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第28話 買い取り所
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「すみません、買い取りを行っているんですよね?」
遠目でシーラがルーレットを継続しているのを確認しつつその場を離れ、俺が向かったのはチップ交換所の横にあるカウンターだった。
看板には「その場でどこよりも高価買取させていただきます」と書かれている。
「はい、もちろんです。ギャンブル資金がなくなった方のため、宝石やレア鉱石から洋服まで、すべてこの鑑定の神器にて値段をつけさせていただきます」
熱くなる人間が多いのだろう、客の中には宝石などを身に着けている身分の高そうな者もいる。さぞや良い商売になっているのだろう。
「これが……神器なのか?」
カウンターの横には巨大な装置があった。物を乗せることが出来るスペースがあり、上には数字が表示されている。
「はい、いつでも迅速に査定が完了する【神眼】が組み込まれています」
【神眼】と呼ばれる神器は俺も知っている。ありとあらゆるアイテムと生物などの情報を数値で表すことが出来る神器だ。
バベルへの入場ゲートで俺たちの賞罰を判定した魔導具の上位互換だ。
試しに適当なアイテムを乗せてもらうと、即座に数字が変動した。把握している限り市場で見た金額よりは安いのだが、市場の方が自分の利益を乗せて販売しているのだろう。
「さらに、当店では査定額と何をお売りになったかについては秘匿することが可能です。これはお客様のプライベートを守るとともに、財布の底を他のお客様に知られないための措置です」
実際は、売ってしまってはいけない物を売る人間がいたり、盗品だった場合にケチをつけられないためだろう。
盗品と発覚してしまうと持ち主に返さなければならないが、知らずに買い取った場合は正直に応対する必要がない。
さらに言うとギャンブルなんてものは金での殴り合い。資金が多い方が有利なのは言うまでもないので、ここで手に入れた金額を知られると相手の予算が割れてしまう。そうならない為の措置というわけだ。
俺は【神眼】の神器の前に立つと受付の人間に聞いた。
「ここにアイテムを置けばいいのか?」
「はい、そうしますとお客様の目の前だけに買い取り価格が表示されますので、問題がなければ身分証をかざしてもらえれば結構です」
シークレットモードということで周囲から見えないように覆われている。
俺は試しにオリハルコンの欠片を置いてみた。先日、マーガレットに売ったものと同じ大きさだ。
出てきた金額はマーガレットに買い取ってもらった物より少し安い。彼女がいろをつけてくれていたのは本当だったようだ。
俺は【神眼】の査定がある程度信用できることを確認すると、亜空間からレアアイテムを取り出しどんどんと乗せていく。
すると、数字がものすごい勢いで増えていくのだが、俺だけにしか見えていないので特に気にする必要はない。
「よし、こんなもんかな」
秘密裏に売ることができるということで、この機会を逃すまいと手持ちのアイテムの半分を放り込んだところで満足する。
「では、そちらの確認ボタンを押してください。そうしましたら乗せられたアイテムは自動回収されて倉庫に入りますので、お客様が何をお売りになったかは私たちは一切知ることはありません」
目の前に出ている数字を見せつけたら受付はどんな反応をしただろうか?
そんなことを考えつつボタンを押すと、置いていた台の口が開きレアアイテムが中へと吸い込まれていった。
「最後に身分証をクリスタルにかざしてチャージしてください」
言われるままにチャージを完了させるとこれで取引完了だ。
「それでは、この後もとうカジノをお楽しみください。グッドラック」
俺は満面の笑みで送り出されるのだった。
★
「ぐふふふふふふ、予想通り酒を呑んでよい気分になっているようだな。ルーレットに夢中になっている」
べモンドは真剣な表情でルーレットを凝視しているシーラを見ると満足そうに笑みを浮かべた。
「だけどあの少年の姿が見えないわ、ひょっとすると女でも買いにいったのかしらね?」
ミモザの関心はピートへと向いていた。
「男なんぞどうでも良い、それよりはあの女だ。借金漬けにして命令する時を考えるとたまらんわい」
すでに渡したお金の半分をギャンブルで溶かしている。バベルに到達した外来の人間に渡す初期資金は二十万ベルなので、金銭感覚が壊れ始めているのは間違いない。
「お金を与え、酒と食べ物で良い気分にしてギャンブルに嵌める。ほんと、ただより怖い物はないわね」
手持ちが少ない人間の財布は中々緩むことはない。だが、ある程度の大金を与え、消費する場を用意すると大抵の人間は我慢できないのだ。
人は本能的に消費を好む生き物で、それは外の世界だろうが内の世界だろうが関係ない。
事実、べモンドはこれまでこの方法を使い何人もの人間を借金地獄に叩き落してきた。
「このギャンブルシティは金を持つ人間が一番偉い。つまりワシにかなう人間はおらぬということよ……」
頭の中は既にシーラを手に入れたあとにどんな厭らしいことをするかで埋め尽くされている。
だが、彼は知らなかった。
ここにはシーラだけではなく、大賢者の遺物を手に乗り込んでいたピートもいるということに……。
★
遠目でシーラがルーレットを継続しているのを確認しつつその場を離れ、俺が向かったのはチップ交換所の横にあるカウンターだった。
看板には「その場でどこよりも高価買取させていただきます」と書かれている。
「はい、もちろんです。ギャンブル資金がなくなった方のため、宝石やレア鉱石から洋服まで、すべてこの鑑定の神器にて値段をつけさせていただきます」
熱くなる人間が多いのだろう、客の中には宝石などを身に着けている身分の高そうな者もいる。さぞや良い商売になっているのだろう。
「これが……神器なのか?」
カウンターの横には巨大な装置があった。物を乗せることが出来るスペースがあり、上には数字が表示されている。
「はい、いつでも迅速に査定が完了する【神眼】が組み込まれています」
【神眼】と呼ばれる神器は俺も知っている。ありとあらゆるアイテムと生物などの情報を数値で表すことが出来る神器だ。
バベルへの入場ゲートで俺たちの賞罰を判定した魔導具の上位互換だ。
試しに適当なアイテムを乗せてもらうと、即座に数字が変動した。把握している限り市場で見た金額よりは安いのだが、市場の方が自分の利益を乗せて販売しているのだろう。
「さらに、当店では査定額と何をお売りになったかについては秘匿することが可能です。これはお客様のプライベートを守るとともに、財布の底を他のお客様に知られないための措置です」
実際は、売ってしまってはいけない物を売る人間がいたり、盗品だった場合にケチをつけられないためだろう。
盗品と発覚してしまうと持ち主に返さなければならないが、知らずに買い取った場合は正直に応対する必要がない。
さらに言うとギャンブルなんてものは金での殴り合い。資金が多い方が有利なのは言うまでもないので、ここで手に入れた金額を知られると相手の予算が割れてしまう。そうならない為の措置というわけだ。
俺は【神眼】の神器の前に立つと受付の人間に聞いた。
「ここにアイテムを置けばいいのか?」
「はい、そうしますとお客様の目の前だけに買い取り価格が表示されますので、問題がなければ身分証をかざしてもらえれば結構です」
シークレットモードということで周囲から見えないように覆われている。
俺は試しにオリハルコンの欠片を置いてみた。先日、マーガレットに売ったものと同じ大きさだ。
出てきた金額はマーガレットに買い取ってもらった物より少し安い。彼女がいろをつけてくれていたのは本当だったようだ。
俺は【神眼】の査定がある程度信用できることを確認すると、亜空間からレアアイテムを取り出しどんどんと乗せていく。
すると、数字がものすごい勢いで増えていくのだが、俺だけにしか見えていないので特に気にする必要はない。
「よし、こんなもんかな」
秘密裏に売ることができるということで、この機会を逃すまいと手持ちのアイテムの半分を放り込んだところで満足する。
「では、そちらの確認ボタンを押してください。そうしましたら乗せられたアイテムは自動回収されて倉庫に入りますので、お客様が何をお売りになったかは私たちは一切知ることはありません」
目の前に出ている数字を見せつけたら受付はどんな反応をしただろうか?
そんなことを考えつつボタンを押すと、置いていた台の口が開きレアアイテムが中へと吸い込まれていった。
「最後に身分証をクリスタルにかざしてチャージしてください」
言われるままにチャージを完了させるとこれで取引完了だ。
「それでは、この後もとうカジノをお楽しみください。グッドラック」
俺は満面の笑みで送り出されるのだった。
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「ぐふふふふふふ、予想通り酒を呑んでよい気分になっているようだな。ルーレットに夢中になっている」
べモンドは真剣な表情でルーレットを凝視しているシーラを見ると満足そうに笑みを浮かべた。
「だけどあの少年の姿が見えないわ、ひょっとすると女でも買いにいったのかしらね?」
ミモザの関心はピートへと向いていた。
「男なんぞどうでも良い、それよりはあの女だ。借金漬けにして命令する時を考えるとたまらんわい」
すでに渡したお金の半分をギャンブルで溶かしている。バベルに到達した外来の人間に渡す初期資金は二十万ベルなので、金銭感覚が壊れ始めているのは間違いない。
「お金を与え、酒と食べ物で良い気分にしてギャンブルに嵌める。ほんと、ただより怖い物はないわね」
手持ちが少ない人間の財布は中々緩むことはない。だが、ある程度の大金を与え、消費する場を用意すると大抵の人間は我慢できないのだ。
人は本能的に消費を好む生き物で、それは外の世界だろうが内の世界だろうが関係ない。
事実、べモンドはこれまでこの方法を使い何人もの人間を借金地獄に叩き落してきた。
「このギャンブルシティは金を持つ人間が一番偉い。つまりワシにかなう人間はおらぬということよ……」
頭の中は既にシーラを手に入れたあとにどんな厭らしいことをするかで埋め尽くされている。
だが、彼は知らなかった。
ここにはシーラだけではなく、大賢者の遺物を手に乗り込んでいたピートもいるということに……。
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