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泥雨の棘
1.雨と槍
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「愛人の子供らしく?」
艶やかに喘ぎ掠れた声で、見下ろす先にいる彼女は言った。
異性と無縁の暮らしをしていれば、楽しみ方の価値観は自分と大きく違うだろう。
時には恋人役に必要な資料を与えたこともある。
しかし、読んだ後も、彼女はあまり変わっていないように見えた。
「女は、快楽さえ満たされれば楽しい。と、思っている」
「そう、ですか」
「そう、だった」
僕に腕をのばした彼女に寄せられ、背中に細い指先が触れる。
よく知る感触に似ていて、でも、初めて知った女の姿。
甘やかすような温度に身を預けてみるのも、たまにはいいかもしれない。
初めて、人間の体温を心地よいと思った。
それを拒絶するように思い出す過去は、体から力を削ぎ落す。
女児を望んだ父親は、愛人契約している母親が産んだ子供を嫌った。
望まれない子供を守る気がないらしい母親も、産んだ子供を面倒なものと扱った。
生まれたからには、と与えられた私室と、食事や必要な教育。
一人で過ごしすことしか知らないまま迎えた小学校生活は、なにもかもが苦痛だった。
当然のように行事に来ない両親、愛想のない態度と悪くない成績の子供。
同級生は、娯楽を求めて迷わず揶揄いの対象に選んだらしい。
彼らに興味はなかったが、話しかけてくるから、話をしていた。
一方的に言われた言葉が、良いものと言えない事柄だと自覚した頃には飽きたらしい。
教室で孤立して、むしろ気が楽になった。
彼らとは、卒業まで、必要な場面で最低限度の交流にとどまった。
中学入学と共に、両親と離れることが決まった。
母親いわく、家は父親の別荘だったもの。
「名義は私だから、安心して過ごせばいい」と聞かされた。
一人で住むには広い生活環境にいたのは、母親ではない女たち。
最低限度の食事と身の回りのことを自分ですることには、すぐに慣れた。
日替わりで様子を見にきてくれる親切な隣人は、高校に入学すると目の色を変えた。
毎夜、誰かがベッドにやってくる。
自ら裸体を晒し、一方的に盛り、萎える男の体を煽り、目的を済ませると一方的に帰る繰り返し。
定期的に医師の診断を受けるよう父親から指示がきたことで、仕組まれた何かだと思うことにした。
避けられないなら、利用すればいい。
自慰だと思えば、嫌悪感は薄れていった。
しかし、彼女たちも飽きたらしい。
愛人暮らしの親を見て育ったと、愛人をしている彼女たちは言った。
そして、得た知恵で自慰を楽しんでいるようだった。
ちょうど五か月目に「二度とこない」と最後の夜に言って、出ていった。
艶やかに喘ぎ掠れた声で、見下ろす先にいる彼女は言った。
異性と無縁の暮らしをしていれば、楽しみ方の価値観は自分と大きく違うだろう。
時には恋人役に必要な資料を与えたこともある。
しかし、読んだ後も、彼女はあまり変わっていないように見えた。
「女は、快楽さえ満たされれば楽しい。と、思っている」
「そう、ですか」
「そう、だった」
僕に腕をのばした彼女に寄せられ、背中に細い指先が触れる。
よく知る感触に似ていて、でも、初めて知った女の姿。
甘やかすような温度に身を預けてみるのも、たまにはいいかもしれない。
初めて、人間の体温を心地よいと思った。
それを拒絶するように思い出す過去は、体から力を削ぎ落す。
女児を望んだ父親は、愛人契約している母親が産んだ子供を嫌った。
望まれない子供を守る気がないらしい母親も、産んだ子供を面倒なものと扱った。
生まれたからには、と与えられた私室と、食事や必要な教育。
一人で過ごしすことしか知らないまま迎えた小学校生活は、なにもかもが苦痛だった。
当然のように行事に来ない両親、愛想のない態度と悪くない成績の子供。
同級生は、娯楽を求めて迷わず揶揄いの対象に選んだらしい。
彼らに興味はなかったが、話しかけてくるから、話をしていた。
一方的に言われた言葉が、良いものと言えない事柄だと自覚した頃には飽きたらしい。
教室で孤立して、むしろ気が楽になった。
彼らとは、卒業まで、必要な場面で最低限度の交流にとどまった。
中学入学と共に、両親と離れることが決まった。
母親いわく、家は父親の別荘だったもの。
「名義は私だから、安心して過ごせばいい」と聞かされた。
一人で住むには広い生活環境にいたのは、母親ではない女たち。
最低限度の食事と身の回りのことを自分ですることには、すぐに慣れた。
日替わりで様子を見にきてくれる親切な隣人は、高校に入学すると目の色を変えた。
毎夜、誰かがベッドにやってくる。
自ら裸体を晒し、一方的に盛り、萎える男の体を煽り、目的を済ませると一方的に帰る繰り返し。
定期的に医師の診断を受けるよう父親から指示がきたことで、仕組まれた何かだと思うことにした。
避けられないなら、利用すればいい。
自慰だと思えば、嫌悪感は薄れていった。
しかし、彼女たちも飽きたらしい。
愛人暮らしの親を見て育ったと、愛人をしている彼女たちは言った。
そして、得た知恵で自慰を楽しんでいるようだった。
ちょうど五か月目に「二度とこない」と最後の夜に言って、出ていった。
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