町で噂のあの人は

秋赤音

文字の大きさ
11 / 34
変わらない日々と新たな出会い

9.夏の鍋も美味しいです

しおりを挟む
「来春。僕、鍋が食べたいー」

「…そろそろ、そういう季節だね」

「…だな」

甘えるように作刃さんと神堂さんへお願いをする黒刀さん。
私は土鍋を片付けた場所を思い出しながら、
楽しそうに話が続いている光景を眺めている。
とりあえず、魚と肉とキノコの三回に決まった。
一回目の日程の相談をされ、あっという間に決まり、
その場は解散となる。

当日。
作刃さんのお店に集まり、
窓を開けて湯気と熱さを逃がしながらの鍋囲み。
偶然に釣りたての魚を持ってきた作刃さんのお客様も加わり、
会話は盛り上がる。
魚は捌いてあるので調理が楽だと作刃さんは言いながら、
料理場へ向かった。
二回目の予定も決め、皆で片付けをしてお開きとなる。
楽しく時間だった。

二回目。
今度こそ四人だけでやろうと、
神堂さんの家に集まることになった。
肉や野菜の美味しさが溶けた残り出汁まで頂いて、
皆でお腹を満たした。

「美味しかったー」

台所を借りて空になった土鍋を洗っていると、
厚着の黒刀さんが現れた。

「温まりましたか?」

「とってもー!夏は、冷えるからなー」

嬉しそうな様子に思わずつられて笑う。
ふと、足音がした。
現れた神堂さんは私を見る。

「冬は寒そうな格好だけどね」

「秋人。僕、冬は暖かいから!」

黒刀さんは、少し頬をふくらませている。
それを軽く見流した後、神堂さんは改めて私を見る。

「そうだね。
湊。急ぎではないけど、土鍋を一つお願いできますか?
両親が新調したいそうで」

「はい。承りました。
ありがとうございます。
商品を確認したら、また連絡しますね」

「はい。お願いします」

神堂さんは隣で洗ってあるお皿をふいた後、
爽やかな笑顔で去った。
黒刀さんと使った台所を軽く掃除して部屋へ戻ると、
簡易コンロなども片付いていた。

「白銀さん。凪人。
次の予定を決めるが、空いている日はいつだ?」

三回目も予定が決まり、
持ち寄る材料の確認もして、お開きになった。

前日。

「冬樹!大変なことになったー」

いつのようにお店にいると、
慌てた黒刀さんが来店した。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...