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闘技大会
その18
しおりを挟む『それでは続きまして、準決勝第2試合を開始します。』
アナウンスが響き選手の呼び込みが始まる。
1人は剣と大きな盾、そして全身に鎧を着込んだ美麗な男性。
名前はバル=モールといった。
鎧は動きやすさを保ちつつ、十分な防御性能も有しているように見える。
盾も一般的に使われる盾よりも一回り大きく、騎士盾と呼ばれるものに近いものであった。
実際、見たまんまの盾で攻撃を防ぎながら距離を詰め、相手を制しながら確実に勝ちを手にしていく堅実なタイプであった。
そしてもう1人はドルガ=ドルガ、暴嵐や不死討伐者の通り名を持つ大男である。
手には異形の両端に斧を付けた両手斧、趣味の悪い鎧を着込んでいた。
戦闘スタイルは極めてシンプルに、一方的に攻め巻き込み倒す、まさに暴嵐といった感じであった。
『それでは第2試合、開始してください!』
試合開始の打鐘が鳴らされた。
「─────勝負あり!。勝者、ドルガ=ドルガ選手!」
試合は準決勝だというのに一方的なものとなった。
盾を構え守るバルであったが、動くことすらできないくらいに一方的に打たれ続け、最後には盾の上から打たれて吹き飛ばされ、そのまま起き上がる事すらできなかった。
試合を終え通路に戻ってきた大男に、今にも飛び掛かりそうに唸る少女。
その少女の横に立つ黒衣の青年をちらりと見ると、軽く笑って大男は控室へと戻っていった。
「…次の試合だけは、悪いが好きにやらせてもらうぞ?」
青年は闘場の方を向いたまま少女に告げる。
「分かりましたの。あの無礼者にがつーんとかましてやるといいですの」
ただ、と言いながら青年の顔を見上げた少女は一応念を押しておく。
「くれぐれもやりすぎではダメなんですのよ?」
はいはいと軽く返事を返す青年。
少しの休憩を挟んで、決勝はすぐに迫っていた。
陽も落ちかけ、闘場の周りには篝火がいくつも置かれていく。
空は赤から黒へと色を変えようとして、気持ち肌寒い感じもする。
闘場には既に2人の闘士が立っていた。
1人はバース国指名枠で参加している大男、ドルガ=ドルガ。
1人はウィズ=ダム国指名枠で突然参加が決まった青年、シェイド。
大男の3分の2ほどの背丈しかなく、しかも青年は格闘家だという。
準決勝であれだけ防御力に特化した盾と鎧をまとった者ですら巻き込む暴嵐相手に、格闘家がどうこう出来るとは全く思えなかった。
観客の誰もがドルガの優勝だなと思っていても、それは仕方のない事だった。
『皆様、お待たせしました。これより闘技大会決勝戦を開始します』
アナウンスが響き観客席を更に盛り上げていく。
選手へのコールが続いてる中、ドルガは青年に話しかけていた。
「しかし、たかがランク1が決勝とはな。オレ以外はカスばっかりだったって事だな。ガッハッハ」
青年は何も答えない。
「けっ…降参なら今の内にしておいたがいいぜ?。わざわざ痛い思いしないで済むからな?」
ガッハッハと下品な笑いをする大男にも青年は何も答えないままだった。
「チッ。見た目のまんまの暗い野郎かよっ」
「私語は控えて─────では、二人とも、構えっ!」
アナウンスのコールも終わり、審判が二人に合図をする。
異形の両手斧を担ぎ上げるように構える大男、自然体に拳だけ軽く握る黒衣の青年。
「─────はじめっ!」
審判の声が響き、大男は武器を振りかぶりながら一気に前に出た。
大男が飛び出すのに反して、青年はそのまま軽く拳を後ろに引く。
次の瞬間、大男がつんのめるようにバランスを崩した。
まるで大男がそこで倒れる事が分かっていたかのように、青年は後ろに引いていた拳をそのまま上に振り上げる。
振り上げられた拳は、大男の倒れてくる顎をきれいに捉えて、そのまま打ち上げた。
打たれた勢いを受け、踏み出していた足を支点にするように、そのまま後ろに倒れ込む大男。
大男が倒れるズーンという音が響く。
何が起こったのか理解の追い付かず、一瞬静寂に包まれる観客席。
審判が急いで駆け寄ると、大男は大の字になって白目をむいていた…本日2度目の瞬殺である。
審判は両手を上げ激しく振りながら続行不能とアピールをした後、青年の方の腕を上げると高らかに宣言する。
「勝者、シェイド選手!!」
審判の宣言が響き、やっと理解が追い付いたのか、観客席のボルテージは最高潮に達する。
まさかの決勝が1発で瞬殺、その上優勝者はランク1だという。
アナウンスが響く中、それが全く消えないほど観客席の盛り上がりは、しばらく収まることないのだった。
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