かけられたのはDom/Subの魔法でした。

市瀬雪

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後悔の先に01

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 緩慢に瞬く瞳に、少しずつ光が戻る。ギルベルトは一度深く息を吸い込むと、吐くと同時に大きく目を開けた。

「は……、なんだこれ、身体重……っ」

 体調は最悪だった。心身ともに消耗し、なんなら吐き気すら込み上げてくる。頭痛もするし、身体の節々が軋むように痛い。
 シーツは清潔なものに取り替えられていた。身体を包む寝衣も洗い立ての香りがする。

 ラファエルがそばにいないことにはすぐに気付いた。正直内心ほっとした。ほっとしたのに、どこかで釈然としない心地にもなっていた。

「あいつ……マジ好き勝手しやがって……」

 こぼした声もひどくかすれている。喉が痛い。水が飲みたい。面倒臭そうに巡らせた視線の先、サイドボードにはいつものように水差しとグラスが置いてあった。ただし、グラスは横に伏せてある。すぐに飲めるようにと、前もって水が注がれていたりはしていない。

「クソ、……」

 気怠い身体を引き起こし、ギルベルトは舌打ちしながら手を伸ばす。
 円形のトレイにのせられていたグラスを手に取ると、そこに手ずから水を注いだ。

「……っは……」

 冷たい水を喉奥へと流し込む。渇いていた身体に染みこむようで気持ちいい。清涼感にいくぶん気分も晴れて、飲み干したグラスを戻すと一度大きく伸びをする。

 あいかわらず身体は痛いし、よく見ると首筋や胸元だけでなく、腹や内腿、足首の方にまで鬱血痕が刻まれている。

「つか、やりすぎなんだよ……」

 気持ち悪いほどのそれに溜息をこぼしながら、それでもこれくらいなんでもないと切り換え、ベッドをおりる。

 欠伸混じりに前髪を掻き上げ、向かった先は浴室だ。一応気にしてはみたけれど、部屋のどこにもラファエルはいなかった。

 リビングに置かれていたカヤの本はなくなっていた。ダイニングテーブルには昨夜手をつけることのなかった夕飯がそのままのっていて、そこには一本の白ワインが添えられていた。見覚えのあるそれはギルベルトも気に入っていて、少し前に、そろそろ飲みてぇななんて何気なく口にしたものでもあった。

「あいつ……」

 キッチンはきれいに片付けられていて、朝飯を用意しようとした形跡はなかった。ギルベルトが眠りに落ちた後、自分は寝ること泣く家を出たのかもしれない。

 部屋の空調は魔法で管理されているから問題はなかったが、それでもなんだか寒く感じた。雪の季節には早いけれど、ちらついたとしてもおかしくはない時期だった。

「……別に俺は心配なんかしねぇけど」

 なかば無意識に窓外を見やって、ギルベルトは肩を竦める。込み上げた欠伸をまた漏らし、無造作に髪を掻き混ぜながら、ギルベルトはそのまま浴室へと消えた。
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