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第19話 眠り姫様
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「シンジさん、姫様が目覚めました!」
訓練場で剣を振っていると、パメラが現れた。
遠く離れた廊下から大声で叫ぶと、彼女は胸に手を当て呼吸を整えた。
俺に知らせるためにここまで走ってきたのだろう。
「わ、わかった。すぐ行くっ!」
俺は急いで剣を鞘へと納める。
「悪いけど、抜けさせてもらう」
「ああ、行ってやれ」
「ちっ!」
佐藤と小林に声を掛けると、俺はパメラの下へと急いだ。
「姫様に異常はないのか?」
俺は恐る恐る確認する。
「ええ、まだ自分の状況を把握できていないのか寝ぼけている様子ですが、健康に問題はありません。治癒士のお墨付きです」
「そっか、良かった……」
ほっと息を吐く。
「まずは姫様にあって話をしたい。急ごう」
俺はパメラに声を掛けると、急ぎ足でオリヴィアが寝ている部屋へと向かうのだった。
荘厳な作りのドアの前に立つ。
城の中でも高位の人間でなければ使うことを許されない部屋だ。
試練が終わり、オリヴィアがこの部屋に運び込まれてから一週間が経過した。
その間、彼女が目を覚ますことはなく、治癒士とパメラが泊まり込んで治療にあたっていた。
俺もこの一週間、城に寝泊まりをしていたのだが、最悪の状況が頭をよぎるせいで訓練に明け暮れていた。
今は一刻も早くオリヴィアの無事を確認したい。
廊下の後ろにパメラの姿が映ったが、彼女が追い付くまでまだ時間が掛かる。焦れた俺はドアを開けることにした。
「姫様、無事か!」
次の瞬間、目に飛び込んで来たのはオリヴィアの肢体だった。
身体を清めている最中だったのか、水に濡らしたタオルで身体を拭いている。
雫が身体に張り付き流れていく、彼女も突然現れた俺をみて驚いていた。
俺は彼女の肢体を観察する。倒れた原因はムカデの毒ではないと言われているが、本当にそうなのか、外傷がないか確認をしたかったからだ。
先日の浴場同様、綺麗な肌が目に映る。流れるように胸元を隠す艶やかな髪。程よく膨らんだ二つの山、釣り上がった目に、赤く染まった肌。
先日の記憶と少し違う部分があるが、おおむね問題なさそうだ。俺がそう考えて安心していると……。
「とっとと出ていきなさいよ! 馬鹿ぁーーーーー!!」
彼女は目に涙を浮かべて、近くにあった壺を掴むと俺に投げつけてきた。
「本当に、申し訳ありません」
改めて、オリヴィアが着替えを終えたので部屋へと通される。
俺は入るなり土下座をすると、彼女に許しを請うた。
「ふんっ!」
天蓋付きのベッドに腰掛け、腕を組みながら顔を背ける。用意してあったドレスに着替えているのだが、恐ろしく似合っている。
それにしてもこの反応は何だろう?
以前、浴場であった時は無視されたのだが、一方的に裸を見られるのは気に入らないということなのか。謝罪をするなら俺も脱がなければ駄目だろうか?
「駄目ですよ、シンジさん。着替え中の姫様の部屋に入るなんて」
そんなことを考えていると、パメラが眉根を寄せて怒っていた。
怒るというよりは諭す感じで、どこか甘さの残る裁定に見える。お姉さんに怒られているようでいまいち迫力に欠けた。
「ごめん、まさか着替えてるとは思わなくて……」
一刻も早くオリヴィアの元気な姿を見たいと思ったからなのだが、それは言い訳にはならない。
「姫様も、ごめんなさい」
俺は真剣な表情で、再度頭を下げた。
「別に、良いわよ。あんたに見られたところで気にしないから」
「そういうセリフは耳を赤くしながら言っても逆効果ですよ、姫様」
「なっ!」
パメラの指摘にオリヴィアは慌てふためく。彼女のこのような表情はこれまで見たことがない。
「それで、姫様。あれから何があったんだ?」
ムカデの毒にやられて倒された後のことを俺は知らない。彼女に救われたのならそれをきちんと認識しておきたくて聞いてみる。
「別に、あなたが倒れたから私が魔法で倒しただけよ」
どうやら概ね予想通りらしい。
「俺に解毒剤を飲ませたのも姫様?」
既に意識を失っていて身体の自由も効かなくなっていた。自分で飲んだとは考え辛い。
俺が確認をすると、彼女は自分の唇に手を触れ、何かを思い出したかのように顔を赤くする。まだ体調が戻っていないのだろうか?
「そ、そうよっ! 私が飲ませてあげたの」
「ありがとうございます。あのままだと死んでいましたよ」
事実が判明したので、改めて俺はオリヴィアに頭を下げた。
「それで、結局、姫様はなんで一週間の眠り込んだんですか?」
彼女の容態について知っておきたい。俺は真剣な声でオリヴィアに質問する。
「それはですね、姫様は――」
「パメラ、口を噤みなさい」
「ひ、姫様?」
何か言葉を発しようとしたパメラを、オリヴィアは睨みつけると黙らせた。
張りつめた空気が部屋の中に発生する。
「こいつにだけは……言わないで」
そして、細い声を出しパメラに懇願した。
瞳が揺れていて不安そうな表情を見せる。
「わ、わかりましたよ。姫様の仰せのままに」
納得した様子のパメラだが、俺としては非常に気になるところだ。
「あなたも探りを入れるんじゃないわよ?」
睨みつけてくるオリヴィアに俺は頷くと、
「わかりました」
それ以上の追及が出来なくなった。
訓練場で剣を振っていると、パメラが現れた。
遠く離れた廊下から大声で叫ぶと、彼女は胸に手を当て呼吸を整えた。
俺に知らせるためにここまで走ってきたのだろう。
「わ、わかった。すぐ行くっ!」
俺は急いで剣を鞘へと納める。
「悪いけど、抜けさせてもらう」
「ああ、行ってやれ」
「ちっ!」
佐藤と小林に声を掛けると、俺はパメラの下へと急いだ。
「姫様に異常はないのか?」
俺は恐る恐る確認する。
「ええ、まだ自分の状況を把握できていないのか寝ぼけている様子ですが、健康に問題はありません。治癒士のお墨付きです」
「そっか、良かった……」
ほっと息を吐く。
「まずは姫様にあって話をしたい。急ごう」
俺はパメラに声を掛けると、急ぎ足でオリヴィアが寝ている部屋へと向かうのだった。
荘厳な作りのドアの前に立つ。
城の中でも高位の人間でなければ使うことを許されない部屋だ。
試練が終わり、オリヴィアがこの部屋に運び込まれてから一週間が経過した。
その間、彼女が目を覚ますことはなく、治癒士とパメラが泊まり込んで治療にあたっていた。
俺もこの一週間、城に寝泊まりをしていたのだが、最悪の状況が頭をよぎるせいで訓練に明け暮れていた。
今は一刻も早くオリヴィアの無事を確認したい。
廊下の後ろにパメラの姿が映ったが、彼女が追い付くまでまだ時間が掛かる。焦れた俺はドアを開けることにした。
「姫様、無事か!」
次の瞬間、目に飛び込んで来たのはオリヴィアの肢体だった。
身体を清めている最中だったのか、水に濡らしたタオルで身体を拭いている。
雫が身体に張り付き流れていく、彼女も突然現れた俺をみて驚いていた。
俺は彼女の肢体を観察する。倒れた原因はムカデの毒ではないと言われているが、本当にそうなのか、外傷がないか確認をしたかったからだ。
先日の浴場同様、綺麗な肌が目に映る。流れるように胸元を隠す艶やかな髪。程よく膨らんだ二つの山、釣り上がった目に、赤く染まった肌。
先日の記憶と少し違う部分があるが、おおむね問題なさそうだ。俺がそう考えて安心していると……。
「とっとと出ていきなさいよ! 馬鹿ぁーーーーー!!」
彼女は目に涙を浮かべて、近くにあった壺を掴むと俺に投げつけてきた。
「本当に、申し訳ありません」
改めて、オリヴィアが着替えを終えたので部屋へと通される。
俺は入るなり土下座をすると、彼女に許しを請うた。
「ふんっ!」
天蓋付きのベッドに腰掛け、腕を組みながら顔を背ける。用意してあったドレスに着替えているのだが、恐ろしく似合っている。
それにしてもこの反応は何だろう?
以前、浴場であった時は無視されたのだが、一方的に裸を見られるのは気に入らないということなのか。謝罪をするなら俺も脱がなければ駄目だろうか?
「駄目ですよ、シンジさん。着替え中の姫様の部屋に入るなんて」
そんなことを考えていると、パメラが眉根を寄せて怒っていた。
怒るというよりは諭す感じで、どこか甘さの残る裁定に見える。お姉さんに怒られているようでいまいち迫力に欠けた。
「ごめん、まさか着替えてるとは思わなくて……」
一刻も早くオリヴィアの元気な姿を見たいと思ったからなのだが、それは言い訳にはならない。
「姫様も、ごめんなさい」
俺は真剣な表情で、再度頭を下げた。
「別に、良いわよ。あんたに見られたところで気にしないから」
「そういうセリフは耳を赤くしながら言っても逆効果ですよ、姫様」
「なっ!」
パメラの指摘にオリヴィアは慌てふためく。彼女のこのような表情はこれまで見たことがない。
「それで、姫様。あれから何があったんだ?」
ムカデの毒にやられて倒された後のことを俺は知らない。彼女に救われたのならそれをきちんと認識しておきたくて聞いてみる。
「別に、あなたが倒れたから私が魔法で倒しただけよ」
どうやら概ね予想通りらしい。
「俺に解毒剤を飲ませたのも姫様?」
既に意識を失っていて身体の自由も効かなくなっていた。自分で飲んだとは考え辛い。
俺が確認をすると、彼女は自分の唇に手を触れ、何かを思い出したかのように顔を赤くする。まだ体調が戻っていないのだろうか?
「そ、そうよっ! 私が飲ませてあげたの」
「ありがとうございます。あのままだと死んでいましたよ」
事実が判明したので、改めて俺はオリヴィアに頭を下げた。
「それで、結局、姫様はなんで一週間の眠り込んだんですか?」
彼女の容態について知っておきたい。俺は真剣な声でオリヴィアに質問する。
「それはですね、姫様は――」
「パメラ、口を噤みなさい」
「ひ、姫様?」
何か言葉を発しようとしたパメラを、オリヴィアは睨みつけると黙らせた。
張りつめた空気が部屋の中に発生する。
「こいつにだけは……言わないで」
そして、細い声を出しパメラに懇願した。
瞳が揺れていて不安そうな表情を見せる。
「わ、わかりましたよ。姫様の仰せのままに」
納得した様子のパメラだが、俺としては非常に気になるところだ。
「あなたも探りを入れるんじゃないわよ?」
睨みつけてくるオリヴィアに俺は頷くと、
「わかりました」
それ以上の追及が出来なくなった。
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