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プロローグ
甘えるとは
しおりを挟む「ひまぁー」
オレはヒロにあってからは特に何事もなく根詰めて書類を捌いていたので書類が片付いて以降いつにも増して退屈だった。
「ねえミオ、そんなに暇なのなら仕事を与えましょうか?」
「ッッッうっわやだもうびっくりした」
「ははッ、…そんなにビクつかなくてもいいじゃないですか」
「じゃあ気配出してよ、ちなみに仕事はいらないよ」
「冗談じゃないですか」
「オリちゃんの冗談がオレには冗談に聞こえないよ」
「あッはははッ」
猫みたいな警戒と言ってオレの肩を笑いながら叩いているこの人は伊草 詩織。一つ上の同僚で二年にクラスを持っている。担当は地理。教えるのめっちゃ上手。
ここで豆知識、オリちゃんは誠に渋い趣味を持っている。それは大の水戸黄門好きという趣味だ。飼っているペットの名前は格さん助さん。印籠はもう何個も持っている。前にドヤ顔で見せられた時どんな反応をしていいか分からなかった。時代劇はだいたい網羅している、らしい。
「私も暇になったのでお茶のお誘いに来ました」
「生憎オレはこれがあるから大丈夫」
そう言って飲みかけのみかん牛乳をオリちゃんの目に見えるところに持ってくる。オリちゃんの眉が少し下がる。
「ではお散歩しませんか?天気もいいので」
「さっき行ったから大丈夫」
そう言って庭園で摘んだシロツメクサを見せる。オリちゃんの眉がまた一段と下がった。同時にはあーっとオリちゃんの口からため息がこぼれた。
「建前はなしにします。ミオに会いたかった。寂しかったからおしゃべりしましょう?」
「合格。いいよー」
オレたちがなぜこんなやり取りをしているのかというと経緯はこうだ。
オリちゃん、甘え方が分からない
↓
オリちゃん、オレに教えてくれと頼みに来る
↓
オリちゃん、指導しても理解ができない
↓
なので日常会話に取り入れてみた(イマココ!!)
決してオレとオリちゃんが不仲だから強い口調な訳ではなく、帝紀生時代の生徒会の先輩方はみんなタメ口でいいと言っていたのでそのまま先輩方にはタメ口で話している。ケイくんとオリちゃんとあともう一人、ヒビキ先輩。ちなみにヒロがオレに敬語をちょい混ぜしているのは運動部出身であるからなかなか敬語が抜けないからという理由。オリちゃんが敬語なのは家でいつも敬語だったので体に染み付いているらしいという理由だった。
「今日は何をして過ごしていたんですか」
「書類を片してた」
「どうせ途中、ミオはサボったのでしょう?」
「あははバレてた。そん時トアノアと会ってこの牛乳買ったりケイくんと会った時はお昼寝したよ」
「その後は?」
「ヒロと会って庭園でランチした」
「何食べたんですか?」
「オムライスー」
「どうせヒロのも一口貰ったのでしょう?」
「なんでわかったの。パエリア美味しかったなー」
「そぼろ丼すごく美味しいのでオススメです」
「いいねー今度食べる」
「その時は一緒に食べませんか」
「ん、考えとく」
「そこはハイでしょう…」
「んふふ」
「笑わないでください」
「ヤダ笑う」
しばらくデレの多いオリちゃんと話していたところでオリちゃんの持っている端末から着信音が聞こえた。すぐさま隅っこに移動しこちらに断りを入れてから通話に出る様子を見て、もうそろお開きかなーと思っていると通話を終えたオリちゃんが名残惜しそうな顔して帰ってきた。
「…急用ができてしまいました」
「じゃあオリちゃん、また今度話そうねー」
「!!はい、また今度連絡しますから」
そう言ってオリちゃんは急いで部屋を出ていった。廊下は走らないでねーと注意をしておくと曲がり角からはーいとオリちゃんの返事が聞こえた。
曲がり角を曲がった先でオリちゃんがスキップしそうなくらいルンルンで歩いていたことはオリちゃんだけの秘密のお話。
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