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9話 白銀の女王とルーキー

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「何してるの?」
「しぃ~……今、扉の向こうでお話してるっぽいみたいですからしぃ~」
「(コクッ)」

 日野さんと二人で扉に耳をつけて向こう側の様子を探る。

「で?話って?」
「あぁ」

 相手、誰なんだろう?紗霧さんとタイマンなんて勇者かよ……

「前から好きでした。俺と付き合って下さい!」

 日野さんと目を見合わせる。日野さんも日野さんの目の中に写った俺の顔も驚愕でいっぱいになっていた。

 紗霧さんに告る奴なんているんだ!?ドMだろうな。きっと。

「紗霧さん、これで何人斬ったのかな?」

 日野さんはそこが気になるのね!?うん。分かるけどさ!?紗霧さんが斬るの前提は相手にも悪いよ?!

「え~っと……誰でしたっけ?」

 ちょ?!酷いよ!さすがにやばくないか?

「え?それは嘘だろ?中学は違ったけど、小学生の時よく遊んでいたじゃないか」

 嘘だろ……幼なじみ的ポジションじゃん……まぁ名前を言わなかったのは失敗かな?

「はぁ……そんなの覚えてませんよ。そもそも、私はあなたに名前を聞いたつもりなんですけど」
「な……流木 楓だ」

 ほんとに嘘だろ!学年一のイケメンと名高い流木楓?スポーツ万能、成績優秀、容姿端麗と有名な流木楓?

「上級生からルーキー帰れって上級生に陰口たたかれてる流木君か」

 日野さん!その情報知りたくなかったよ!てか、紗霧さん!そのイケメン覚えてないの!?

「教えていただきありがとうございます。ただ、私はあなたの事が好きではありません。他をあたってください」

 まぁ、そうなるわ。紗霧さんは興味無い人には冷たいというか、距離をとりたがるんだよね。男子ならよりはっきりと表れる。

「白銀の女王の名は伊達じゃないね」
「そうですけど……相手が可哀想ですね」

 紗霧さんは白銀の女王というあだ名がついている。髪の色が雪のように白いのもあるが、周りに冷たいということもあって酷いあだ名がついたのだが……本人は気にしてないみたい。他に男斬りとか着いていたが白銀の女王の方がしっくり来たみたいで自然と消えていった。

「は?俺がわざわざ告ってやっとんぞ?」

 あれ?イメージが崩れていく音が……

「だから?なんなんでしょう?」
「ちっ……」

 ダンッ!

 扉からすごい音がした。びっくりした~。って紗霧さん!?大丈夫!?

「ふっ……所詮女子か。両手を拘束されただけで縮み上がるなんてな。白銀の女王の名が泣くな」
「くっ……」

 え、ぇぇえええええ!紗霧さん?!ちょ、助けなきゃ!

「落ち着いて紫野宮くん。多分だけどドアに押し付けられてる」
「はい」
「私がドアを開けるから紫野宮くんは紗霧さんを助けて」
「はい」

 俺と日野さんがスタンバイする。

「三……二……一……それ!」

 ガチャ!ズドン……

「は?」
「ぐぇぇ……」

 え?日野さんがドアを開けた瞬間、流木君がとんできたんだけど……

 扉の方に視線をむけると、両手を振り抜いた格好の紗霧さんがいた。

「え~っと?」
「扉に押し付けられた時にコソコソ聞こえたので誰かが扉を開けると思ったから投げれました」
「へ、へぇー」
「今回は助かりました。ありがとうございます」
「扉を開ける案は日野さんが出したからお礼は日野さんに」
「確かに冴えない拓斗くんにしてはやるなと思ったんですよ」
「酷いな」

 紗霧さんが日野さんのところに行く。

「助けていただきありがとうございます」
「別に、同じ女子として見逃せなかっただけ」
「チッ……クソが」

 おっと流木君が起きたか。

「覚えとけよ……」

 そう言ってどっか行った。
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