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鬼峰家の血筋
淫気
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凛冴は奮闘していた。霊剣を振るい、幾度も魍魎の肉体を切り裂いた。だが――。
(手ごたえはある。あるのに)
周囲には切り捨てられた触手や太い触腕がのたうち回っており、悪臭を放つ黒い液体が腐葉土に沁み込んでいる。
それでも、相対する魍魎は凛冴をからかっているかのような動作を繰り返し、余裕の態度を崩さない。常人であれば正気を失いかねない怪奇な哄笑を、凛冴の意識下に直接浴びせていた。
【予想以上だ。なるほど、我々の欲するものを持っているのかもしれぬ】
凛冴は焦燥感にかられていた。ここで祓わなければ、またつむぎのような犠牲者が出てしまう。そう、今にも誰かが毒牙にかけられるかもしれないのだ。
凛冴の脳裡に契の姿が焼きついていた。それが、調査に当たる前に見たつむぎの生前の写真とダブって見えた。
【だが、まだまだ未熟。四百年前の御津國には到底及ばぬわ】
(四百年前だって?)
不意に、切られた触手が地面から屹立し、凛冴の胴を目掛けて先端を突き出してきた。
凛冴は地を蹴って回避に専念する。散乱している触手の群れが次々に獲物を狙う。
【逃げ場はないぞ】
空を切る音。凛冴は霊剣を翻し、直進してきた触腕を切り払った。しかし――。
「あっ……!」
腹部をかすめる触手。宙を舞う鮮血。落ち葉の中に身を潜めていた魍魎の肉の一片が強い瞬発力で以て飛びかかり、鋭く尖らせた先端部分で凛冴の衣服を引き裂き、傷を負わせていた。
凛冴は急いで距離をとり、相手の出方を伺う。途端、腹部に激痛が奔る。傷つけられた横腹から出血しており、零れ落ちた血液が落ち葉に染みを作っていた。
凛冴は苦痛に表情をゆがめた。長い戦闘で体力も衰えており、息も絶え絶えといった有様だった。
魍魎はわざとらしく、ゆっくりと距離を詰めてくる。凛冴としては、切り落とした肉片すべてが下から襲い掛かってくる恐れがあったため、四方に注意を向け続けなければならなかった。
戦局は明らかに不利だった。意思を持った敵は一個の魍魎であると思われたが、同時に全方位から凛冴を包囲している。辛うじて保っている闘志が折れたら最後、即座に魍魎の餌食となるのは明白だった。
【案ずるな、殺しはせぬ。お前ほどの霊力を持った雌は希少だ】
魍魎から送られてくる念波は、人間の肉欲をかきたてようとする悪意に満ちた卑猥なものだった。
【お前の動揺の元は、これだろう?】
全体に靄のかかっている曖昧模糊とした心象風景が浮かび上がり、徐々に明朗な形を帯び始めた。
「な、なにを見せようというの?」
魍魎は事象で以て凛冴の問いに応えて見せる。露わになった光景は、書斎と思われる一室だった。おそらく、鬼峰家の館の内部だろう。
書斎の座椅子に腰を下ろし、何やら羊皮紙と思しき物に筆記している人物の姿。鬼峰肇慶だった。肇慶が記している文章は朧げな輪郭となっていて、内容の判別はできない。
その肇慶の傍らにいるもう一人の人物――。
「あ……」
凛冴の意識が鳴動する。凛冴の心理を困惑させたのは、契だった。それも、主である肇慶にかしずく雌としての姿。
契が身にまとっているものは、辛うじてメイドらしさを主張しているホワイトブリムと、下半身を隠しきれていないオープンショーツのみであり、彼女は全裸も同然の出で立ちをしていた。
契の行為もまた、男に対する煽情的な奉仕であった。契は肇慶のズボンを彼の太ももの辺りまで下げ、男性器を露出させていた。
肇慶は無表情を装っていたが、その面の裏側にある下卑た感情は、凛冴にとっても容易に想像できた。
「勃たせてみろ」
肇慶の物言いは些か乱暴だった。契は平伏し、恐る恐るといった様子で主の男根を両手で包み込む。そのまま、ゆっくりと手を動かして刺激を与えようとした。
「舐めるんだ。教わっているはずだぞ」
契は申し訳なさそうに謝罪し、酷く赤面した顔を亀頭へと近づけた。舌を出し、ペロペロと舐める。
「やめて……」
凛冴が魍魎に向かって言った。
【何故だ? これはあの雌が望んでいる行為だぞ】
今や魍魎の見せている情景が凛冴の五感を覆いつくしており、周りに実在しているあらゆるものの位置関係が把握できない状況と化している。凛冴は完全に魍魎の術中に陥っていた。
この光景が魍魎の見せている幻覚に過ぎないのかどうかは判別できない。しかし、凛冴は、今、現実に起こっている出来事の映像を直接見せられているのだと感づいていた。だが、凛冴は己の直感を否定したい願望を抱いてもいる。
肇慶が契の頬を叩いた。そのうえで、彼女の不器用ぶりを叱る。契は何度も謝りながら、熱心に亀頭を舐めつづける。
(どうしてあんなに尽くせるんだろう。あの男は、ただ人を見下して、辱めることしかしていないのに)
契の眼は恍惚としており――凛冴には正気を失っている風に見えた。事実、契は主を喜ばすこと以外考えられない精神状態となっている。
肇慶の指示で、契は亀頭を舐める行為を中断した。今度は口を大きく開け、徐々に勃起し始めていたペニスを、口全体で吸い込むようにして咥えこんだ。
「いいぞ、契」
今度は褒めて見せる肇慶。契は鼓舞されたかのように勢いづく。
「う……」
凛冴は契の痴態に見入っている自分に気づき、思わず赤面した。淫靡な情景を振り払おうと何度も頭を振ったが、凛冴を拘束する魍魎にとっては無駄な抵抗に過ぎない。
【熱量は、なかなかのものだが、心が弱いな。御津國の娘よ、生娘であろう?】
「な、なにを言って……」
【お前も、時機にこうなる】
魍魎の触手が破けている凛冴の衣服の隙間まから内側に入り込み、いやらしく肌をさする。凛冴は悪態をついたが、魍魎は含み笑いで応える。
【我が再臨するに相応しい器だ。じっくりと熟成させねばな】
今や、凛冴は心と肉体の双方から、敵の術中に陥っていた。
契は熱に浮かされたまま、小夜子と一緒に利用している相部屋をそっと抜け出し、人の目を避けながら、肇慶のいる書斎へ向かった。
契が書斎に入ると、肇慶はさも驚いたような表情をして見せた。もっとも、肇慶は契がここに来るように仕向けていたので、内心ほくそ笑んでいたが。
「何の用事かな?」
肇慶は契に対して、わざとらしくそう詰問した。
「あの……ご奉仕したくて、参りました」
契自身、小夜子に休んでいるよう言われたことも忘れ、本来与えられている仕事もせずに何故こんな大それたことをしているのかわからなかった。ただ、熱で朦朧としている意識が、何か逆らい難い存在によって突き動かされていると、何となく感じていた。
「ふん。朝の職務も放置してか。契が……そうしたいだけじゃないのかね?」
どぎまぎとする契。肇慶は笑いをこらえるので腹部が苦しいくらいだった。
「でも……その。昨晩は、途中で気を失ってしまって……無礼を働いてしまったので、何とか、埋め合わせをしたいと思いまして」
契自身、自分が何を言っているのか理解できていない。ただ、異様に火照ってしまっている身体を鎮めなければ、耐えられない衝動にかられている。
「なるほど、それはそれは……殊勝な心がけだな」
肇慶もまた、早く契の奉仕とやらを堪能したくて我慢できなくなっていた。
それから肇慶は、契に裸になるよう命令する。契は了承し、言われた通りに服を脱ぎ始めた。
「おっと、それは外さなくてもよい」
屋敷のメイドたちが使っている、素朴ながらも綺麗に織り込まれているホワイトブリム。それと、昨晩、契が自室へ帰る前に穿いておくように命じた、あからさまに男性を悦ばせることを目的としているオープンショーツ。それらのみを身につけた契の姿は肇慶にとって、完全な全裸よりも魅惑的に映ったのである。
その後、契は肇慶の指示通りにフェラチオ行為を続けた。
「契、そろそろ」
契は肇慶の欲しているものを、本能的に察した。
「はい……」
契はオープンショーツを太ももに引っ掛けたまま、裸の尻を床にペタリと押し付けた。両足を大きく開脚し、縮こまった陰毛に覆われている女性器を露わにする。そのまま、契は右手で自らの女陰を広げ、珊瑚色の肉の層が重なっている卑猥な唇の奥を、肇慶に見せつけた。
「綺麗だな」
肇慶は舌なめずりをしたまま、契の前に仁王立ちとなった。
「あの……旦那様。熱いんです。熱くて……熱くて……苦しいんです」
契は全身に滝のような汗をかいている。上気した身体からは仄かな湯気が立ち込め、顔は高熱も相まって興奮の色に染まっている。とても正常な状態とは思えない。
「そうかそうか。もう我慢できないんだな」
「は、はい。お願い致します、旦那様のお情けをください」
「よし、いいだろう。可愛い契にそこまで言われてしまってはな」
汗に混じって、壊れかかった噴水のようにどぷどぷと濁った淫水を吹き出している蜜壺。肇慶は契を押し倒し、いきり立った男根を一気に突き入れた。
「ふきゃッ。あ……あ……あふッ、おふッ……あ、あああぁん!」
契の嬌声が響き渡った。
脳内を埋め尽くそうとする、淫欲に狂った声色。凛冴は自分の身体が強い熱を帯び始めているのに困惑していた。
【我慢できなくなってきたかな?】
「何を莫迦な!」
凛冴は相手の発言を切り捨てる勢いで言い放ったが、既に四肢を拘束されている彼女に対して、魍魎は高笑いで応えた。
【では、雌の肉に直接聞いてみるとしよう】
捕らわれた獲物を弄ぶ触手がぐにゃぐにゃと蠢き合いながら、凛冴の身体のより敏感な部分を責める。
「あ……ああっ!」
自分のもらした声に、驚く凛冴。
(なに? これじゃあ、あの子と同じ)
己の声が、快楽に溺れさせられている契と酷似しているのだと知り、凛冴は狼狽えていた。
【ほう。御津圀の娘の敏感な肉は、昔と変わらぬな】
「やめて……やめて……くれ」
凛冴の声は、もはや懇願に近い。魍魎は凛冴の訴えを聞き流したうえで、凛冴の陰部に触手を滑り込ませてきた。
「う……あっ!」
【まだ中に入れてはおらぬぞ?】
凛冴の女性器が、繊細な触手の先端で繰り返しこすられる。その度に、凛冴は小動物のような鳴き声を上げてしまった。
【では、御津國の娘。お前の雌の肉、我が再臨の贄となって貰おう……悦ぶが良い】
触手をかき分け、肉棒とかした触腕が凛冴の秘所にあてがわれる。
「やめろぉ!」
【グググ。これで四百年の戦いに終止符がうたれるのだ……】
その刹那。一陣の煌きが飛翔し、疾風の如き斬撃が一閃された。凛冴を拘束している触腕が切り落とされ、周囲に飛び散った。
凛冴の意識を支配していた空間も切り裂かれ、本来の雑木林の光景が視界に戻ってくる。魍魎から解放された凛冴は、落ち葉の堆積した地面の上に投げ出され、半裸の姿のまま転がった。
急いで上体を起こした凛冴は、あの霊剣と化した木の枝を口に咥えている、一匹の三毛猫の姿を直視した。
「あ、アイネ!」
アイネは咥えた霊剣を更に一閃させ、同時に巻き起こった凄まじい霊的な斬撃の余波が、なおも凛冴たちを襲おうとしていた魍魎の肉片の群れをまとめて吹き飛ばした。
霊剣を構えたまま、蠢く魍魎の本体を睨みつけるアイネ。魍魎はアイネと対峙したまま、散らばっている肉片を自身へと収束させていく。
【ググ。邪魔が入ったな。ここは引き下がるとしよう】
魍魎の肉体が徐々に地中へ溶け込むようにして消えていく。
【……御津國の娘よ。精々、力をつけておくがよい】
魍魎の姿が完全に消え去った。
暫しの間、凛冴は魍魎の消えた地面を茫然と見つめていた。やがて、はっとなってアイネに向き直る。
(今度は、本物のアイネ? ……アイネが、わたしを助けてくれた?)
何と言ったら良いか……逡巡している凛冴。アイネは咥えていた霊剣を地面に落とし、ため息をつくような仕草をして見せた。
《やれやれ。信用されていないようだねぇ。まったく、寂しいよ、あたしは》
ケラケラと笑って見せるアイネ。やはり本物のアイネだ――凛冴は確信した。
《あんたの成長を見守るのが今のあたしの役割なんだけどねぇ。今回は本当に危なかったから、ついつい猫の手を貸しちまったのさ。……ま、あたしの姿に成り済ましたあいつのやり口が気に喰わなかったのもあるけどね》
凛冴は己の乱れた服装を正しながら、落ち葉の上に転がっている木の枝を拾い上げた。枝はまだ霊力を帯びてはいたが、霊剣と呼べるほどのものではなくなっていた。
《凛冴、服ボロボロだね。血もついているし。だから、制服で仕事場に来るなんてやめとけって言ったんだよ》
「……これが、一番落ち着くから。それに、着替えは用意してある」
いつもの調子を取り戻した凛冴に対して、アイネは満足げな様子だった。
そのまま、館のある方向へ引き返すアイネ。凛冴はその後ろ姿を黙って見つめていたが、途中で思い直し、アイネの傍へ駆け寄ってから声をかけた。
「あの……アイネ」
《うん?》
立ち止まるアイネ。凛冴は気を落ち着かせてから言った。
「さっきは……ありがとう」
アイネはもう一度、笑って見せた。
《……今回は助けたけど、今度もそうするとは思わないことだねぇ。あたしはあんたのお守りってわけじゃないからさ》
「うん、わかってる」
《じゃ、一旦、戻ろうかね》
そのまま凛冴とアイネは一緒に連れ立って、館の方へ歩いていった。
(手ごたえはある。あるのに)
周囲には切り捨てられた触手や太い触腕がのたうち回っており、悪臭を放つ黒い液体が腐葉土に沁み込んでいる。
それでも、相対する魍魎は凛冴をからかっているかのような動作を繰り返し、余裕の態度を崩さない。常人であれば正気を失いかねない怪奇な哄笑を、凛冴の意識下に直接浴びせていた。
【予想以上だ。なるほど、我々の欲するものを持っているのかもしれぬ】
凛冴は焦燥感にかられていた。ここで祓わなければ、またつむぎのような犠牲者が出てしまう。そう、今にも誰かが毒牙にかけられるかもしれないのだ。
凛冴の脳裡に契の姿が焼きついていた。それが、調査に当たる前に見たつむぎの生前の写真とダブって見えた。
【だが、まだまだ未熟。四百年前の御津國には到底及ばぬわ】
(四百年前だって?)
不意に、切られた触手が地面から屹立し、凛冴の胴を目掛けて先端を突き出してきた。
凛冴は地を蹴って回避に専念する。散乱している触手の群れが次々に獲物を狙う。
【逃げ場はないぞ】
空を切る音。凛冴は霊剣を翻し、直進してきた触腕を切り払った。しかし――。
「あっ……!」
腹部をかすめる触手。宙を舞う鮮血。落ち葉の中に身を潜めていた魍魎の肉の一片が強い瞬発力で以て飛びかかり、鋭く尖らせた先端部分で凛冴の衣服を引き裂き、傷を負わせていた。
凛冴は急いで距離をとり、相手の出方を伺う。途端、腹部に激痛が奔る。傷つけられた横腹から出血しており、零れ落ちた血液が落ち葉に染みを作っていた。
凛冴は苦痛に表情をゆがめた。長い戦闘で体力も衰えており、息も絶え絶えといった有様だった。
魍魎はわざとらしく、ゆっくりと距離を詰めてくる。凛冴としては、切り落とした肉片すべてが下から襲い掛かってくる恐れがあったため、四方に注意を向け続けなければならなかった。
戦局は明らかに不利だった。意思を持った敵は一個の魍魎であると思われたが、同時に全方位から凛冴を包囲している。辛うじて保っている闘志が折れたら最後、即座に魍魎の餌食となるのは明白だった。
【案ずるな、殺しはせぬ。お前ほどの霊力を持った雌は希少だ】
魍魎から送られてくる念波は、人間の肉欲をかきたてようとする悪意に満ちた卑猥なものだった。
【お前の動揺の元は、これだろう?】
全体に靄のかかっている曖昧模糊とした心象風景が浮かび上がり、徐々に明朗な形を帯び始めた。
「な、なにを見せようというの?」
魍魎は事象で以て凛冴の問いに応えて見せる。露わになった光景は、書斎と思われる一室だった。おそらく、鬼峰家の館の内部だろう。
書斎の座椅子に腰を下ろし、何やら羊皮紙と思しき物に筆記している人物の姿。鬼峰肇慶だった。肇慶が記している文章は朧げな輪郭となっていて、内容の判別はできない。
その肇慶の傍らにいるもう一人の人物――。
「あ……」
凛冴の意識が鳴動する。凛冴の心理を困惑させたのは、契だった。それも、主である肇慶にかしずく雌としての姿。
契が身にまとっているものは、辛うじてメイドらしさを主張しているホワイトブリムと、下半身を隠しきれていないオープンショーツのみであり、彼女は全裸も同然の出で立ちをしていた。
契の行為もまた、男に対する煽情的な奉仕であった。契は肇慶のズボンを彼の太ももの辺りまで下げ、男性器を露出させていた。
肇慶は無表情を装っていたが、その面の裏側にある下卑た感情は、凛冴にとっても容易に想像できた。
「勃たせてみろ」
肇慶の物言いは些か乱暴だった。契は平伏し、恐る恐るといった様子で主の男根を両手で包み込む。そのまま、ゆっくりと手を動かして刺激を与えようとした。
「舐めるんだ。教わっているはずだぞ」
契は申し訳なさそうに謝罪し、酷く赤面した顔を亀頭へと近づけた。舌を出し、ペロペロと舐める。
「やめて……」
凛冴が魍魎に向かって言った。
【何故だ? これはあの雌が望んでいる行為だぞ】
今や魍魎の見せている情景が凛冴の五感を覆いつくしており、周りに実在しているあらゆるものの位置関係が把握できない状況と化している。凛冴は完全に魍魎の術中に陥っていた。
この光景が魍魎の見せている幻覚に過ぎないのかどうかは判別できない。しかし、凛冴は、今、現実に起こっている出来事の映像を直接見せられているのだと感づいていた。だが、凛冴は己の直感を否定したい願望を抱いてもいる。
肇慶が契の頬を叩いた。そのうえで、彼女の不器用ぶりを叱る。契は何度も謝りながら、熱心に亀頭を舐めつづける。
(どうしてあんなに尽くせるんだろう。あの男は、ただ人を見下して、辱めることしかしていないのに)
契の眼は恍惚としており――凛冴には正気を失っている風に見えた。事実、契は主を喜ばすこと以外考えられない精神状態となっている。
肇慶の指示で、契は亀頭を舐める行為を中断した。今度は口を大きく開け、徐々に勃起し始めていたペニスを、口全体で吸い込むようにして咥えこんだ。
「いいぞ、契」
今度は褒めて見せる肇慶。契は鼓舞されたかのように勢いづく。
「う……」
凛冴は契の痴態に見入っている自分に気づき、思わず赤面した。淫靡な情景を振り払おうと何度も頭を振ったが、凛冴を拘束する魍魎にとっては無駄な抵抗に過ぎない。
【熱量は、なかなかのものだが、心が弱いな。御津國の娘よ、生娘であろう?】
「な、なにを言って……」
【お前も、時機にこうなる】
魍魎の触手が破けている凛冴の衣服の隙間まから内側に入り込み、いやらしく肌をさする。凛冴は悪態をついたが、魍魎は含み笑いで応える。
【我が再臨するに相応しい器だ。じっくりと熟成させねばな】
今や、凛冴は心と肉体の双方から、敵の術中に陥っていた。
契は熱に浮かされたまま、小夜子と一緒に利用している相部屋をそっと抜け出し、人の目を避けながら、肇慶のいる書斎へ向かった。
契が書斎に入ると、肇慶はさも驚いたような表情をして見せた。もっとも、肇慶は契がここに来るように仕向けていたので、内心ほくそ笑んでいたが。
「何の用事かな?」
肇慶は契に対して、わざとらしくそう詰問した。
「あの……ご奉仕したくて、参りました」
契自身、小夜子に休んでいるよう言われたことも忘れ、本来与えられている仕事もせずに何故こんな大それたことをしているのかわからなかった。ただ、熱で朦朧としている意識が、何か逆らい難い存在によって突き動かされていると、何となく感じていた。
「ふん。朝の職務も放置してか。契が……そうしたいだけじゃないのかね?」
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「でも……その。昨晩は、途中で気を失ってしまって……無礼を働いてしまったので、何とか、埋め合わせをしたいと思いまして」
契自身、自分が何を言っているのか理解できていない。ただ、異様に火照ってしまっている身体を鎮めなければ、耐えられない衝動にかられている。
「なるほど、それはそれは……殊勝な心がけだな」
肇慶もまた、早く契の奉仕とやらを堪能したくて我慢できなくなっていた。
それから肇慶は、契に裸になるよう命令する。契は了承し、言われた通りに服を脱ぎ始めた。
「おっと、それは外さなくてもよい」
屋敷のメイドたちが使っている、素朴ながらも綺麗に織り込まれているホワイトブリム。それと、昨晩、契が自室へ帰る前に穿いておくように命じた、あからさまに男性を悦ばせることを目的としているオープンショーツ。それらのみを身につけた契の姿は肇慶にとって、完全な全裸よりも魅惑的に映ったのである。
その後、契は肇慶の指示通りにフェラチオ行為を続けた。
「契、そろそろ」
契は肇慶の欲しているものを、本能的に察した。
「はい……」
契はオープンショーツを太ももに引っ掛けたまま、裸の尻を床にペタリと押し付けた。両足を大きく開脚し、縮こまった陰毛に覆われている女性器を露わにする。そのまま、契は右手で自らの女陰を広げ、珊瑚色の肉の層が重なっている卑猥な唇の奥を、肇慶に見せつけた。
「綺麗だな」
肇慶は舌なめずりをしたまま、契の前に仁王立ちとなった。
「あの……旦那様。熱いんです。熱くて……熱くて……苦しいんです」
契は全身に滝のような汗をかいている。上気した身体からは仄かな湯気が立ち込め、顔は高熱も相まって興奮の色に染まっている。とても正常な状態とは思えない。
「そうかそうか。もう我慢できないんだな」
「は、はい。お願い致します、旦那様のお情けをください」
「よし、いいだろう。可愛い契にそこまで言われてしまってはな」
汗に混じって、壊れかかった噴水のようにどぷどぷと濁った淫水を吹き出している蜜壺。肇慶は契を押し倒し、いきり立った男根を一気に突き入れた。
「ふきゃッ。あ……あ……あふッ、おふッ……あ、あああぁん!」
契の嬌声が響き渡った。
脳内を埋め尽くそうとする、淫欲に狂った声色。凛冴は自分の身体が強い熱を帯び始めているのに困惑していた。
【我慢できなくなってきたかな?】
「何を莫迦な!」
凛冴は相手の発言を切り捨てる勢いで言い放ったが、既に四肢を拘束されている彼女に対して、魍魎は高笑いで応えた。
【では、雌の肉に直接聞いてみるとしよう】
捕らわれた獲物を弄ぶ触手がぐにゃぐにゃと蠢き合いながら、凛冴の身体のより敏感な部分を責める。
「あ……ああっ!」
自分のもらした声に、驚く凛冴。
(なに? これじゃあ、あの子と同じ)
己の声が、快楽に溺れさせられている契と酷似しているのだと知り、凛冴は狼狽えていた。
【ほう。御津圀の娘の敏感な肉は、昔と変わらぬな】
「やめて……やめて……くれ」
凛冴の声は、もはや懇願に近い。魍魎は凛冴の訴えを聞き流したうえで、凛冴の陰部に触手を滑り込ませてきた。
「う……あっ!」
【まだ中に入れてはおらぬぞ?】
凛冴の女性器が、繊細な触手の先端で繰り返しこすられる。その度に、凛冴は小動物のような鳴き声を上げてしまった。
【では、御津國の娘。お前の雌の肉、我が再臨の贄となって貰おう……悦ぶが良い】
触手をかき分け、肉棒とかした触腕が凛冴の秘所にあてがわれる。
「やめろぉ!」
【グググ。これで四百年の戦いに終止符がうたれるのだ……】
その刹那。一陣の煌きが飛翔し、疾風の如き斬撃が一閃された。凛冴を拘束している触腕が切り落とされ、周囲に飛び散った。
凛冴の意識を支配していた空間も切り裂かれ、本来の雑木林の光景が視界に戻ってくる。魍魎から解放された凛冴は、落ち葉の堆積した地面の上に投げ出され、半裸の姿のまま転がった。
急いで上体を起こした凛冴は、あの霊剣と化した木の枝を口に咥えている、一匹の三毛猫の姿を直視した。
「あ、アイネ!」
アイネは咥えた霊剣を更に一閃させ、同時に巻き起こった凄まじい霊的な斬撃の余波が、なおも凛冴たちを襲おうとしていた魍魎の肉片の群れをまとめて吹き飛ばした。
霊剣を構えたまま、蠢く魍魎の本体を睨みつけるアイネ。魍魎はアイネと対峙したまま、散らばっている肉片を自身へと収束させていく。
【ググ。邪魔が入ったな。ここは引き下がるとしよう】
魍魎の肉体が徐々に地中へ溶け込むようにして消えていく。
【……御津國の娘よ。精々、力をつけておくがよい】
魍魎の姿が完全に消え去った。
暫しの間、凛冴は魍魎の消えた地面を茫然と見つめていた。やがて、はっとなってアイネに向き直る。
(今度は、本物のアイネ? ……アイネが、わたしを助けてくれた?)
何と言ったら良いか……逡巡している凛冴。アイネは咥えていた霊剣を地面に落とし、ため息をつくような仕草をして見せた。
《やれやれ。信用されていないようだねぇ。まったく、寂しいよ、あたしは》
ケラケラと笑って見せるアイネ。やはり本物のアイネだ――凛冴は確信した。
《あんたの成長を見守るのが今のあたしの役割なんだけどねぇ。今回は本当に危なかったから、ついつい猫の手を貸しちまったのさ。……ま、あたしの姿に成り済ましたあいつのやり口が気に喰わなかったのもあるけどね》
凛冴は己の乱れた服装を正しながら、落ち葉の上に転がっている木の枝を拾い上げた。枝はまだ霊力を帯びてはいたが、霊剣と呼べるほどのものではなくなっていた。
《凛冴、服ボロボロだね。血もついているし。だから、制服で仕事場に来るなんてやめとけって言ったんだよ》
「……これが、一番落ち着くから。それに、着替えは用意してある」
いつもの調子を取り戻した凛冴に対して、アイネは満足げな様子だった。
そのまま、館のある方向へ引き返すアイネ。凛冴はその後ろ姿を黙って見つめていたが、途中で思い直し、アイネの傍へ駆け寄ってから声をかけた。
「あの……アイネ」
《うん?》
立ち止まるアイネ。凛冴は気を落ち着かせてから言った。
「さっきは……ありがとう」
アイネはもう一度、笑って見せた。
《……今回は助けたけど、今度もそうするとは思わないことだねぇ。あたしはあんたのお守りってわけじゃないからさ》
「うん、わかってる」
《じゃ、一旦、戻ろうかね》
そのまま凛冴とアイネは一緒に連れ立って、館の方へ歩いていった。
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