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第二章 プリティ=ドリーマー
その1 序
しおりを挟む「ふん、どうやらお目当ての飛竜はこいつみたいだな」
剣士の青年は目の前の一般的なサイズよりはるかに大きな飛竜に剣を持って対面する。
「カズ!お前はそこの岩陰から俺をサポート。あとミスト!お前は安全な距離を取って魔法を撃ち込んでくれ」
飛竜の攻撃を捌きながら剣士の青年は仲間に指示を飛ばしていく。
「そして格闘家のアンタ!。俺と一緒に飛竜を抑え込むぞ。神官の嬢ちゃんはバックアップを頼む!」
飛竜の餌場と呼ばれるサバンナ状の広場、地名が指すようにここには飛竜が良く飛来する場所である。
倒した飛竜の素材を求める者、飛竜に家畜等の被害を受けないよう駆除する者、クエスト報酬を求めてやってくる者。
モンスターの餌場は、冒険者の稼ぎ場所ともいえる場所なのだった。
───そんな危険な戦場から少し離れた街道横の林の中
「シェイドさん、採れましたわよ!さぁ!」
神官の少女は倒木に座ってリュートを演奏していた黒衣の青年に、採ってきた野草を差し出す。
少女の名はマレット=リラシア─────この町から少し離れた村出身の駆け出し冒険者で、職業は神官。
「これと…あぁこれもか。他はたぶん大丈夫だろう」
シェイドと呼ばれた黒衣の青年は渡された野草を選別し、良かったものだけを袋に詰めた。
青年の名はシェイド─────少女と同じく駆け出しの冒険者で、職業は格闘家。
目元しか見えない黒衣で頭を巻いており、体も黒い服とマントで覆われていて、素肌はほとんど見えない。
「む…まぁ先ほどは4つ違いましたし、今回2個しか違わなかったのは成長ではないですの?」
良く分からないが、ちょっと自慢気な感じで少女は返してきた。
「…そうだな、確かに成長してるな。では足りない分をまた採ってこい」
あきらめた、とも感じれるくらい少女に対しぶっきらぼうに返すと、黒衣の青年はまた倒木に座る。
そして置いていたリュートを手に取る。
「そろそろ夕方だぞ?。遅くなる前に街に戻るから急げよ?」
「わかってますの!。すぐ採ってきますので、おとなしく待ってますの!」
そういうと少女は、少し離れた草むらに戻っていくと、ガサガサとまた野草を探しだした。
黒衣の青年がふと横を見ると、先ほどの野草が何本も生えてるように見える。
「…あの女なりになにか考えがあるんだろう」
軽く嘆息すると青年は、手に持ったリュートを奏でるのだった。
結局、あの後少女が持ってきた野草はまた1個違い、時間も押してるという事で座っていた倒木の横に生えていた野草を鞄に詰めると、街に戻ることにした。
「はい、採れましたの。」
街に戻るとそのまま薬屋に向い、クエストで受注していた先ほどの野草を店主の女性に差し出す。
「えーっと…うん、大丈夫だね。間違った野草は入ってないよ」
店主は慣れた手つきで鞄から野草を取り出し、少女の方に顔を向けると笑顔で告げた。
「…って、これ数が一個多いよ?。あたしが頼んだのは20だったよね?」
店主の女性が言う様に、たしかに机に並べられた野草は21本あった。
「それは、仮に野草が違った時の保険だ。数があってたなら気にせず受け取るといい」
少し離れた位置で壁にもたれかかっていた青年が声を出す。
「そっ、そうですの!。なのでオバサマは気にせずに受け取るといいですの」
少女もそう言ってくれるので、好意を無下にするのもなんだしと女性はありがたく受け取ることにした。
そして少女の差し出したクエスト完了の書類にサインをする。
「ありがとうね、またよろしくね」
店主がそう言って笑顔で見送ると、少女は軽く会釈をして青年と並んで店の扉から出ていった。
冒険者ギルドに到着すると、少女は早速受付に向い先ほどの書類を提出する。
受付のお姉さんはその書類を手早く確認を済ませる。
「はい、確かにクエスト完了を確認しました。ごくろうさまでした、ポイントは加算しておきますね。あと、こちらが報酬となります」
お姉さんは少女の持って来た書類と引き換えに、クエスト報酬金を差し出す。
少女はそのお金を鞄に入れると軽く会釈をして、入り口で待っている黒衣の青年の方に小走りで走っていった。
「あ、そういえばマレットさんのパーティーですけど、そろそろ査定ですよ?。大丈夫ですか?」
受付のお姉さんが少女に声をかけるが、言われた振り返った少女は分かりやすく疑問視を浮かべた顔をしていた。
「村で最初説明があったろう?。ある程度のクエストをこなしてギルドのポイントを貯めないと最悪降格もあるって話が」
横の青年がさりげなくフォローを入れてくれる。
言葉数はそこまで多くないけど、色々少女を気遣ってるのが見えて微笑ましいと、お姉さんは思う。
「でもわたくしたち、それなりにクエストはこなしてるはずですのよ?。今日もまた1つクリアしてますし?」
納得いただけなかったらしく、少女は青年に軽くかみつく。
これはギルドの受付の私の出番でしょう。
「その件なのですが、確かにマレットさんたちには結構な数のクエストをこなしていただいてます。ですが、受けているのは難易度の低い下位の採集クエストばかりなので、獲得ギルドポイントは少ないのですよ」
お姉さんは申し訳なさそうに少女に告げる。
それは仕方ないですわねと少女も納得したようで、青年と一緒に受付に歩いてきた。
「それで、ポイントはどれくらい足りてませんの?」
割り切り早く、少女はお姉さんに尋ねた。
ポイントをそのまま数値で言っても伝わらない予感がしたので、お姉さんはなるべくわかりやすく話す事にする。
「今までのペースでは結構危ないですね。あ、別に足りないからと言ってすぐに降格ってわけでもないのですが、やはり面倒かなと思いますね」
腕を組んでなにやら少女は真面目に悩んでいる感じに見える。
まぁこういうのも受付の楽しみの1つですよねぇと、お姉さんは楽しそうに二人を見つめた。
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