気まぐれ先生の学園生活

海下

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プロローグ

チワワたちはかわいい

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 ふと窓の外を見ると夕焼け空が広がっていた。オリちゃんと長く話し込みすぎたな。
 時計を見るとちょうど6時を指そうとしていた。
 もーそろそろ帰ってもいいかな、と思いながら帰り支度をする。
 その際新入生の名前や簡単なカルテが書かれているファイルを慎重にカバンの中に仕舞い込む。一応端末にも情報は入っているのだが万が一失くした場合を考えるのは寿命が縮むほど怖いので、一応、慎重に。今の時代、個人情報の取り扱いに困る。

 
 そんなこんなで準備が整ったので寮に帰る。
 寮というのは教師寮のことで生徒寮とはまた別の場所にある寮のことだ。

 そんな教師寮への帰り道の途中、何やら騒ぎが起きているのが見えた。なにやら生徒十数人が背の高い男に群がっているみたい。今日は色々と濃い一日だなあ。
 なんか面白そうなのでオレも近づいてみることにした。


「やっほー、何やってるの?」
 
「「「「キャァァァァァァァァァァァァ」」」」
「ハアアンッ、動悸が」バタッ
「不意打ちにヤられた」バタッ
「あざとすぎます成瀬様……」バタッ
「久々の成瀬様は眩しすぎる…」バタッ
「失神者ァーッッ!!!」
「きゅ、救急車ァ!!」
 
「あははっ、救急車はいらないと思うよ。その子たち見せてみな」


 一応倒れた子達の脈を測って、全員正常だったのでそこら辺の草むらに寝かしておく。一応襲われないように見張り役さんもつけておいた。


「おいおいミオ、俺に構わずガキどもばかりに手をやくのか」
「そんなわけないじゃん、お久だねヒビキ先輩」

「グハッッ」
「久々のヒビミオ(響×澪)尊い……」バタッ
「ァァァ供給過多…、公式配布ありがたい…」バタッ
「チカッ…お顔が近いッッ」バタッ
「お色気ムンムン最&高…」バタッ

 ヒビキ先輩がバックハグしてきてオレらの顔の距離が近くなったことで、木の陰に隠れていた生徒たちはちょっと意味不明な悲鳴をあげてまた何人か倒れてしまった。そんなとこにも人がいたのか。ちょっとびっくり。
 色気マシマシな低音ボイスで生徒たちのことをガキ共と言っているヒビキ先輩の名は神代  響カシロ ー ヒビキ。オレの一つ上の同僚で国語教師。三年のクラスを持っている。
 ここで豆知識、実はぬいぐるみが大好きで帝紀生時代、生徒会のみんなでヒビキ先輩の誕生日プレゼントにクマのぬいぐるみをあげたことがあった。それが今でも寝室に大事に置いてあるのがとってもチャーミングでかわいい。ちなみにクマ以外にもユニコーンやうさぎ、トラのぬいぐるみまで種類豊富に揃ってた。


「んじゃ、時間も時間だからそろそろ解散しよーねー」

「「「「はーいっ!」」」」


 とりあえず寝ちゃっている子達も起こして全員に帰るよう促す。いいお返事だったので笑顔で片目ウィンク見送ってあげるリップサービスもつけておいた。
 キャッキャして帰っていく小柄な姿は正しくチワワみたいでかわいい。


「なにあいつら眺めてニヤニヤしてんだよ」
「かわいいなーって」
「ふーん」


 こっちを見てニヤニヤしているヒビキ先輩のほうこそ、オレよりよっぽどニヤニヤしてると思うんだけど。ま、いいや。


「あの子たちに何渡されたの?」
「お土産だとよ、お前の分も貰ったぞ」
「え、やった」
「量がまた多いんだよ」
「ねね、そしたらさ、一緒に食べない?」
「ああ、んじゃうち来るか」
「そうだね、行く。泊まっていい?」
「どっちでも」

「じゃあ、後でねー」
「ああ」


 いつの間にか着いていた寮の玄関で一旦別れる。そんでヒビキ先輩の部屋にお泊まりすることとなった。


 そんなこんなでヒビキ先輩とのお泊まり会は順調に進んで行った。と言っても専ら映画鑑賞しながら食べていただけなので割愛する。
 いやー楽しかった。また来たいな。
 そんな現実逃避した思考を呼び覚ますようにヒビキ先輩がベッドにオレを引きずり込む。何故かって?それはベッドが部屋にひとつしかないからさ。
 オレは今の今までそれを忘れてしまっていた。


「オレ、ソファでいいよ」
「いや、一緒に寝よう」


 この会話を何回繰り返したことか。
 でももうそろそろふっかふかのお布団に意識が飛びそうになるのがわかったので諦めるとしよう。んじゃまあ。


「おやすみぃー」


 そう言ってオレは完全に意識を飛ばした。その時無意識にヒビキ先輩の手を握っていたことを知るものはヒビキ先輩しかいない。
 そしてそれに顔を真っ赤にして悶えているヒビキ先輩もヒビキ先輩自身だけが知っている。

   後に彼は言う。
「あれは反則だろ、可愛すぎた」と。
   それを聞いたとある同士らに(精神的に)フルボッコにされるのはまた別のお話。
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