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【先行公開版】第二章 灯火 - Torch -
フレイ - Frey - 2
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◯アルビオン王国・ロンドン市・ノーラム伯のタウンハウス・門前
ヘンリーとの面会が終わり、ノーラム伯邸を出るフレイとガネーシャ。
ガネーシャ「先ほど見たのが、今どきの貴族の姿だよ。
かつては、土地や爵位さえあれば、富も名誉も保証された。だが産業革命が起きて、蒸気と鉄が土地に取って代わり、そこに金を投じて富を生む投資家や事業家が台頭してきた。〝働かないこと〟を美徳とした貴族たちも、いまや彼らの真似を始めているんだ。
時代が変われば、力の在り処も変わる。潤沢な資産を持ち、その金を動かす者が、国を動かす時代になっている」
突然、背後から声を掛けられる。
「随分シャレた格好をしているんだな」
フレイ振り向き、驚く。
「なんでっ!?」
アヴェス・イスマイール・イスマイールの従者・ルイが立っている。
アヴェス「緊急事態なんだ。コメルコ商会の力を貸して欲しい」
◯ロンドン市・ザ・ジョージ・イン
一同、フレイとガネーシャが宿泊している宿屋のパブに入る。
賑やかなパブは煙草の煙で薄暗く、酒の匂いが鼻をつく。
大テーブルでは仕事終わりの労働者が大人も子供も酒を飲みながらパイプタバコを吸い、テーブルの隅では商人たちが商談をしている。店の奥では羽振りのよさそうな投資家たちがワインを飲みながら歓談している。
ガネーシャ、カウンターで自分とルイにエールを、アヴェスたちに砂糖入りの紅茶を注文する。
◯ザ・ジョージ・イン・奥まった席
ガネーシャ、アヴェスとイスマイールに「二人とも久し振りだね。随分と成長したものだ」
アヴェス「お久しぶりです。おじさんもお元気そうで何よりです」
ガネーシャ、イスマイールに「ハーリドの事は残念だったね」
イスマイール「父の葬儀の折にはご会葬いただき深謝申し上げる。父も喜んでいたことと思う」
✕ ✕ ✕
アヴェス、カナン地区の状況をフレイとガネーシャに説明する。
ガネーシャ「3年前か…。シオン教徒は、アッバース国のカリフが代替わりして、政治が内向きになっている時期を突いてきたな。コメルコ商会もできる限り力を貸すよ」
アヴェス「ありがとうございます!
ところで、おじさんはシオン商人を知っていますか?」
ガネーシャ「シオン商人について知りたいのか?」
アヴェス「はい。どのような人たちですか?」
ガネーシャ「一言で言うと、キレ者。頭の回転が早く教育熱心、先見の明があり、金を稼ぐ仕組み作りが非常に上手い。2000年も迫害を受け続けた流浪の民だから、優秀でしたたかな者でないと生き残れなかったという側面もある。彼らの資金力、組織力、そして情報網の広さは、商売相手として信用に値する」
アヴェス「おじさんはシオン商人を高く評価しているんですね」
ガネーシャ「ビジネスパートナーとしてはね。この国の産業革命にも彼らが噛んでいるよ。シオン人銀行家や投資家たちが、アルビオン政府の主要な金融パートナーとなり、鉄道、鉱業、国際貿易に膨大な投資をしている」
イスマイール「なるほど。シオンはアルビオン王国と蜜月の関係か」
ガネーシャ「アルビオン王国だけではないよ。西側諸国の財政や金融には、シオン系資本が関わっている」
イスマイール「多くの国がシオンに急所を押さえられているということか…。その中に世連に加盟している国はあるだろうか?」
ガネーシャ「大金が入り用になるということは、戦争に関与しているということだ。世連に加盟している国は戦争に備える必要がないから、シオン商人との関わりは薄いだろう」
イスマイールとアヴェス、うなずき合う。
イスマイール「カナン地区が世連に加盟申請した場合、最短で何日かかる?」
アヴェス「世連が加盟申請書を受理してから、理事会の特別会合まで1週間、理事会の審議を通れば緊急特別総会まで1週間。そこで承認されなければ再度、1週間後に総会を開催できる」
イスマイール「そうか。では、最長でも30日でカナン地区を世連に加盟させよう」
ヘンリーとの面会が終わり、ノーラム伯邸を出るフレイとガネーシャ。
ガネーシャ「先ほど見たのが、今どきの貴族の姿だよ。
かつては、土地や爵位さえあれば、富も名誉も保証された。だが産業革命が起きて、蒸気と鉄が土地に取って代わり、そこに金を投じて富を生む投資家や事業家が台頭してきた。〝働かないこと〟を美徳とした貴族たちも、いまや彼らの真似を始めているんだ。
時代が変われば、力の在り処も変わる。潤沢な資産を持ち、その金を動かす者が、国を動かす時代になっている」
突然、背後から声を掛けられる。
「随分シャレた格好をしているんだな」
フレイ振り向き、驚く。
「なんでっ!?」
アヴェス・イスマイール・イスマイールの従者・ルイが立っている。
アヴェス「緊急事態なんだ。コメルコ商会の力を貸して欲しい」
◯ロンドン市・ザ・ジョージ・イン
一同、フレイとガネーシャが宿泊している宿屋のパブに入る。
賑やかなパブは煙草の煙で薄暗く、酒の匂いが鼻をつく。
大テーブルでは仕事終わりの労働者が大人も子供も酒を飲みながらパイプタバコを吸い、テーブルの隅では商人たちが商談をしている。店の奥では羽振りのよさそうな投資家たちがワインを飲みながら歓談している。
ガネーシャ、カウンターで自分とルイにエールを、アヴェスたちに砂糖入りの紅茶を注文する。
◯ザ・ジョージ・イン・奥まった席
ガネーシャ、アヴェスとイスマイールに「二人とも久し振りだね。随分と成長したものだ」
アヴェス「お久しぶりです。おじさんもお元気そうで何よりです」
ガネーシャ、イスマイールに「ハーリドの事は残念だったね」
イスマイール「父の葬儀の折にはご会葬いただき深謝申し上げる。父も喜んでいたことと思う」
✕ ✕ ✕
アヴェス、カナン地区の状況をフレイとガネーシャに説明する。
ガネーシャ「3年前か…。シオン教徒は、アッバース国のカリフが代替わりして、政治が内向きになっている時期を突いてきたな。コメルコ商会もできる限り力を貸すよ」
アヴェス「ありがとうございます!
ところで、おじさんはシオン商人を知っていますか?」
ガネーシャ「シオン商人について知りたいのか?」
アヴェス「はい。どのような人たちですか?」
ガネーシャ「一言で言うと、キレ者。頭の回転が早く教育熱心、先見の明があり、金を稼ぐ仕組み作りが非常に上手い。2000年も迫害を受け続けた流浪の民だから、優秀でしたたかな者でないと生き残れなかったという側面もある。彼らの資金力、組織力、そして情報網の広さは、商売相手として信用に値する」
アヴェス「おじさんはシオン商人を高く評価しているんですね」
ガネーシャ「ビジネスパートナーとしてはね。この国の産業革命にも彼らが噛んでいるよ。シオン人銀行家や投資家たちが、アルビオン政府の主要な金融パートナーとなり、鉄道、鉱業、国際貿易に膨大な投資をしている」
イスマイール「なるほど。シオンはアルビオン王国と蜜月の関係か」
ガネーシャ「アルビオン王国だけではないよ。西側諸国の財政や金融には、シオン系資本が関わっている」
イスマイール「多くの国がシオンに急所を押さえられているということか…。その中に世連に加盟している国はあるだろうか?」
ガネーシャ「大金が入り用になるということは、戦争に関与しているということだ。世連に加盟している国は戦争に備える必要がないから、シオン商人との関わりは薄いだろう」
イスマイールとアヴェス、うなずき合う。
イスマイール「カナン地区が世連に加盟申請した場合、最短で何日かかる?」
アヴェス「世連が加盟申請書を受理してから、理事会の特別会合まで1週間、理事会の審議を通れば緊急特別総会まで1週間。そこで承認されなければ再度、1週間後に総会を開催できる」
イスマイール「そうか。では、最長でも30日でカナン地区を世連に加盟させよう」
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