大賢者の遺物を手に入れた俺は、好きに生きることに決めた

まるせい

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第40話 再会

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「こちらの施設はダンジョンへ潜る際に登録する管理所となっております。まずは……」

「ちょっと待ってくれ!」

「はい?」

 説明を続けようとする受付嬢の言葉を俺は遮った。

「いまダンジョンとか言ったか?」

「はい、バベル内にあるダンジョンのことですが……?」

 戸惑う様子を見せる受付嬢に俺は困惑する。

「そもそもこのバベル自体がダンジョンという認識だったのだけど……」

 俺とシーラがお互いに目を合わせていると、

「それは外の世界から来た人たちの誤解です。ダンジョンはバベルの中に存在しています」

 受付嬢は強く否定して見せた。

「他の領にはありませんが、トゥレス領の各層にはダンジョンの入り口が存在しています。ダンジョンは神の試練と考えられており、中には強力なモンスターが存在しています。そこで倒したモンスターの死骸からは魔石が手に入ります」

 受付嬢はそのままダンジョンの説明を続けていく。

「ダンジョンは各層によって出現するモンスターの強さが違っています。下層は弱いモンスターが出現し、上の層に上がるにしたがって強いモンスターが現れるようになります」

 シーラはその説明に聞き入ると緊張した表情をしていた。

「この詰め所こそがダンジョンに入る人間を管理する管理所で、ダンジョンに潜って魔石やモンスターの肉を手に入れ売ることを生業にしている人たちを探索者と呼んでいるのです」

 それで謎が解けた。
 この領地にきてからどうにも外の世界と似通う気配があるかと思ったが、何のことはない。戦いに身を置く人間の荒々しい雰囲気を感じ取っていたようだ。

「ダンジョンに潜るにはこの領地に所属しなければならないということか?」

「いえいえ、このトゥレス領は探索者を縛ったりはしません。当主の方針で、来るもの拒まずさるもの追わずです。ただし、ダンジョンに潜った時の収入の二割は納めてもらうことになりますけど」

 このバベルには身分証があるからだろう、外の世界の冒険者ギルドと違って手続きも簡易的で自由な印象だ。

「つまり俺たちがすぐにでも潜ることができるってことか?」

 一度どんなモンスターが出るのか確認しておきたい。

「いえ、直ぐには無理です。我々が欲しいのは安定して物資を供給してくれる人材です。まずは最下層からチャレンジしていただき、問題ないと認められれば上の層へと入っていただくようになります」

「ね、ねぇピート。もしかして私も入るの?」

 俺たちと言葉にしたからには一緒に潜ってももらうつもりだ。
 シーラもぼちぼち魔法を発現させられるようになってきたし、実戦で得られる経験値というのはでかい。

「最下層となると、えすかれぇたぁで降りる必要があるんだな……」

 二層から十二層までとなるとかなり時間がかかりそうだ。面倒だなとためいきを吐いていると……。

「なんでぇ、見かけねえ顔だと思って警戒してみりゃただのルーキーかよ」

「ったく紛らわしい!」

「どうせ外の世界から来たとか嘘に決まってるだろ!」

「おい新人、そっちのねーちゃんを置いて行けよ」

 さきほどまで縮こまっていた連中が立ち上がり、入り口を塞ぎながら俺とシーラを囲む。

「なあ、これはどうすればいいんだ?」

 俺はうんざりした口調で受付嬢に質問をするのだが……。

「ぎゃはははは、女に守ってもらおうとか根性のねえやつめ」

 受付嬢は何かに気付いた様子をみせると何事もなく仕事へと戻った。

「ねぇ、ピート」

 受付が見て見ぬふりをするということは暴れてしまって構わないのだろう。

 シーラが不安そうにしているので笑いかけてやり、俺は目の前の連中をぶちのめそうとするのだが……。

「は?」

 なにか音がしたかと思うと男が頭から突っ込んできた。俺はシーラを抱き寄せると男を避ける。
 男は遠くの壁へと激突して意識を失った。

「いきなり何しやがるっ!」

 残りの三人が入り口から入ってきた人物に怒鳴りつけた。

「どうしたのさお姉ちゃん、いきなり走り始めて」

 何やら聞いたことがある声が耳に入った。

「……匂いがしたから」

 そんなはずがないと思いつつも表情が強張る。

「どうしたのピート?」

 シーラが心配そうにしながら俺の右手を握りしめた。

「なんだお前ら、またこりもせずに新人に絡んでいるのか?」

「ひっ……あんたらは……」

 男たちが怯え入り口からどきはじめる。

 聞き覚えのある男の声。奴らがここにいるわけがないと思いつつも、同時にありえそうだと考えてしまう自分がいる。

「皆さんまってくださいよぉ」

 男たちがいなくなり完全に入り口が視認できるようになり、可愛らしい声をしたメイド服を着た少女がドアに立つと目が合い…………。

「「「ピートッ!?」」」「姫様っ!?」「ミラっ!?」

 五者五様に大声を上げるのだった。




 酒場のテーブル席に六人揃って腰掛ける。
 俺の隣にはシーラが座りその横にはミラと呼ばれたメイドが座りシーラを見ている。

 正面にはブレッドが座りその横にメリルとメリッサがいてじっと俺を見ている。

 それぞれの目の前には飲み物が入ったコップが置かれているのだが、誰一人として手を付ける人間はいなかった。

 頭の中に様々な考えが巡る。突然知り合いに遭遇して混乱してはいるが、いつまでもこのままにはしておけないだろうと思い俺は口を開いた。

「まさか、あんたらが犯罪を犯すとは……」

「「「えっ?」」」

「ここにいるってことは犯罪を犯して投獄されたんじゃないのか?」

「そんなわけないでしょ!」

「……心外」

 メリルが立ち上がり激怒し、メリッサも表情には出ていないが怒っているようだ。

「だったらどうしてお前らがここにいる?」

 至極当然の推理にブレッドが答えた。

「馬鹿野郎っ! お前を助けに来たに決まっているだろ!」

 その言葉に開いた口が塞がらなくなる。

 よくよく考えると、バベルに入っているということはゲートで犯罪チェックを潜り抜けたということだ。

「そうだよっ! 戻ったらピートが深淵ダンジョン送りにされたって聞いて驚いたんだからね!」

「……心配した」

 ブレッドがメリルがメリッサが安心したような表情を浮かべている。今だから気付くが彼らは昔からこんな顔をして俺を見ていた気がする。

「そういうミラ、あなたもどうして?」

「ブレッドさんたちが攻略者に志願して深淵ダンジョンに潜る予定で、私は姫様亡きあとに犯罪者として一緒に入ることになったんです。それでここまで協力していただき……うわぁーーーん、無事でよかったです」

 目に大粒の涙を浮かべでシーラに抱き着く。シーラもミラを抱きしめては目に涙を浮かべていた。

「つまり、ルケニア側の入り口が閉じていたからあんたらはわざわざトラテムまで移動して攻略者になって俺を助けにきたと?」

 馬鹿けている。ここまで来たからにはそれがどれほど危険だったかわからないはずがない。

 外の世界で事あるごとに俺を気に掛けるそぶりを見せていたブレッド。
 何かあるごとに会いに来ては俺をからかったメリル。
 いつの間にか近くにいて、俺をじっと見つめていたメリッサ。

 上辺だけだと思っていた、だけどこうして命懸けでここまで来てくれたなら認めないわけにはいかなかった。
 彼らは本気で俺のことを考えていたのだと……。

「どうしてそこまでできる。自分が死ぬかもしれない深淵ダンジョンに、俺なんかを助けにくるなんて……。なんでなんだよ?」

 声が震え泣きそうになる。冒険者ギルドで誰にも味方してもらえず、外の世界を切り捨てたつもりだった。
 だというのに、切り捨てたはずのモノにこうして感情を乱されるなど……。

「そんなの決まってる。ピートのことが大好きだからだよ」

「うん、愛しているから」

「まあ、俺はこいつらの保護者だからな」

 三者三様の言葉を聞き、俺は三人を見つめ言葉を出そうとするのだが……。

「えっ! 姫様、そちらのピートさんと付き合ってるんですか!」

 ミラの声が酒場に響いた。
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