舞姫〜魔導を行く者〜

雨宮葵

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第1章 謎の魔導師

第4話 動き出す者

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「レイナ様」
 声をかけてきたのは栗色の毛先が綺麗に巻かれた、髪と同じ色の瞳をしている女性。
「アイナさん?」
 彼女はアイナ・ルシアーナ。私の兄の従者をしている、聖議院の断罪者ジャッジメントの幹部の一人だ。
「ご無沙汰しております、レイナ様」
「なぜこちらに?」
「レイナ様がこちらにいらしていると耳にしたので、お待ちしておりました」
 つまり私に用があると。
「それで、ご用件は?」
「あちらのカフェで話しましょう」
「はい」
 訪れたのは聖議院の近くにあるカフェ。
「いらっしゃいませ。ご注文をお伺い致します」
「私はアイスコーヒーを」
「アイスオーレを」
「かしこまりました」
 そう言って店員さんは下がっていった。
「そういえばコウの姿が見えませんが、一緒ではないのですか?」
「……あれから会っていないので。今どこにいるのかもわかりません。返信もなくて」
 あれからもう2年か……。
「もう自分の元には戻ってこないかもしれないと、お考えなのですか?」
「それは……」
「彼がレイナ様の従者をやめることはないと思いますよ。きっとまた修行しているのでしょう。ちゃんと隣に立てると自信を持てたら戻ってきますよ」
「さすがは兄弟ですね。私よりもコウのことがわかってる」
 同じ兄妹でも、私は兄のことが全然わからないけど。
「兄弟だからと言うよりは同じ立場だから、でしょうか。あなたとコウが過ごしてきた時間はきっと誰よりも長い。そこで生まれた信頼や絆はそう簡単に壊れるものではありません。それにコウは、レイナ様のことが大好きですから、レイナ様が離れてと言っても離れないと思いますよ」
「だと、いいのですが……」
「ですが意外でした」
「何がですか?」
「レイナ様がコウがいなくて寂しいと思っていることがです」
「なっ……!?」
「それをコウが知ったら喜びますね」
「寂しいなんて思ってませんから!」
「ふふふ、顔が寂しいと言っていましたよ」
 そんな顔してた!?
「お待たせ致しました。アイスコーヒーとアイスオーレになります」
「ありがとうございます」
 注文の品を置き、店員さんは下がっていった。
 今……。
「お話すると喉が渇きますね」
「そうですね」
 私たちはそれぞれ飲み物を口にした。
 やっぱりここのカフェオレ美味しい。聖議院にいた頃はよく通ったなあ。
「さて、それでは本題に入らせていただきます」
「はい」
 あっ、雰囲気が変わった。完全に仕事モードだ。
「今回は主からの伝言をお伝えに上がりました。動き出しているから気を抜くな、と」
 お兄様も心配性だな。それとも信用されてないのだろうか。
「兄にお伝えください。気を抜くつもりは一切ないのでご安心ください、と」
「かしこまりました。それからもう一つ。動き出している根拠についてですが」
「はい」
「数日前、ヒドゥンに依頼が来ました。レイナという名の青色の瞳をしている女性を探してほしいと。年齢は現在19歳、2歳離れた兄がいると」
「あの、そんな機密情報外部に漏らしていいんですか? いくら魔法を使っているとはいえ」
「あら、気づかれてましたか。さすがはレイナ様」
 ここに入る時に極薄の結界を張り、店員さんが飲み物を持ってきたあとすぐに全系統魔法の無音サイレントと口の動きで会話がわからないようにこの店にいる者を対象に幻覚を発動している。しかもどれも無詠唱でだ。さすがはナンバー10th。
「というか、なぜヒドゥンの情報をアイナさんが持ってるんですか? 極秘ですし、知っているのは断罪者ジャッジメントの中ではトップ2だけですよね」
「それは秘密です」
 そう言いにこっと微笑むアイナさん。
「主が言うには、気づかれるのは構わないが、ヒントを与える必要はないとのことです」
「最初からそういう予定でしたからね」
「そうなのですか?」
「はい。タイムリミットは8年後だと言われてましたから。彼が表舞台に立つまでに力を手に入れろと」
「なるほど。ではレイナ様、私はこれで失礼致します」
「はい。わざわざありがとうございました」
 アイナさんと別れ、私はしばらくカフェでゆっくりしていた。
 私たちを見張っていた者は3人。1人はアイナさんを追い、残りは私に張り付いてる。ここしばらく監視が続いてるからまさかとは思ったけど、だいぶこちらに近づいてきてる。だが彼はとても慎重だ。リスクは最小限に、決定的な証拠を掴んでからじゃないと動かない。だから今証拠を見つけ出そうと必死なのか。彼とのご対面は、もう少し先になるかな。
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