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プロローグ
可愛い後輩くん
しおりを挟むすっかり元気になったオレは保健室に直行し、ひたすら書類を片付けていた。
あれはあれこれはこれこっちはあっちでどっちがそっち?と謎の呪文を唱えながら牛乳片手に頑張った。
結果全ての書類が終わった。
時計を見れば短針が1を指しており、思ったより時間かかったなーと思いながら購買へ向かう準備をする。
まあ準備と言ってもすぐに終わる。
充電器にさしっぱだったタブレットを片手に、先生不在の札をかけておく。
ふとタブレットの通知が溜まっていることに気がつく。それはオレがよく知る後輩からのメッセージだった。
『件名︰お昼ご飯一緒に食べません?
先輩と久々に会いたいな、なんて』
それに「りょーかい」とメッセージを送ってから数秒もしないうちに既読がつき、『購買集合しましょ』と返ってきた。
可愛いなあと思いつつ他に溜まっていた数件の通知を処理してからゆっくりと向かった。
──────
────────────────
「せんぱーいっ」
と大きな声でオレを呼んでいるのはの可愛い後輩くん馳 真尋だ。担当は物理・化学講師。クラスは持っていない。
ここで豆知識、ヒロは妙にカッコつけだがコーヒーだけは砂糖を何個入れようがミルクを何杯入れようが飲めない。それを必死に隠そうとしているところがかわいい。理想の後輩って感じだ。
「へへっお久しぶりです」
「おひさー」
「ガツガツ食べます?」
「うん」
「ご飯系にしましょっか」
「そうだねー」
「あっオムライスありますよ。先輩はこれだね」
「うん決まり」
「じゃあ僕はパエリアにしようっと」
「いいじゃん」
「分けっこする?」
「する」
会話からわかると思うがヒロはめちゃめちゃ世話を焼いてくれる。面倒見がすごくいい。
そんでもってたまに出るタメ口がほんとにかわいい。オレはもうメロメロだ。
そんなこんなで袋片手に庭園にある大きな木の下でピクニックすることになりやってきた。木の下に。
庭園は中庭とはまた違った雰囲気で豪華な花々が花壇ごとに咲いておりここからちょっと歩いたところには大きな噴水もある。
そういえばとヒロが口を開く。
「先輩、ちょっと前に中庭で寝てたでしょ」
「あ、見てた?」
「見てた。ケイ先輩と一緒だった」
「どこから見てたの?」
「四階の渡り廊下」
視力いいねーと返しながらオムライスを口に入れる。ふわふわ卵が白米を包み込みふんわりとした甘さが口に残る、これぞ罪とポエムみたいな食レポを心の中で囁きながら食べる。
するとヒロがパエリアをすくってオレの口の前に持ってきたのでパクッといただく。うんおいしい幸せ。
「僕にもオムライスあーんして欲しいです」
とヒロがねだってきた。可愛いので卵マシマシでヒロにあーんをしてあげる。
「これで関節キスですね」
かわいいかわいいとニッコニコの笑顔で顔を見ているとヒロはイタズラに笑ってそんなことを言った。
最初は関節キスという言葉にちょっぴりびっくりしていたが次第にそんなことを気にしているヒロが可愛くて仕方がなくなった。結果何をしていても可愛い。ケイくんとは別系統のわんこだな。ヒロは豆柴で、ケイくんはゴールデンレトリバーとかかな。
そんな妄想をしているとヒロが拗ねだしたので抱きついて頭をわしゃわしゃと撫でてあげる。そして誤魔化すように言葉を選び別れの言葉を告げる。
「よし、じゃあそろそろ行こっか」
「…はーい」
なんとも納得言ってなさそうな顔がまたおかしくて少し笑いながら「ばいばーい」とその場を後にした。
まったくもう、と少し笑っている後輩に気づいたオレはまた振り向きざまに笑い返した。
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