18 / 84
一線の越え方
11-3
しおりを挟む
「ああ、そうだ。お前が言う通り俺は変態だ。男が相手でもこんなに欲情出来るしな」
言いながら彼の足に硬くなった自分のものを擦り付けると、直人が怯えたように身を固くする。
「怖いか?」
直人の怯えを含んだ羞恥の顔が堪らなくて、わざと耳元で囁いた。
てっきり何らかの罵声が返ってくると思っていたのに……。
「気、持ちも、な……い奴と、んなこと、したくねぇっ! 俺は逸、樹さんのおもちゃじゃ、ない!」
予想外の言葉が返ってきて、俺は動きを封じられてしまった。
(気持ちもない奴、か……)
その言葉がグサリと胸に突き刺さった気がして、俺はそれ以上直人をどうこう出来なくなる。
「……ああ、そうだな。おもちゃにするにゃーお前には面白みがなさ過ぎる。止めだ止めだ!」
そう言って、まるで興味を失くした風を装って、直人の身体から身を起こした。そのまま横にいたらまた押し倒してしまいたい衝動に駆られそうで、俺は彼から距離を置くように立ち上がると、直人を見下ろした。
その視線の先で、呆然としたようにその場を動けないでいる直人が目に入った。
はだけたままの胸元と、思わず自覚なく吸ってしまったときに付けたらしい鬱血の痕とを見て、俺は少なからず動揺する。
それに悟られないよう自分が着ていたブルゾンを乱暴に脱ぐと、直人の身体が隠れるように放った。
「とりあえずそれを着てろ」
尚も放心状態の直人を残してクローゼットに向かうと、俺は彼に合いそうな服を探した。
「すまなかったな」
仕事以外で謝るのなんて何年ぶりだろう。
親戚から送られてきたアルコール度数の高いブランデーをほんの少しグラスに注いで差し出すと、直人は言われるままにそれを口に運んだ。
まるで、心ここにあらずと言った雰囲気だ。
まだ目に涙を滲ませたまま視線を合わせようとしない直人に、俺はどうしていいか分からなくなる。
俺がクローゼットから引っ張り出してきたシャツに黙って着替えた直人を、半ば強引に元の位置に座らせた。そうしてみたものの、この気まずさは計算外だった。
身づくろいが整ったのだから、呆然とした頭の中でも直人はすぐにでもここを出て行きたいと思っているはずだ。
それを押し留めているのは、俺が彼の片腕を握っているからに過ぎない。
その手に、先ほどの恐怖を想起させられるのか、直人は少し震えながらもおとなしく座っていた。
その様が余りにも痛々しくて――。
「さっきの話だけどな……」
余りにも彼を傷つけてしまった。
その直人を見ているのが辛かったからかも知れない。
俺は思わず直人に「友達にOKだと伝えてくれ」と心にもないことを言ってしまっていた。
「え……?」
突然思いがけないことを言い始めた俺に、初めて直人が顔を上げた。その表情は胡乱(うろん)げで――。
そんな彼を信用させるために、俺は連絡先と称して自分の携帯番号を書いたメモまで握らせてしまった。
「後は俺とそいつの問題だ。お前は気にしなくていい」
言いながら彼の足に硬くなった自分のものを擦り付けると、直人が怯えたように身を固くする。
「怖いか?」
直人の怯えを含んだ羞恥の顔が堪らなくて、わざと耳元で囁いた。
てっきり何らかの罵声が返ってくると思っていたのに……。
「気、持ちも、な……い奴と、んなこと、したくねぇっ! 俺は逸、樹さんのおもちゃじゃ、ない!」
予想外の言葉が返ってきて、俺は動きを封じられてしまった。
(気持ちもない奴、か……)
その言葉がグサリと胸に突き刺さった気がして、俺はそれ以上直人をどうこう出来なくなる。
「……ああ、そうだな。おもちゃにするにゃーお前には面白みがなさ過ぎる。止めだ止めだ!」
そう言って、まるで興味を失くした風を装って、直人の身体から身を起こした。そのまま横にいたらまた押し倒してしまいたい衝動に駆られそうで、俺は彼から距離を置くように立ち上がると、直人を見下ろした。
その視線の先で、呆然としたようにその場を動けないでいる直人が目に入った。
はだけたままの胸元と、思わず自覚なく吸ってしまったときに付けたらしい鬱血の痕とを見て、俺は少なからず動揺する。
それに悟られないよう自分が着ていたブルゾンを乱暴に脱ぐと、直人の身体が隠れるように放った。
「とりあえずそれを着てろ」
尚も放心状態の直人を残してクローゼットに向かうと、俺は彼に合いそうな服を探した。
「すまなかったな」
仕事以外で謝るのなんて何年ぶりだろう。
親戚から送られてきたアルコール度数の高いブランデーをほんの少しグラスに注いで差し出すと、直人は言われるままにそれを口に運んだ。
まるで、心ここにあらずと言った雰囲気だ。
まだ目に涙を滲ませたまま視線を合わせようとしない直人に、俺はどうしていいか分からなくなる。
俺がクローゼットから引っ張り出してきたシャツに黙って着替えた直人を、半ば強引に元の位置に座らせた。そうしてみたものの、この気まずさは計算外だった。
身づくろいが整ったのだから、呆然とした頭の中でも直人はすぐにでもここを出て行きたいと思っているはずだ。
それを押し留めているのは、俺が彼の片腕を握っているからに過ぎない。
その手に、先ほどの恐怖を想起させられるのか、直人は少し震えながらもおとなしく座っていた。
その様が余りにも痛々しくて――。
「さっきの話だけどな……」
余りにも彼を傷つけてしまった。
その直人を見ているのが辛かったからかも知れない。
俺は思わず直人に「友達にOKだと伝えてくれ」と心にもないことを言ってしまっていた。
「え……?」
突然思いがけないことを言い始めた俺に、初めて直人が顔を上げた。その表情は胡乱(うろん)げで――。
そんな彼を信用させるために、俺は連絡先と称して自分の携帯番号を書いたメモまで握らせてしまった。
「後は俺とそいつの問題だ。お前は気にしなくていい」
0
あなたにおすすめの小説
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
宵にまぎれて兎は回る
宇土為名
BL
高校3年の春、同級生の名取に告白した冬だったが名取にはあっさりと冗談だったことにされてしまう。それを否定することもなく卒業し手以来、冬は親友だった名取とは距離を置こうと一度も連絡を取らなかった。そして8年後、勤めている会社の取引先で転勤してきた名取と8年ぶりに再会を果たす。再会してすぐ名取は自身の結婚式に出席してくれと冬に頼んできた。はじめは断るつもりだった冬だが、名取の願いには弱く結局引き受けてしまう。そして式当日、幸せに溢れた雰囲気に疲れてしまった冬は式場の中庭で避難するように休憩した。いまだに思いを断ち切れていない自分の情けなさを反省していると、そこで別の式に出席している男と出会い…
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる