クラス転移、異世界に召喚された俺の特典が外れスキル『危険察知』だったけどあらゆる危険を回避して成り上がります

まるせい

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第14話 パメラと買い出し

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「シンジさん、聞いてます?」

「えっ、あっ、ごめん。なんだっけ?」

「お代わりがいるか聞いてるんですよ」

 思考している間にも食事が進んでいたようで、気が付けば皿が空っぽになっていた。

「ああ、悪い。頼んでもいいかな?」

「ふふふ、お任せください。シンジさんが一杯食べてくれるから作り甲斐があります。姫様は少ししか食べてくれませんからね」

 パメラが上機嫌で皿を持つと出ていく。

「それなりに上手くやっているのね」

 オリヴィアはナフキンで口元を拭うと俺を見た。さきほどまで完全に無視していたくせに、パメラがいなくなったら話し掛けてきたのだ。

「こっちの世界にきて初めて優しくしてくれたのがパメラですからね。仲良くもなりますよ」

 一応、主人であるはずのオリヴィアは完全に俺を放置していた。

 彼女は探るような視線を俺に向けている。その視線に居心地の悪さを感じていると、

「あなたが国王になればパメラも思いのままにできるわよ?」

「ぶっ!」

 あまりにも予想外な言葉に噴出した。

「あの娘、見た目も可愛いし、育つところも育っているから、あなたの有り余る肉欲をぶつけるのにはぴったりじゃない?」

 オリヴィアの飾らない言葉にそういった想像をしそうになり思考を振り払う。

「そ、そんなことするわけないでしょう」

「そう? でもあなた、私の裸を舐めるように見ていたじゃない?」

 数週間前の話を持ち出される。あの時は気にしていないのか、俺を認識していないものだと考えていたのだが、どうやら覚えていたらしい。

「あ、あれは不可抗力でしょう!」

 オリヴィアにしてみると、自分の行動の途中に誰がいようと気にしないのだろうが、先に風呂に入っていたのは俺なのだ。責められるいわれはない。

「まぁ、どちらでもいいわ」

 彼女は興味を失ったように俺から視線を逸らすと、

「それじゃあ、私は部屋に戻るから」

 そう言って出て行ってしまった。

「あれ、姫様はもう戻られたんですか?」

 それから少しして、パメラが皿を持って戻ってきた。

 俺は、オリヴィアとのやりとりのせいもあり、彼女の顔を直視することができなかった。







「さて、今日は張り切って準備をしましょうね」

 数日後、俺とパメラは街に買い出しにきていた。

「それにしても、姫様は適当というか……。大事な試練の準備なのに本人は屋敷に引っ込むか?」

「仕方ないですよ、姫様は人のいる場所が嫌いなので」

 パメラと話しながら街を歩く。こうしているのには理由がある。

 先日、城から遣いの人間がきて、最初の試練内容が伝えられたからだ。

「最初の試練は、迷宮の踏破か」

 召喚から二ヶ月になると、とある場所に迷宮が出来上がると文献にあるらしい。

 王候補と俺たち召喚者の最初の試練はその迷宮を踏破すること。

「中には大量のモンスターもいるみたいですからね、準備は入念にしておかないといけませんよ」

 そのために支度金として各陣営には金貨千枚が与えられている。

 この世界で金貨一枚は大体元の世界の十万円に相当する。ちなみに、銀貨は一枚一万円、銅貨は一枚百円だ。

「他の陣営は武器や防具を買い揃えるにしても人が一杯ですからね、その点、姫様の陣営は少数精鋭ですから」

「物は言いようだが、単なる人手不足なんだよな」

 パメラのおどけた言い方に頬が緩む。

「とにかく、迷宮では何があるかわかりませんからね、必要そうな物をバンバン買って行きましょう」

 パメラのやる気ある声につられると、俺は後ろからついていくのだった。



「それにしても、迷宮で必要な物ってなんだろうな?」

 市場を歩きながら陳列している商品を流し見する。

 そこには日持ちする食糧だったり、手作りの装飾品、他にも雑貨など様々な品物が並べられている。

 この世界の常識は学んだ俺だが、試練ともなると身構えてしまう。

「活動する分の食糧と、照明道具。怪我をした時の治療道具じゃないでしょうか?」

 パメラは口元に手を当てると首を傾げながら答えた。

「となると、水袋と日持ちする食糧を多めにか。姫様って魔法はある程度使えるんだっけ?」

「あれをある程度と言って良いのかはわかりませんが、使えますね」

 パメラに質問をすると濁された。だが、それなら照明と水に関しては彼女の魔法を頼るとして魔導具を用意する必要はないだろう。

「そうだ、姫様からはまずシンジさんの武器と防具を見るように言われています。なので、ここでの買い物は後回しにして王家御用達の鍛冶屋に行きますよ」

「わ、わかった……」

 予測はしていたが、俺も戦わなければいけない現実に胃が痛むと俺はパメラについて行った。


「これが、この店にある最高の武器と防具だ」

 あれから、鍛冶屋を訪れた俺たちを店主は笑顔で迎え入れてくれた。

「うーん、動きやすそうではありますが、これで攻撃を防げるんでしょうか?」

 あらかじめ用意されていた防具を渡された俺は、試着室で着替えさせられた。

 着替えた俺を、パメラはアゴに手を当てると、厳しい目で見ている。

「軽量なのはミスリル糸とオリハルコン糸で編み込んだものを内側に仕込んであるからな。よほどの攻撃を受けなければ耐えられるだろう」

 店主が言う通り、これまでの訓練着と比べても全然軽い。おまけに、膝や肩などの関節部分が自在に動かせるので行動を阻害することがなく、本当に防具を身に着けているのかわからないレベルの快適さだ。

「そっちの魔法剣も、ちょいと魔力を込めれば切れ味が上がる、さらには四属性を切り替える精霊石が仕込んであるからどんなモンスターが現れても対処できるってわけだ」

 自慢するように武器の性能についてもレクチャーされる。最高傑作というのは伊達ではないようだ。

「なるほど、それは良いですね。ではこちらを買って帰ります」

「あいよ。金貨千枚になるぞ」

「はーい。お城に支度金がありますから、そちらに請求してもらっていいですか?」

「ちょ、ちょっと待った!」

 とんとん拍子に進む会話に俺は待ったをかけた。

「どうしたんですか、シンジさん?」

「これ以上の出物はこの国のどこにもねえぞ?」

 首を傾げるパメラと店主。

「いや、支度金は金貨千枚なんだろ? ここで全部使いきったら他に何も買えないだろ?」

 俺の疑問にパメラは口元に手を当て考える。

「ん~? でも、姫様からはこれを買うように言われているんですよ。違うものを買って帰ったら叱られてしまいます」

「あの姫様、何考えてるんだ?」

 支度金は陣営全体を充実させるために使うべき金だ。それを俺の装備に絞ってしまっては他が補えないではないか。

「さあ、もしかして何も考えていないのかも?」

 パメラの言葉に力が抜ける。もしかするとずっと仕えているパメラには真意を話しているのかと思ったのだが、この様子からしてそれはなさそうだ。

「仕方ねえ、まけてやる。金貨九百九十枚でいいぞ」

「それはありがたいですが……」

 オリヴィアの命令は絶対だ。結局俺は鍛冶屋の主人の厚意に甘えると、残った金貨十枚で必要な食糧と医療具を買って準備を終えるのだった。
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