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【番外編】ひとめぼれではありません(side:ラファエル)
ひとめぼれではありません05
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悪魔は体力の回復が早いと聞いたことがあった。そしてそれを証明するかのように、翌朝にはギルベルトはすっかり元気になっていた。
「どういう状況だよ、これは」
ベッドの上で上体だけ起こし、無遠慮に欠伸と伸びをしたギルベルトは、無意識に羽と尻尾を動かしながら怪訝そうに辺りを見渡した。
「おはようございます。もう熱もすっかり下がったようですね」
歩み寄ったラファエルが当たり前のようにその額に触れる。するとギルベルトは信じ難いように目を瞠り、すぐさまその手を払いのけた。
「何してんだてめぇ」
僅かに身を退き、訝しげに睨み返すその表情に、ラファエルは一瞬動きを止める。
向けられた蔑むような眼差しに、ぞくりと背筋が粟立った。
……いいですね、その表情。
明るく照らす朝陽の中でのギャップがまたなんとも言えない。
ラファエルはにこりと微笑みながら、再びギルベルトへと手を伸ばす。
「思いの外簡単に酔い潰れてしまったあなたを、夜通し介抱していた相手にそれはないんじゃないですか」
「はァ……?」
「冷えた身体を拭いて僕の服に着替えさせて、一つしかないベッドまで貸してさしあげて……結局熱まで出してしまったあなたの面倒で、僕は一睡もできなかったんですよ」
「適当なこと言ってんじゃねぇ」
「本当のことですよ。僕は天使ですから、嘘はつきません」
ラファエルが笑みを深めると、見上げるギルベルトの眼差しがますます訝しげに歪む。
「別に頼んでねぇし」
「その顔……」
「あ?」
「いいですね」
見下ろしたまま優しく頬に触れると、反してギルベルトは怯むように肩を揺らした。
「あ、回復したなら、昨夜の報酬をいただきましょうか」
「報酬?」
「お金、ないんでしょう。ツケの分もお支払いいただかないと」
「……なんの話だ」
種族としての本能的なものもあるのだろうか。じわじわと詰められる距離に、ギルベルトは妙な威圧感を覚えて無意識に喉を鳴らす。
ラファエルが顔を寄せると、その分ギルベルトの頭が下がる。自然と頬に触れていた手が離れ、ラファエルは指先を軽く握り込んだ。
「覚えてないんですか。飲み比べをして、負けた方が勝った方の言うことを聞くって約束したでしょう」
「――……」
「思い出しましたか?」
「……忘れた」
ギルベルトは目を逸らすと、無言で羽と尻尾を消した。そのままベッドを降りようとラファエルの肩を押す。その手首をラファエルが掴む。
「最初からそのつもりだったんですか?」
「あァ?」
「残念です。まさかそんなに姑息で小悪党な方だったとは……」
「はあぁぁああ?!」
溜息混じりに落とされた言葉に、ギルベルトは食い気味に声を上げた。
「どういう意味だ!」
「どういう意味って、どうせ最初から踏み倒すつもりだったってことでしょう」
「俺さまをそこらへんの小物と一緒にすんじゃねぇ!」
眦を吊り上げ、鋭く睨み返してくる眼差しにもラファエルはあえて溜息を重ねる。
「だってあなた……僕とした約束、まもれませんよね?」
わざとらしく失望したという表情をして見せる。片手で口元を覆い、僅かに俯く。一方で、掴んだギルベルトの手を離すことはしない。
「……上等だ……」
ギルベルトはわなわなと身を震わせ、掴まれていた手首を振り解いた。
「なんかあるなら言ってみろ! 俺さまにできねぇことはねぇんだよ!」
ラファエルはさらりと落ちた長い髪の下で小さく笑った。それに気付かないギルベルトはラファエルの胸倉を掴んで顔を寄せる。そしてものすごく良いことを思いついたとばかりに、勝気な笑みを浮かべて言うのだ。
「もしこの俺さまに抱いて欲しいってんなら、いますぐにでも叶えてやる」
勝負では負けても、この場では勝ったとばかりに口角を上げるギルベルトに、ラファエルは思わず目を瞠った。
「なるほど……それもいいですね」
頷いて返すと、ますますギルベルトは得意気に鼻を鳴らす。
そもそも、ラファエルが勝った場合はギルベルトはちゃんと着替え、なんならシャワーを浴びて、とにかく身体を温かくするという話になっていたはずだ。それならある意味消化されたわけだが、その一連の記憶が曖昧で、約束についてはすっかり忘れているギルベルトはそれに気付かない。
なんてばかな人だろう。
もはや呆れるを通り越して感心してしまう。
……と同時に、どういうわけか、ラファエルの中で言いようのない愛しさが込み上げてきた。
「では……」
呟くと、ラファエルは顔にかかっていた髪を掻き上げ、今度はギルベルトの腕を掴む。
「は……?」
不意打ちのそれに瞬くギルベルトを引き寄せ、存外細い腰に手を添えると、次にはシーツの上へと押し倒す。
疑問符を浮かべて見上げる黒銀の瞳にいっそう気分が高揚する。
ラファエルはこの上なく天使然とした微笑みを浮かべて言った。
「抱かせてください」
悪魔は体力の回復が早いと聞いたことがあった。そしてそれを証明するかのように、翌朝にはギルベルトはすっかり元気になっていた。
「どういう状況だよ、これは」
ベッドの上で上体だけ起こし、無遠慮に欠伸と伸びをしたギルベルトは、無意識に羽と尻尾を動かしながら怪訝そうに辺りを見渡した。
「おはようございます。もう熱もすっかり下がったようですね」
歩み寄ったラファエルが当たり前のようにその額に触れる。するとギルベルトは信じ難いように目を瞠り、すぐさまその手を払いのけた。
「何してんだてめぇ」
僅かに身を退き、訝しげに睨み返すその表情に、ラファエルは一瞬動きを止める。
向けられた蔑むような眼差しに、ぞくりと背筋が粟立った。
……いいですね、その表情。
明るく照らす朝陽の中でのギャップがまたなんとも言えない。
ラファエルはにこりと微笑みながら、再びギルベルトへと手を伸ばす。
「思いの外簡単に酔い潰れてしまったあなたを、夜通し介抱していた相手にそれはないんじゃないですか」
「はァ……?」
「冷えた身体を拭いて僕の服に着替えさせて、一つしかないベッドまで貸してさしあげて……結局熱まで出してしまったあなたの面倒で、僕は一睡もできなかったんですよ」
「適当なこと言ってんじゃねぇ」
「本当のことですよ。僕は天使ですから、嘘はつきません」
ラファエルが笑みを深めると、見上げるギルベルトの眼差しがますます訝しげに歪む。
「別に頼んでねぇし」
「その顔……」
「あ?」
「いいですね」
見下ろしたまま優しく頬に触れると、反してギルベルトは怯むように肩を揺らした。
「あ、回復したなら、昨夜の報酬をいただきましょうか」
「報酬?」
「お金、ないんでしょう。ツケの分もお支払いいただかないと」
「……なんの話だ」
種族としての本能的なものもあるのだろうか。じわじわと詰められる距離に、ギルベルトは妙な威圧感を覚えて無意識に喉を鳴らす。
ラファエルが顔を寄せると、その分ギルベルトの頭が下がる。自然と頬に触れていた手が離れ、ラファエルは指先を軽く握り込んだ。
「覚えてないんですか。飲み比べをして、負けた方が勝った方の言うことを聞くって約束したでしょう」
「――……」
「思い出しましたか?」
「……忘れた」
ギルベルトは目を逸らすと、無言で羽と尻尾を消した。そのままベッドを降りようとラファエルの肩を押す。その手首をラファエルが掴む。
「最初からそのつもりだったんですか?」
「あァ?」
「残念です。まさかそんなに姑息で小悪党な方だったとは……」
「はあぁぁああ?!」
溜息混じりに落とされた言葉に、ギルベルトは食い気味に声を上げた。
「どういう意味だ!」
「どういう意味って、どうせ最初から踏み倒すつもりだったってことでしょう」
「俺さまをそこらへんの小物と一緒にすんじゃねぇ!」
眦を吊り上げ、鋭く睨み返してくる眼差しにもラファエルはあえて溜息を重ねる。
「だってあなた……僕とした約束、まもれませんよね?」
わざとらしく失望したという表情をして見せる。片手で口元を覆い、僅かに俯く。一方で、掴んだギルベルトの手を離すことはしない。
「……上等だ……」
ギルベルトはわなわなと身を震わせ、掴まれていた手首を振り解いた。
「なんかあるなら言ってみろ! 俺さまにできねぇことはねぇんだよ!」
ラファエルはさらりと落ちた長い髪の下で小さく笑った。それに気付かないギルベルトはラファエルの胸倉を掴んで顔を寄せる。そしてものすごく良いことを思いついたとばかりに、勝気な笑みを浮かべて言うのだ。
「もしこの俺さまに抱いて欲しいってんなら、いますぐにでも叶えてやる」
勝負では負けても、この場では勝ったとばかりに口角を上げるギルベルトに、ラファエルは思わず目を瞠った。
「なるほど……それもいいですね」
頷いて返すと、ますますギルベルトは得意気に鼻を鳴らす。
そもそも、ラファエルが勝った場合はギルベルトはちゃんと着替え、なんならシャワーを浴びて、とにかく身体を温かくするという話になっていたはずだ。それならある意味消化されたわけだが、その一連の記憶が曖昧で、約束についてはすっかり忘れているギルベルトはそれに気付かない。
なんてばかな人だろう。
もはや呆れるを通り越して感心してしまう。
……と同時に、どういうわけか、ラファエルの中で言いようのない愛しさが込み上げてきた。
「では……」
呟くと、ラファエルは顔にかかっていた髪を掻き上げ、今度はギルベルトの腕を掴む。
「は……?」
不意打ちのそれに瞬くギルベルトを引き寄せ、存外細い腰に手を添えると、次にはシーツの上へと押し倒す。
疑問符を浮かべて見上げる黒銀の瞳にいっそう気分が高揚する。
ラファエルはこの上なく天使然とした微笑みを浮かべて言った。
「抱かせてください」
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