かけられたのはDom/Subの魔法でした。

市瀬雪

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セーフワードの行方06

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「そんなに……」

 ラファエルはぽつりと呟いた。その瞳がわずかに揺れて、けれども次にはいつものように細められる。ふわりと優しい微笑みを浮かべて、緩やかに弧を描く唇が言葉を紡ぐ。

「〝キスして〟ギル」

 はっきりとしたコマンドがそこにのる。
 ギルベルトがびくりと身を震わせる。すぐさま堪え難いように呼気を震わせて、それでも抗えずにラファエルへと向き直る。
 片手を伸ばし、肩から流れるラファエルの金髪を掴む。力任せに引き寄せて、噛み付くようにキスをする。

「ん……いい子ですね」

 差し伸べられた舌を吸い上げる。食むようにしながら軽く歯を立てる。倣うようにラファエルの舌も絡め取られて、次には尖った犬歯を押し当てられる。
 かすかな痛みに目を眇める。けれどもそれすらいまは心地いい。少し痛いくらいが好きなのはギルベルトの方なのに、ラファエルも少しあてられているのかもしれない。この普通ではない状況に。

「もっと……もっとぎゅってして」

 ラファエルは吐息ごと閉じ込めるように唇を塞いだまま、戯れに転がしていた胸の先を不意に押し潰す。ぎゅうとそこに力をこめるかたわら、最奥をひときわ突き上げる。

「んんっ、う――!」
「……かわいい。ギル」

 差し出すみたいに胸を浮かせて、今度は胎内だけで達したのがわかる。過剰な愉悦にぼろぼろと黒銀の瞳から涙がこぼれ、それがまたかわいくてラファエルはいっそう追い詰める。

「いっぱいイっていいですよ」
「あぁっ、あ、も、イ……っ、――!」

 注ぎ続けられるグレアの中で達し続ける。いつのまにかラファエルの指は抜かれていたけれど、それにも気付かないほど繰り返される波に翻弄されていた。

「セーフワード……使えばいいのに」

 ほどなくしてラファエルも吐精する。それをさらに奥へと押し込むように腰を擦り付けながら、ギルベルトの目元に口付ける。
 幾筋も残る涙の跡に唇を寄せる。新たな雫がそこに落ちても、ギルベルトの瞳はもはや虚ろで、なにも映していないように見えた。

「……泣くほどいやなら、使えばいいのに」
「ぜっ、てぇ……、使わねぇっ……」

 それでもどうにか絞り出すギルベルトが〝らしい〟と思った。
 逆らえない。拒絶できない。意識とはうらはらに身体が動くような状況の中、かすれてまともな声にもならない声で、ギルベルトは吐き捨てる。

「死ね、クソ天使……」

 なのにその腕はラファエルを抱き締めるのだ。なけなしの力ですがるように、ともすればしがみつくみたいに。
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