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最終話 夢
その25
しおりを挟む「やりましたのっ!。ランク2になりましたのよ、わたくし達っ!」
興奮気味な神官の少女が熱く語るのを、その熱に当てられてない淡白な「…そうだな」の一言で返す黒衣の青年。
無事ランクも昇格した二人は、気分良く教会へと戻ってきた。
「─────それで、これがこの教会への寄付ですの」
少女は先ほど受け取った賞金の2/5ほどをナタリーに差し出す。
目の前に差し出された今まで見たこともない大金を見て、シスターのナタリーは流石にこれは受け取れないと返す。
「でも、この教会のボロボロさはかなりのものですの。壁も一部剥げたりしてたりしますのよ?」
少女はその後も、宿舎もそれなりにボロボロだということ、子供たちの安全を考えるなら補修をするべきと強く語る。
「それに、これを受け取ってもらえましたら、わたくし達は自分の家の様に気楽に泊っていけますの」
確かにナタリーにも分かっていた、この教会がかなり傷んでいる事を。
子供たちの安全な日々のためにも、ところどころ雨漏りもしている宿舎も補修するべきだって事も。
でも、あの賞金は闘技大会であの青年が自分の身を削って得た大事なものだ。
それを簡単に受け取る事は出来ない。
「…じゃあ、こっちで勝手に修繕を依頼する、これならいいか?」
突然、後ろにいた青年が新たな提案をしてくる。
「ただ使い勝手や譲れないところはあるだろう。それは勝手に打ち合わせてくれたらいい。どうだ?」
(…そうですか。この子達は絶対に信念を曲げないのですね)
ナタリーは分かりましたと言うと、二人に深く頭を下げた。
「このお金は確かにお預かりします。そして、きちんと教会や宿舎の補修に使わせていただく事を約束します」
そしてとナタリーは言葉を更に繋いでいく。
「ですので、お二人はいつでも教会にに戻ってきてください。宿舎も増築して、あなた達がいつでも泊まれる寝室も用意しますので」
そう二人に笑顔で伝える、ナタリーの目は潤んでいるように見えた。
夜が明け二人並んで宿舎へ毛布を持って来た少女達は、そのまま「ありがとうございましたの」と礼を言うと、早速旅立っていった。
昨晩あの後に話を聞いたところ、自分達の村に一度戻るという。
きっと村にも同じように寄付をするのだろうと思うと、ナタリーはとてもやさしい気持ちになった。
そして宿舎の扉を出るところまで出て、「行ってらっしゃい」と二人を見送る。
ナタリーは昼に買い出しで街に出たら、早速補修をしてくれるお店に顔を出そうと思った。
「ランク2になったと言ったら、ホーガンさんはきっと驚きますの。楽しみですの」
楽しそうに話す少女を見ながら、それなりの相槌を打ちながら青年は思う。
(…出来るだけ厄介に巻き込まれないでくれよ)
極めて利己的な願い、少女に長生きしてほしい。
骸骨王の夢は、まだ終わらない。
=シェイドの章 完=
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