男装麗嬢の麗しき日常

Ryo

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男装麗嬢の麗しき日常

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「ねぇ、アレックス。次の夜会こそは、ドレス姿で参加してちょうだいね!」

「いや……私には仕事がな……」

「あら、アレックスはドレスでだって強いでしょ?」

「もちろん、どんな格好だろうと貴女を守るつもりですよ」

「なら問題ないわね! 約束よ!」



 したり顔で笑みを浮かべるのは、このユグドラ王国の第一王女であるベアトリス・ドール・ユグドラ。


 それに苦笑するのは、誰かを彷彿とさせる燃えるような赤い髪を肩上で切り揃えた、騎士の麗人。

 スラリとした高身長の体型と鋭さのある美しさ、そして帯剣した騎士服がよく似合っているーーその人の名は、アレクサンドラ・ローズワイス。


 正しく赤髪騎士レイスティーブのであり、公爵であった。



「アレックスだって女の子なのですから、たまには着飾りなさいな」

「うーん……そういったことには、あまり興味が……」

「もうっ。そんなこと言っていると、すーぐ行き遅れになってしまうわよ」

「私は貴女に一生仕えるつもりですので、それで構わない」

「あら、アレックスったら……って、そうではなく!」



 サラッとまるで告白しているかのようなアレクサンドラの言葉に、つい照れて流されそうになったベアトリス。

 小声で「お兄様も大変ね……」と呟かれた言葉は、アレクサンドラに届くことなく床に落ちた。


 外見だけでなく、彼女の纏う雰囲気が男性的な為に、アレクサンドラは令嬢にとても人気がある。

 公爵家の令嬢ながら、騎士の家系を受け継いだ彼女のことは、貴族の間で『男装嬢』として有名だった。


 そして、見た目の麗しさだけでなく騎士として剣の腕も確かで、19という若さで第一王女の近衛として仕えていることから、アレクサンドラの優秀さも知れる。


 近衛騎士隊長の娘は、いろんな意味で幼い頃から可愛がられているのであった。



「まぁ、明後日の夜会にはわたくしがアレックスに似合うドレスを用意するわ!」

「いえ、貴女にそのようなことを……」

「私が選びたいのですから、良いのです! むしろ選ばせなさい! あぁ、公爵夫人もお呼びしましょう。前に夫人もあなたのドレス姿をご所望されていたし、普段から着てあげていないのでしょう?」

「そういえば、そのようなことを言っていたか……は動きづらくてな。それに、そういったものはルシルの方が似合う」



 困ったように目尻を下げるアレクサンドラには、弟が3人、妹が1人いる。その末の妹であるルシルは、姉とは違いとても儚げな美少女であった。


 そして女性ながら当然のようにドレスを「女装」と答えるアレクサンドラに、ベアトリスも目尻を下げる。



「もう、ドレスを女装だなんて」

「昔から騎士服これなもんでな……」

「ローズワイス家としては正しい育て方なのかもしれませんけど……公爵夫人も大変ですわね」
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