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「夏祭りと綿あめ」
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八月の夜、町内の神社で夏祭り。
蝉の声がなくなって、かわりに祭囃子が夜の空気を揺らす。
浴衣の人たちで参道は賑やかで、金魚すくいや射的、焼きそばの匂いが混ざってる。
「おー、人いっぱいだな」
隣には浴衣姿の君。学校のときと違ってちょっとはしゃいでた。白地に紺の帯。肩幅とか背の高さが目立って……
「……似合ってる」
心の声が思わず漏れてしまった……
君はちらっとこっちを見て片眉を上げる。
「なに?」
「いや、なんでも……」
胸がドキドキして、慌てて屋台に視線を逸らした。
ふわっと甘い香りがして、綿あめの屋台に目が行った。
「……綿あめだ!」
君が財布を出して注文する。
「食うだろ?」
「え、いいの?」
「さっきのお礼」
「お礼?」
「似合ってるって言ったろ」
不意打ちで、顔が熱くなる。綿あめより先に僕が溶けそうだ。
「ほら、食えよ」
君は綿あめを受け取り、僕に差し出した。
「え……君は?」
「いいから。先に食えよ」
仕方なくパクっと一口、ふわっと甘さが広がって……
舌の上で切なく溶けて消えていく――やっぱこれ、恋に似てる感覚。
君がそっと、口元の砂糖を指で拭ってくれる。
ああ、世界がこの瞬間だけ止まったみたいだった。
蝉の声がなくなって、かわりに祭囃子が夜の空気を揺らす。
浴衣の人たちで参道は賑やかで、金魚すくいや射的、焼きそばの匂いが混ざってる。
「おー、人いっぱいだな」
隣には浴衣姿の君。学校のときと違ってちょっとはしゃいでた。白地に紺の帯。肩幅とか背の高さが目立って……
「……似合ってる」
心の声が思わず漏れてしまった……
君はちらっとこっちを見て片眉を上げる。
「なに?」
「いや、なんでも……」
胸がドキドキして、慌てて屋台に視線を逸らした。
ふわっと甘い香りがして、綿あめの屋台に目が行った。
「……綿あめだ!」
君が財布を出して注文する。
「食うだろ?」
「え、いいの?」
「さっきのお礼」
「お礼?」
「似合ってるって言ったろ」
不意打ちで、顔が熱くなる。綿あめより先に僕が溶けそうだ。
「ほら、食えよ」
君は綿あめを受け取り、僕に差し出した。
「え……君は?」
「いいから。先に食えよ」
仕方なくパクっと一口、ふわっと甘さが広がって……
舌の上で切なく溶けて消えていく――やっぱこれ、恋に似てる感覚。
君がそっと、口元の砂糖を指で拭ってくれる。
ああ、世界がこの瞬間だけ止まったみたいだった。
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