51 / 55
第11章 止まった針は、まだ動く
51.殉職(光希視点)
しおりを挟む
爆破現場は、もう片付けられていた。
焦げた鉄骨も、崩れたコンクリートも、
全部、白いシートの下だ
まるで、何もなかったみたいに。
最初から……誰もいなかったみたいに。
……ふざけんなぁ!!。
「……遺体の損壊が激しく、身元確認は困難。
状況証拠および所持品から判断し……」
会議室の空気は乾いていた。
“殉職”。
その言葉は、軽すぎた。
誰も声を荒げない、誰も机を叩かない。
誰も疑わない。
「……以上で報告を終わります」
終了。
それだけで、瀬戸さんが“過去”になるなんて。
僕は無表情で座っていた。
いつものヒーローの顔。揺れない瞳。
……演技だ。
あの人が?あんな死に方、する?
爆死?似合わなすぎ。
瓦礫の中で、『は? 俺? 爆死? ないない』
とか言って、どこからか出てきそうなタイプ。
……絶対、生きてる
根拠はない。証拠もない。でも、僕にはわかる。
ああ見えて、あの人は知的で、
状況判断が早くて、
何よりしぶとい。
そして……僕に嘘をつくのが、下手だ。
「これ、回収品です」
小さな箱が机に置かれる。
僕はゆっくり開けた。
腕時計。擦れたメモ帳。
落書きの紙。
『今日もルミエールはまぶしー』
なに……バカですか?
なんでこんなもん入れてるんですか?
僕の眉が勝手に動く。喉が詰まる。
怒りか、笑いか、
それとも。
触れようとして、止めた。
触れたら。
それが“遺品”になる気がした。
まだ違う。まだ違うだろ。
廊下に出る。
誰も僕を見ない。
ヒーローは泣かない。
ヒーローは取り乱さない。
ヒーローは前を向く。
そういう役だ。
瀬戸さん、……怒るよ、
なに、勝手に死んだことにしてるんです?
僕に言わずに決めて、僕から逃げるなって!!
拳を強く握りしめる。
これは悲しみじゃない。怒りだ。
瀬戸さんへの。
そして……自分への。
誰もいない執務室。
俺は引き出しを開けて、腕時計を手に取る。
針は止まっていた……爆破の時間。
……なんで止まってるんですか。
止まるなよ。
「……戻ってきてください」
初めて、声が割れた。
ヒーローじゃない。
ただの、瀬戸さんを好きな男の声。
「……ぼくのところへ」
窓の外でサイレンが鳴る。
世界は回っている。
でも、僕と瀬戸さんの時間は、止まったままだ。
……瀬戸さん。
勝手に終わらせないでくださいね……
焦げた鉄骨も、崩れたコンクリートも、
全部、白いシートの下だ
まるで、何もなかったみたいに。
最初から……誰もいなかったみたいに。
……ふざけんなぁ!!。
「……遺体の損壊が激しく、身元確認は困難。
状況証拠および所持品から判断し……」
会議室の空気は乾いていた。
“殉職”。
その言葉は、軽すぎた。
誰も声を荒げない、誰も机を叩かない。
誰も疑わない。
「……以上で報告を終わります」
終了。
それだけで、瀬戸さんが“過去”になるなんて。
僕は無表情で座っていた。
いつものヒーローの顔。揺れない瞳。
……演技だ。
あの人が?あんな死に方、する?
爆死?似合わなすぎ。
瓦礫の中で、『は? 俺? 爆死? ないない』
とか言って、どこからか出てきそうなタイプ。
……絶対、生きてる
根拠はない。証拠もない。でも、僕にはわかる。
ああ見えて、あの人は知的で、
状況判断が早くて、
何よりしぶとい。
そして……僕に嘘をつくのが、下手だ。
「これ、回収品です」
小さな箱が机に置かれる。
僕はゆっくり開けた。
腕時計。擦れたメモ帳。
落書きの紙。
『今日もルミエールはまぶしー』
なに……バカですか?
なんでこんなもん入れてるんですか?
僕の眉が勝手に動く。喉が詰まる。
怒りか、笑いか、
それとも。
触れようとして、止めた。
触れたら。
それが“遺品”になる気がした。
まだ違う。まだ違うだろ。
廊下に出る。
誰も僕を見ない。
ヒーローは泣かない。
ヒーローは取り乱さない。
ヒーローは前を向く。
そういう役だ。
瀬戸さん、……怒るよ、
なに、勝手に死んだことにしてるんです?
僕に言わずに決めて、僕から逃げるなって!!
拳を強く握りしめる。
これは悲しみじゃない。怒りだ。
瀬戸さんへの。
そして……自分への。
誰もいない執務室。
俺は引き出しを開けて、腕時計を手に取る。
針は止まっていた……爆破の時間。
……なんで止まってるんですか。
止まるなよ。
「……戻ってきてください」
初めて、声が割れた。
ヒーローじゃない。
ただの、瀬戸さんを好きな男の声。
「……ぼくのところへ」
窓の外でサイレンが鳴る。
世界は回っている。
でも、僕と瀬戸さんの時間は、止まったままだ。
……瀬戸さん。
勝手に終わらせないでくださいね……
0
あなたにおすすめの小説
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
ただのカフェ店員はカリスマ社長に執着される
クズねこ
BL
「他の客に笑うな。俺だけにして」
俺は、小さなカフェで店員をしている。そのには毎日常連客が訪れる。それはカリスマ社長である一ノ瀬玲央だ。玲央はなぜかただのカフェ店員の俺に執着してくる。
でも、だんだんとカフェ店員と客だけの関係じゃなくなっていって……?
だんだんと距離が近くなっていく執着BL。
週一更新予定です。
ガラスの靴を作ったのは俺ですが、執着されるなんて聞いてません!
或波夏
BL
「探せ!この靴を作った者を!」
***
日々、大量注文に追われるガラス職人、リヨ。
疲労の末倒れた彼が目を開くと、そこには見知らぬ世界が広がっていた。
彼が転移した世界は《ガラス》がキーアイテムになる『シンデレラ』の世界!
リヨは魔女から童話通りの結末に導くため、ガラスの靴を作ってくれと依頼される。
しかし、王子様はなぜかシンデレラではなく、リヨの作ったガラスの靴に夢中になってしまった?!
さらにシンデレラも魔女も何やらリヨに特別な感情を抱いていているようで……?
執着系王子様+訳ありシンデレラ+謎だらけの魔女?×夢に真っ直ぐな職人
ガラス職人リヨによって、童話の歯車が狂い出すーー
※素人調べ、知識のためガラス細工描写は現実とは異なる場合があります。あたたかく見守って頂けると嬉しいです🙇♀️
※受けと女性キャラのカップリングはありません。シンデレラも魔女もワケありです
※執着王子様攻めがメインですが、総受け、愛され要素多分に含みます
不定期更新予定に変更させていただきます。
♡、お気に入り、しおり、エールありがとうございます!とても励みになっております!
感想も頂けると泣いて喜びます!
第13回BL大賞55位!応援ありがとうございました!
周りが幼馴染をヤンデレという(どこが?)
ヨミ
BL
幼馴染 隙杉 天利 (すきすぎ あまり)はヤンデレだが主人公 花畑 水華(はなばた すいか)は全く気づかない所か溺愛されていることにも気付かずに
ただ友達だとしか思われていないと思い込んで悩んでいる超天然鈍感男子
天利に恋愛として好きになって欲しいと頑張るが全然効いていないと思っている。
可愛い(綺麗?)系男子でモテるが天利が男女問わず牽制してるためモテない所か自分が普通以下の顔だと思っている
天利は時折アピールする水華に対して好きすぎて理性の糸が切れそうになるが、なんとか保ち普段から好きすぎで悶え苦しんでいる。
水華はアピールしてるつもりでも普段の天然の部分でそれ以上のことをしているので何しても天然故の行動だと思われてる。
イケメンで物凄くモテるが水華に初めては全て捧げると内心勝手に誓っているが水華としかやりたいと思わないので、どんなに迫られようと見向きもしない、少し女嫌いで女子や興味、どうでもいい人物に対してはすごく冷たい、水華命の水華LOVEで水華のお願いなら何でも叶えようとする
好きになって貰えるよう努力すると同時に好き好きアピールしているが気づかれず何年も続けている内に気づくとヤンデレとかしていた
自分でもヤンデレだと気づいているが治すつもりは微塵も無い
そんな2人の両片思い、もう付き合ってんじゃないのと思うような、じれ焦れイチャラブな恋物語
ヤリチン伯爵令息は年下わんこに囚われ首輪をつけられる
桃瀬さら
BL
「僕のモノになってください」
首輪を持った少年はレオンに首輪をつけた。
レオンは人に誇れるような人生を送ってはこなかった。だからといって、誰かに狙われるようないわれもない。
ストーカーに悩まされていたレある日、ローブを着た不審な人物に出会う。
逃げるローブの人物を追いかけていると、レオンは気絶させられ誘拐されてしまう。
マルセルと名乗った少年はレオンを閉じ込め、痛めつけるでもなくただ日々を過ごすだけ。
そんな毎日にいつしかレオンは安らぎを覚え、純粋なマルセルに毒されていく。
近づいては離れる猫のようなマルセル×囚われるレオン
氷の檻に閉じ込められた月~兄上のすべては、私のもの~
春野ふぶき
BL
『兄上は私のものだ。魂も、肉体も。永遠に―—』
アーヴェント侯爵家の長男ライカは、妾腹として正妻に虐げられ続けてきた。
唯一の救いは、次期当主を目される異母弟カイエンの存在。
美しく聡明で、氷の騎士と呼ばれる彼だけは、常にライカの味方だった。
だが、その愛情は兄を守るものではなく、深く歪んだ執着だった。
母を排除し、兄を囲い込み、逃げれば鎖で捕らえる。
そしてついに、ライカの心身は限界に追い詰められていく。
——カイエンが下す「最後の選択」とは。
ふたりが辿る結末は、幸福か、それとも狂気の果てか。
目が合っちゃった!!
瀬名
BL
楽観的で悩みなんてない俺の世界には好きなもので溢れている。
そんな俺の新しい好きは同じ学校の先輩!
顔が良すぎる先輩は眼福で毎日先輩をこっそり眺める日々。
しかし眺めるだけで幸せだったのに目が合っちゃった!!
顔が良すぎる先輩と楽観的で小動物系な後輩の高校生二人の溺愛物語です
※高校の授業の内容を覚えていないので適当です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる