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第29話 二組目の到達者
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★
~時を少々遡る~
「見て、ブレッド! 何か見えてきたよ」
メリルが遠くに見える何かを指さす。服は汚れていてところどころが切れておりボロボロになっている。すべてこの最近についたものだ。
ピートの小屋に書き置きを残して出発した一行は、森林を抜け平原を横断して中心を目指した。
それというのもピートが生きていると確信があり、彼ならば深淵ダンジョンの秘密を探るため中心へと向かうと考えたからだ。
「な、なんでしょうかあれ?」
ミラは声を震わせると薄目をしてそれを見極めようとする。
これまでの間に何度も死にそうになったので防衛本能が働いている。
「……城壁に見える」
メリッサが呟く。このメンバーの中では彼女が一番目が良いので見間違いではなさそうだ。
「中心に城壁とは……こいつは当たりかもしれねえな」
ブレッドはニヤリと笑った。
城壁があるということは作った者が存在する。つまりは人間がいるということになる。
「もしかして、あそこにピートいたりしない?」
「姫様もいるかもしれません!」
ここに来るまで実に厄介なモンスターと戦い、時には煙に巻き逃げてきた。
Sランク冒険者とはいえ正面からやり合うには厳しいモンスターがゴロゴロしていたからだ。
そんなギリギリの綱渡りを繰り返してきただけあって、安全地帯を見つけた四人はホッとする。
「あそこに行けば答えが見つかる。あと少しだ! 頑張ろうっ!」
ブレッドの言葉で最後の気力を振り絞り前へと進むのだった。
★
「おまたせ、どんな感じだ?」
「あっ、ピート。もうもらったお金の半分も使っちゃったぁ」
用事を済ませてシーラの下にもどると、彼女は笑いながらそんな報告をしてきた。手元にはチップが少々残っているだけなので、待っている間にそれなりに使ったようだ。
「仕方ない奴だな。もらった分以上には絶対に使うなよ?」
大声で自分の財布の中身を叫ぶシーラを俺はやんわりとたしなめる。シーラとしばらく視線が交差する。
「もちろんだよ」
シーラはそう言うと俺に笑顔を見せてくる。そんな彼女に俺も笑い返すのだった。
「ピートは何もギャンブルやらないの?」
ルーレットを離れて歩き出す。
シーラは余ったチップを持つと即座に俺の隣へと並んできた。
「そもそも俺ってギャンブルやったことがないんだよ」
冒険者をしている人間にはギャンブル狂いがわりと多い。
常に死の危険と隣り合わせなので、仕事に区切りをつけるとギャンブルをしたり女を買ったり酒を呑む。
だが、俺はソロで冒険をしていたのでそう言った場所に誘われることもほとんどなかったのでこれまで縁がなかったのだ。
そのことをシーラに語って見せると……。
「うん、それでいいと思う。ピートには変な遊び覚えないで欲しいし」
何故か真剣な顔をしたシーラが俺にそう言ってくる。
「完全に運に左右されるゲームは好きじゃないが、予想とか計算が介入するゲームは嫌いじゃない」
話している最中、闘技場を通り過ぎた。
ちらっと見たところ戦っているのは人間同士のようだ。
「あれはバベルの最下層で生まれた人たちを戦わせているみたいだよ」
気になっているとシーラが教えてくれる。外の世界ではモンスターを捕えてきて戦わせるギャンブルがあったようだが、バベル内にモンスターを入れたくないのか代わりに人間を戦わせているようだ。
「結局はここも外の世界も変わらないのかもな……」
生まれながらに搾取されることが決まっている人間が存在する。祖先が罪を犯したからといって子や孫にまでそのしわ寄せがいくなんて……。
俺が唇を強く噛むと何かが腕に触れた。
「……ピート」
白い手が俺の腕に絡んでくる。見下ろすとシーラが心配そうな目で俺を覗き込んできた。
「何でもない、それより面白いゲームを見つけたからやってみるか」
俺はそう言うとシーラを伴ってとあるゲームへと進んだ。
★
「い、一体どうなっている?」
屋敷のモニターを見ながらべモンドは苛立ちを隠しきれずにいた。
「シーラの浪費が見事に止まってしまいましたね」
さきほどからシーラは一切のギャンブルをやめてしまったため、べモンドは餌をぶら下げられた馬のようにお預けを食らうことになった。
「それもこれもあの小僧のせいだ!」
現在モニターに映っているのはピート。彼がカードゲームに興じると、シーラはぴったりと寄り添いそれを見学していた。
お蔭で一度高まったギャンブル熱も冷めてしまい、このままでは借金漬けどころか渡したお金すら余らせてしまうだろう。
「今すぐあのテーブルに凄腕のギャンブラーを送りこめ!」
ギャンブルシティではそれを生業としているギャンブラーが存在する。彼らは運に身を任せることなくその場の流れや確率など、ありとあらゆる要素を味方につけて勝ち上がっていく。
べモンドはその内の何人かを子飼いにしていた。
「カードゲームならばホイスラーに行かせましょう。彼はこれまでも数多くの人間を破滅させてましたから」
ミモザはそう言うと、早速カジノにいる人間に連絡を飛ばすのだった。
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~時を少々遡る~
「見て、ブレッド! 何か見えてきたよ」
メリルが遠くに見える何かを指さす。服は汚れていてところどころが切れておりボロボロになっている。すべてこの最近についたものだ。
ピートの小屋に書き置きを残して出発した一行は、森林を抜け平原を横断して中心を目指した。
それというのもピートが生きていると確信があり、彼ならば深淵ダンジョンの秘密を探るため中心へと向かうと考えたからだ。
「な、なんでしょうかあれ?」
ミラは声を震わせると薄目をしてそれを見極めようとする。
これまでの間に何度も死にそうになったので防衛本能が働いている。
「……城壁に見える」
メリッサが呟く。このメンバーの中では彼女が一番目が良いので見間違いではなさそうだ。
「中心に城壁とは……こいつは当たりかもしれねえな」
ブレッドはニヤリと笑った。
城壁があるということは作った者が存在する。つまりは人間がいるということになる。
「もしかして、あそこにピートいたりしない?」
「姫様もいるかもしれません!」
ここに来るまで実に厄介なモンスターと戦い、時には煙に巻き逃げてきた。
Sランク冒険者とはいえ正面からやり合うには厳しいモンスターがゴロゴロしていたからだ。
そんなギリギリの綱渡りを繰り返してきただけあって、安全地帯を見つけた四人はホッとする。
「あそこに行けば答えが見つかる。あと少しだ! 頑張ろうっ!」
ブレッドの言葉で最後の気力を振り絞り前へと進むのだった。
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「おまたせ、どんな感じだ?」
「あっ、ピート。もうもらったお金の半分も使っちゃったぁ」
用事を済ませてシーラの下にもどると、彼女は笑いながらそんな報告をしてきた。手元にはチップが少々残っているだけなので、待っている間にそれなりに使ったようだ。
「仕方ない奴だな。もらった分以上には絶対に使うなよ?」
大声で自分の財布の中身を叫ぶシーラを俺はやんわりとたしなめる。シーラとしばらく視線が交差する。
「もちろんだよ」
シーラはそう言うと俺に笑顔を見せてくる。そんな彼女に俺も笑い返すのだった。
「ピートは何もギャンブルやらないの?」
ルーレットを離れて歩き出す。
シーラは余ったチップを持つと即座に俺の隣へと並んできた。
「そもそも俺ってギャンブルやったことがないんだよ」
冒険者をしている人間にはギャンブル狂いがわりと多い。
常に死の危険と隣り合わせなので、仕事に区切りをつけるとギャンブルをしたり女を買ったり酒を呑む。
だが、俺はソロで冒険をしていたのでそう言った場所に誘われることもほとんどなかったのでこれまで縁がなかったのだ。
そのことをシーラに語って見せると……。
「うん、それでいいと思う。ピートには変な遊び覚えないで欲しいし」
何故か真剣な顔をしたシーラが俺にそう言ってくる。
「完全に運に左右されるゲームは好きじゃないが、予想とか計算が介入するゲームは嫌いじゃない」
話している最中、闘技場を通り過ぎた。
ちらっと見たところ戦っているのは人間同士のようだ。
「あれはバベルの最下層で生まれた人たちを戦わせているみたいだよ」
気になっているとシーラが教えてくれる。外の世界ではモンスターを捕えてきて戦わせるギャンブルがあったようだが、バベル内にモンスターを入れたくないのか代わりに人間を戦わせているようだ。
「結局はここも外の世界も変わらないのかもな……」
生まれながらに搾取されることが決まっている人間が存在する。祖先が罪を犯したからといって子や孫にまでそのしわ寄せがいくなんて……。
俺が唇を強く噛むと何かが腕に触れた。
「……ピート」
白い手が俺の腕に絡んでくる。見下ろすとシーラが心配そうな目で俺を覗き込んできた。
「何でもない、それより面白いゲームを見つけたからやってみるか」
俺はそう言うとシーラを伴ってとあるゲームへと進んだ。
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「い、一体どうなっている?」
屋敷のモニターを見ながらべモンドは苛立ちを隠しきれずにいた。
「シーラの浪費が見事に止まってしまいましたね」
さきほどからシーラは一切のギャンブルをやめてしまったため、べモンドは餌をぶら下げられた馬のようにお預けを食らうことになった。
「それもこれもあの小僧のせいだ!」
現在モニターに映っているのはピート。彼がカードゲームに興じると、シーラはぴったりと寄り添いそれを見学していた。
お蔭で一度高まったギャンブル熱も冷めてしまい、このままでは借金漬けどころか渡したお金すら余らせてしまうだろう。
「今すぐあのテーブルに凄腕のギャンブラーを送りこめ!」
ギャンブルシティではそれを生業としているギャンブラーが存在する。彼らは運に身を任せることなくその場の流れや確率など、ありとあらゆる要素を味方につけて勝ち上がっていく。
べモンドはその内の何人かを子飼いにしていた。
「カードゲームならばホイスラーに行かせましょう。彼はこれまでも数多くの人間を破滅させてましたから」
ミモザはそう言うと、早速カジノにいる人間に連絡を飛ばすのだった。
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