テトテヲトッテ ~杖と拳と時々亜人~

更楽 茄子

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闘技大会

その19

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通路へと戻ってきた青年に手を上げ、ハイタッチで迎える少女。

「優勝ですの!。シェイドさんすごいですの!さすがですの!」

少女の語彙力が明らかに減って見えるのは、興奮してる故だろうか?


流れるアナウンスによると、授与式などの式典は後日あるらしい。

通路で待っていた兵士たちに明日城の方に来るように伝えられたので、とりあえず今日のところは解散ということらしい。

一応、城の方で一晩過ごしてもいいと言われたが、それについては「待ってる人がいますので大丈夫ですの」と少女がバッサリ断っていた。



闘技場を出ると露店等はまだまだ客であふれ盛り上がっていた。

「まずはナタリーさんに報告ですのよ、シェイドさん。きっと心配して待ってくれているはずですの、お店などはまた今度の機会に見て回りますの」

そう言う少女だったが、前を通り過ぎる度に視線が露店を追っているのを青年は見逃さなかった。

まだお客で溢れるそんな露店を横目に、二人は教会の方へと向かう。


─────コンコンコン

教会横の宿舎の灯は点いており、扉をノックをするとまだ起きていたナタリーが向かえてくれた。

少女の後ろに立つ青年は黒衣でさっぱり分からないので、心配そうにケガはないかと尋ねるナタリー。

そんなナタリーに少女が優勝したことを伝えると、びっくりして倒れそうになっていた


少女が闘技場であった土産話を色々話し、それをナタリーは楽しそうに聞いている。

しばらくすると話疲れたのか、それとも強気を振舞っていたけど実は心配だったのか、少女は眠気を訴え席を離れる。

教会に向い祈りだけはなんとか済ませると、そのまま長椅子で寝息を立てていた。


そんな少女を見て、ナタリーは一度宿舎の方へ向かうと、二人分の毛布を持って教会に戻る。

青年はナタリーから毛布を受け取ると、教会で寝ている少女に掛けていた。



朝が来て二人は早速城に向った。

闘技大会の受賞に来たと城の門番に伝えると、この場で待つようにと指示される。


しばらくすると城から一人兵士が出てきて、待合室まで案内してくる。

広い待合室に通され、待っている間やる事もないので青年はリュックからリュートを出すと、椅子に座ってポロンポロンと奏で、優しい音色が部屋を包んでいた。


しばらくするとノックをしてさっき案内をしてくれた兵士が、謁見の間まで案内するので着いてくる様に伝えに来た。

青年はリュートをリュックにしまい、いつの間にかソファーで横になって寝ていた少女を起こすと、兵隊に着いて行く。


謁見の間に着くと既に王は玉座に座っており、その横には大臣が立っている。

兵士に導かれるまま王の前まで進むと、二人は膝をつき頭を下げる。


「闘技大会優勝、見事であった。そなたのおかげで我が国の威信は守られた、感謝する」

王がそう言うと、大臣が言葉を繋ぎ青年に称賛の言葉を述べる。

「そして、こちらが大会の優勝賞金となります。おめでとうございます」

二人の方へと歩いてきた大臣により手渡された袋にはぎっしりと金貨が入っており、かなりの重量であった。

青年がそれを鞄に入れ終わると、青年は目の前の大臣に言葉をかける。

「それと、頼んでおいたやつはどうなった?」


玉座に座った王の方に顔を向けると、大きく頷いて話を進める様に指示が出ていたので、大臣はそれを確認をした後に懐から一通の手紙を青年に差し出す。

立派な封筒に入っており、裏には国の印の入った赤い封蝋がしてあるものだった。


「こちらをギルドの方に提出してください。きちんと対応をしていただけると思われます」

手紙を渡し終わると大臣は、軽く会釈をした後に再び王の横へと戻る。


「これにて、闘技大会の受賞を終了とする」

大臣が宣言すると、周りにいた兵士が拍手をする。

拍手が落ち着くと、王が2人に話しかけてきた。


「時に冒険者シェイドよ。良ければ次でも国の指名を受けて戦ってもらえやしないだろうか?」

言われた青年は少女の方を見ると、少女が小さくうなずくと王に向って軽く会釈をした。


「ありがたい申し出なのですが、わたくし達はいつ旅立つか分かりませんので、約束はできませんの。それでは失礼しますの」

言い終わりもう一度会釈をすると、青年の方に振り返る。

青年も王に向けて軽く頭を下げ、その後二人並んで出口から出ていくのであった。



「…振られましたね。受けていただけたのなら色々と心労が減るところだったのですが、残念です」

大臣は王に声をかけると、横からは小さく笑いが漏れる音が聞こえた。

「よい…彼等は冒険者なのだ。例え王といえど、縛る事などは出来ぬ」

断られてどこか満足気な王。


大臣は次回もきちんと結果を出せる、そんな闘士を選出をせねばと心に誓うのであった。

 
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