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第12話 危険察知能力
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「まず、俺がレイドル王に向かって怒鳴ったのは覚えていますか?」
「ええ、半ば眠りに落ちそうになっていた時にいきなりあなたが動くものだから驚いたわね」
人の命が掛かったあの状況で寝ていたという情報を聞かされ逆に俺の方が驚く。
「あの時、俺の首筋に斬られたかのような痛みが走ったんです」
「それは……どういうことなの?」
俺の情報に彼女が混乱する。こういう表情を拝むのは初めてなので新鮮だ。
「恐らく、国王がワインを飲むことで俺が死ぬ条件が満たされるはずだったんでしょうね」
彼女は口元に手をやりしばらく考え込むと、
「つまり、国王が死ぬとあなたも死ぬはずだった?」
俺は彼女の言葉に頷く。
「その通りです。ギリギリのところでそれに気付いた俺は、焦りながら国王を止めたんです」
「でも、それだけで断定できる?」
胡散臭い者を見るような表情をオリヴィアは俺へと向ける。
「その時はそれに気付けませんでしたが、貴女に庇ってもらっている間に色々試しましたからね」
「もう少し、わかりやすく言いなさい」
遠回しな言い方が気に入らないのか、彼女は眉根を寄せると俺を睨みつけた。
「まず、ワインに毒が入っていた件、これは後で実験動物を使って確認したから間違いないわ。でも、あの時点でそれを知っていたのは犯人のズンポイだけのはず。どうやってあのワインに毒が入っていると確信したのかそれを教えなさい」
じらしたつもりはないのだが、オリヴィアは有無を言わさぬ態度で俺に命令をしてきた。
「その答えは簡単です。俺があのワインを飲もうと考えたからです」
俺は自分の能力が【自分に死が迫った段階で発動する】ものだと推測した。
そして、その推測が正しいのかどうか検証をするため、証明の方法としてあのワインを飲むことを考え、提案しようとしたのだ。
すると不思議なことにワイン飲むと決めた瞬間から喉を焼けるような痛みが走ったのだ。
その瞬間、俺は自分に能力があると確信する。
俺の能力は、自分に死が迫るとどのような死に方をするのか痛みを与えて教えてくれる能力らしい。
そして、その痛みは俺が行動を変えるか、死を回避する行動を取るまで消えることはない。
俺は喉の痛みを感じた瞬間から、ワインに毒が入っていることを疑っていなかった。
「なるほどね、それなら確かに能力の説明とも辻褄が合うし、合理的な検証よ。でもそれだと説明が足りていないわ。あなたはどうしてズンポイが犯人だとわかったの?」
今の説明では確かに不十分だろう。答えを求めるようにオリヴィアは更なる追及をしてきた。
「あの時点ですぐズンポイが犯人だとわかったわけではありません。俺が毒を混入した犯人を挑発したのは見てましたよね?」
「ええ、臆病者の癖に急に饒舌になって気持ち悪いとは思ったわ」
オリヴィアの言葉が辛辣で、乾いた笑が浮かぶ。俺はひくつく頬を引き締めると説明を続けた。
「……まあいいですけどね。あの時に俺の言葉に苛立ち殺意を向けてくる人間こそ犯人だったんですよ。そしてズンポイからそれを感じたとき、今回の事件がかみ合いました」
「貴方の能力で、犯人が自分を害する未来を作り上げて犯人を特定したということまではわかったけど……。毒物を持っている保証はなかったのでは?」
オリヴィアは首を傾げる。それにももちろん理由があったので、俺は説明を続ける。
「最初の時点で、俺は国王が死んだ場合首を斬られて死ぬ運命になっていました」
「ええ、あなたの話を聞く限りそうね」
「では、どうして首を斬られるかわかりますか?」
「そんなこと、わかるわけないわ」
俺の自信満々な態度にオリヴィアはむっとした表情で応える。
ズンポイが犯人であることと合わせると答えは簡単だ。
「恐らく、ズンポイに罪を擦り付けられるからだったんでしょうね。あの時、ズンポイは俺の後ろに立っていた。国王が毒で死んだ場合、周囲は混乱し騒動になるでしょう。その騒動に紛れて俺に毒物を押し付けることこそズンポイの狙いだったのです」
結果として、俺は国王毒殺の罪でその場で首を落とされるという未来が待っていた。
「後は、ズンポイが犯人だと言った時詰め寄ってきたところも怪しかったですね。恐らく、あの時に毒を押し付けてしまおうと考えていたのかと」
もっとも、それはオリヴィアが遮ったおかげで防がれてしまったのだが。
「とりあえず、これが今回の事件における立ち回りのすべてです」
俺が語り終えると、オリヴィアは……。
「そういうこと、スッキリしたわ」
問題は、俺の力が【危険察知】だとして、どうしてローウェルとアマンダ陣営ではダメだったのかという点についてだが、こればかりは回避してしまった後では知りようがない。
俺は考え込むオリヴィアを横目に紅茶を淹れることにする。
彼女との会話で緊張してしまい、喉が渇いていたからだ。
俺が準備をしている間、オリヴィアは口元に手を当て、何やらぶつぶつと呟いている。深く考え込んでいるようで、俺が「紅茶を飲むか?」と問いかけても返事がない。
しばらくして考えがまとまったのか、彼女の視線が動いた。
「決めたわ」
「何をですか?」
俺はカップを片手に紅茶を飲みながら彼女が何を決めたのか問いかける。
「あなたが国王になりなさい」
「はっ?」
彼女の突拍子もない爆弾発言に、俺は手に持つカップを落とすのだった。
「ええ、半ば眠りに落ちそうになっていた時にいきなりあなたが動くものだから驚いたわね」
人の命が掛かったあの状況で寝ていたという情報を聞かされ逆に俺の方が驚く。
「あの時、俺の首筋に斬られたかのような痛みが走ったんです」
「それは……どういうことなの?」
俺の情報に彼女が混乱する。こういう表情を拝むのは初めてなので新鮮だ。
「恐らく、国王がワインを飲むことで俺が死ぬ条件が満たされるはずだったんでしょうね」
彼女は口元に手をやりしばらく考え込むと、
「つまり、国王が死ぬとあなたも死ぬはずだった?」
俺は彼女の言葉に頷く。
「その通りです。ギリギリのところでそれに気付いた俺は、焦りながら国王を止めたんです」
「でも、それだけで断定できる?」
胡散臭い者を見るような表情をオリヴィアは俺へと向ける。
「その時はそれに気付けませんでしたが、貴女に庇ってもらっている間に色々試しましたからね」
「もう少し、わかりやすく言いなさい」
遠回しな言い方が気に入らないのか、彼女は眉根を寄せると俺を睨みつけた。
「まず、ワインに毒が入っていた件、これは後で実験動物を使って確認したから間違いないわ。でも、あの時点でそれを知っていたのは犯人のズンポイだけのはず。どうやってあのワインに毒が入っていると確信したのかそれを教えなさい」
じらしたつもりはないのだが、オリヴィアは有無を言わさぬ態度で俺に命令をしてきた。
「その答えは簡単です。俺があのワインを飲もうと考えたからです」
俺は自分の能力が【自分に死が迫った段階で発動する】ものだと推測した。
そして、その推測が正しいのかどうか検証をするため、証明の方法としてあのワインを飲むことを考え、提案しようとしたのだ。
すると不思議なことにワイン飲むと決めた瞬間から喉を焼けるような痛みが走ったのだ。
その瞬間、俺は自分に能力があると確信する。
俺の能力は、自分に死が迫るとどのような死に方をするのか痛みを与えて教えてくれる能力らしい。
そして、その痛みは俺が行動を変えるか、死を回避する行動を取るまで消えることはない。
俺は喉の痛みを感じた瞬間から、ワインに毒が入っていることを疑っていなかった。
「なるほどね、それなら確かに能力の説明とも辻褄が合うし、合理的な検証よ。でもそれだと説明が足りていないわ。あなたはどうしてズンポイが犯人だとわかったの?」
今の説明では確かに不十分だろう。答えを求めるようにオリヴィアは更なる追及をしてきた。
「あの時点ですぐズンポイが犯人だとわかったわけではありません。俺が毒を混入した犯人を挑発したのは見てましたよね?」
「ええ、臆病者の癖に急に饒舌になって気持ち悪いとは思ったわ」
オリヴィアの言葉が辛辣で、乾いた笑が浮かぶ。俺はひくつく頬を引き締めると説明を続けた。
「……まあいいですけどね。あの時に俺の言葉に苛立ち殺意を向けてくる人間こそ犯人だったんですよ。そしてズンポイからそれを感じたとき、今回の事件がかみ合いました」
「貴方の能力で、犯人が自分を害する未来を作り上げて犯人を特定したということまではわかったけど……。毒物を持っている保証はなかったのでは?」
オリヴィアは首を傾げる。それにももちろん理由があったので、俺は説明を続ける。
「最初の時点で、俺は国王が死んだ場合首を斬られて死ぬ運命になっていました」
「ええ、あなたの話を聞く限りそうね」
「では、どうして首を斬られるかわかりますか?」
「そんなこと、わかるわけないわ」
俺の自信満々な態度にオリヴィアはむっとした表情で応える。
ズンポイが犯人であることと合わせると答えは簡単だ。
「恐らく、ズンポイに罪を擦り付けられるからだったんでしょうね。あの時、ズンポイは俺の後ろに立っていた。国王が毒で死んだ場合、周囲は混乱し騒動になるでしょう。その騒動に紛れて俺に毒物を押し付けることこそズンポイの狙いだったのです」
結果として、俺は国王毒殺の罪でその場で首を落とされるという未来が待っていた。
「後は、ズンポイが犯人だと言った時詰め寄ってきたところも怪しかったですね。恐らく、あの時に毒を押し付けてしまおうと考えていたのかと」
もっとも、それはオリヴィアが遮ったおかげで防がれてしまったのだが。
「とりあえず、これが今回の事件における立ち回りのすべてです」
俺が語り終えると、オリヴィアは……。
「そういうこと、スッキリしたわ」
問題は、俺の力が【危険察知】だとして、どうしてローウェルとアマンダ陣営ではダメだったのかという点についてだが、こればかりは回避してしまった後では知りようがない。
俺は考え込むオリヴィアを横目に紅茶を淹れることにする。
彼女との会話で緊張してしまい、喉が渇いていたからだ。
俺が準備をしている間、オリヴィアは口元に手を当て、何やらぶつぶつと呟いている。深く考え込んでいるようで、俺が「紅茶を飲むか?」と問いかけても返事がない。
しばらくして考えがまとまったのか、彼女の視線が動いた。
「決めたわ」
「何をですか?」
俺はカップを片手に紅茶を飲みながら彼女が何を決めたのか問いかける。
「あなたが国王になりなさい」
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