ。当の本人はまだ困惑しきっており、なかなか返事を返さなかった。結局、
「答え、少し待ってもらってもいいかな?」
と、残し島田の家を去ってしまった。
井上が去った寝室で、島田は頭を抱えた。
どうすれば井上と近づけるのか、そして何より気になるのが、井上が島田と距離を取ろうとすることだ。男同士のセフレや恋人はすぐに捕まるものではない。貴重な相手だ。しかし、絶対的な関係を持とうとせず、ほぼ偶然が重なり二回目のセックスが実現した。井上が病院に現れなければ二度と会えなかっただろう。
「大人だから大人の関係を望むのかな? いや、でも……」
島田には一つ気がかりな事があった。病院勤務だからこそ分かる人間の表情から感情を読み取る能力。それが井上の普通とは違う何かを捉えていたのだ。そしてドクター前立腺と異名を持つだけはあり、井上の中の緩さにも気づいていた。
「病院で診察した時は、たまに使っているんだろうなってくらいの緩さだった。でも俺とする時は、必ず……」
数刻前に使用していた形跡があるのだ。一度目もすんなりと挿入された。今日も問題なかった。抵抗なく、それでいて内側に残るローションの状態から、井上が誰かに抱かれてからすぐ島田の前に現れているのが分かる。
「恋人持ちだったりして」
それも相まって告白を躊躇ってしまった。嫌な想像が脳内を埋め尽くす。口内のチョコレートはすっかりなくなっていた。
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